アミガサタケのなかまたち(網笠茸)Morchellaceae

アミガサタケは、様々な種類が知られており肉眼での判断は難しいため、このブログでは「黒色型アミガサタケ(ブラックモレル)」「褐色型アミガサタケ(イエローモレル)」として紹介していきます。

時期

春(福岡県では2月~5月にかけて観察することができるきのこです)
ちなみに、福岡県では黒色型アミガサタケは2月~5月まで、褐色型アミガサタケは4月~5月に見られることが多いです。

発生環境

サクラの木の下に生えていたり、スギの林に生えていたり、広葉樹林内に発生したり…発生環境は様々です。
春の訪れを告げるきのことして知られています。

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杉林にはえていたアミガサタケ類。この場所は初見でした。どこに現れるのか予想することが難しい神出鬼没のきのこです。
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毎年発生してくれるイチョウの木の下のアミガサタケ類。今年も顔を出してくれました。

特徴

■黒色型アミガサタケ(ブラックモレル)
きのこの傘の部分は基本的に茶褐色~黒褐色。最も知られている「トガリアミガサタケ(尖網笠茸)」はサクラ・イチョウなどの樹下に生えることが多く、傘の先端がとがっているような形をしていて、表面の脈は縦方向によく発達しています。

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一般に「トガリアミガサタケ」と言われる子実体
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常緑樹林内に生え、柄が太くて傘が黒色の大型子実体
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広葉樹林内を歩いている時に偶然出会った黒色型アミガサタケ類。成菌~老菌の観察をしてみましたが、網目の縁は白っぽくなっており、溝部分は前種よりも濃い黒色をしていました。

■褐色型アミガサタケ(イエローモレル)
傘の表面は黄土色や淡褐色。基本的には「アミガサタケ」と同定されることが多いきのこですが、変種としてマルミアミガサタケやチャアミガサタケなど似ているものが多く中間的な個体も多く知られています。

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サクラの木のそばに生えていたアミガサタケ
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人々が行きかう公園で見つけた褐色子実体。やや乾燥気味なのか、網の縁は黒っぽくなっていました。
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広葉樹林内に生えていた高さ15㎝ほどの大型子実体
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広葉樹林に生えていたヒロメノトガリアミガサタケ近縁種
この個体は福岡県内でも発生は局地的です。アミガサタケと比べると網の幅が広く、脈も薄いです。

【アミガサタケの構造】

アミガサタケの子実体は卵型の頭部と太くて明瞭な柄とで構成されています。
全体の高さは5-12㎝。またはそれよりも大型になるものもいます。頭部はアミアミしていて、頭部の窪みの内面に多数の子のうを作り、子のうの内部に胞子をつくります。子のうは細長い円筒状で無色・薄壁。先端に円筒状の蓋をつけていて、成熟すると蓋が外れて胞子を飛ばします。

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アミガサタケ類は、種類によって微妙に特徴が異なっています。例えば、一般にトガリアミガサタケと言われるきのこを観察してみると…

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頭部はあみあみしています。ちなみに、大きさは約10㎝。
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アミアミの部分を拡大してみると微毛が生えていました。これらは乾燥したり、古くなってくると黒縁へと変化していきます。
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乾燥して縁が黒っぽくなっている個体。

柄はゆがんだ円筒状で白色、淡黄褐色で表面はざらつきます。頭部、柄ともに中空です。

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柄と傘の境目。小さな白い毛が散生しています。柄は古くなると褐色に変化して肉質も水水しくなっていきますが、白い毛のようなものは残っていました。
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中身は空間があります。この中はひんやりしていて白い毛のクッションのようになっています。
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内部の拡大。

アミガサタケの胞子は、あみあみのくぼんだ部分に作られます。胞子はとても小さいので肉眼で一粒一粒を確認することはできませんが…まとまって飛んでいく様子は観察できることがあります。下の写真は、アミガサタケの胞子を顕微鏡で観察したものです。

袋(子嚢)に入っている胞子は成熟すると袋の上部から吹き出します。丸い形をしているものはアミガサタケの胞子です。

「アミガサタケ」の不思議

アミガサタケはきのこの中でも一風変わった姿をしています。どうしてこんなアミアミの姿なのか、そしてどんな生き方をしているのか…春になるといつも考えさせられます。

先日、アミガサタケに関する面白い記事が「きのこびと」で公開されました。
「アミガサタケ栽培成功への道(やはりアミガサタケは腐生菌なのか?)」

このブログを読んでいると、アミガサタケの驚きと不思議がありますね。
1、アミガサタケの人工栽培ができたということ
2、アミガサタケの生活の不思議
そもそもアミガサタケってイチョウやサクラの樹下で見ることが多いものだと思っていましたが、竹やぶや広葉樹林内、焚火あとにも発生することも知られています。こんなにも様々な環境で育っているアミガサタケは、「腐生菌」なのか「菌根菌」なのかよくわかりません。

記事によると、「アミガサタケ」は菌根性のもの、腐生性のものなど様々な種類がいることが予想されるということでした。また、アミガサタケは腐生菌と菌根菌の両方の側面をもち、それぞれ2年周期で役割が交代するという2面性をもっていることも知られています。
ここまでくると、今観察している「アミガサタケ」はいったい何者なのか…ますます謎が深まるばかりです。

【参考書・文献・webなど】
北陸きのこ図鑑(橋本確文堂)
日本のきのこ(山と渓谷社)
くらべてわかるきのこ(山と渓谷社)
きのこびと「アミガサタケ栽培成功への道(祝!ついに論文が公開されました)

注)きのこ豆知識は毎月2回更新をします。(第1、第2金曜日に更新を予定していますが、臨時休載、更新の変更などもあるかもしれないので、その際はご了承ください)

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