毒きのこのシャグマアミガサタケを食べた体験談
シャグマアミガサタケという、きのこ好きなら誰もが知っているような有名な毒きのこがあります。
なぜ有名なのかというと、雑学的に面白い次の2つの特徴を持っているからです。
- 死亡例もあるほどの猛毒を持っている
- 海外では毒抜きして食用されている
時々きのこ好きたちの間でシャグマアミガサタケを食べるか・食べないかが話題にのぼることがあります。
そんな時、露木は
『いくら毒抜きしたら食べられるって言っても失敗したら死んじゃうかもしれない。
そんな危険を冒してまで食べたいかな?』
と言いながら、なんとなく気になっていたのでした。
そんなモヤモヤを抱えた状態で、ある日ばったりシャグマアミガサタケに出会ったしまったら、危ない好奇心にがっつり火がついてしまうのも仕方がないと思いませんか?
ということで、今回はシャグマアミガサタケを毒抜きして食べてみた体験談を紹介いたします。
※決してシャグマアミガサタケを食べることを推奨する記事ではありません。
もし食べる際は自己責任で、しっかり毒抜きしてください。
シャグマアミガサタケとは
シャグマアミガサタケは、春~初夏にかけて発生する毒きのこです。
奇妙に歪んだ柄と不規則でボコボコした脳みそのような赤茶色のカサを持ち、いかにも毒きのこっぽい禍々しい見た目をしています。
春きのこの代表格、高級食材のアミガサタケと同じ名を冠していますが全くの別種。
形状や雰囲気がだいぶ違うので混同することは無いと思いますが、発生時期的には被るので誤って採取しないようご注意ください。
シャグマアミガサタケは主に海外で食用されてきた歴史がありますが、同時に人が死ぬほどの猛毒を持つ毒きのこでもあります。
食べるには毒抜きをする必要があり、その際に発生した湯気を吸っただけでも中毒する可能性があるという危険生物です。
むやみに食べようと思わない方が無難でしょう。
ちなみに、シャグマとは花魁たちの間で流行った髪型『赭熊(しゃぐま)』のことで、きのこの形状がその髪型に似ていることからきています。
シャグマアミガサタケを採取した
ある年の5月下旬、菌友たちときのこ散策に遠出した時のこと。
たくさんの春きのこのと一緒に、猛毒きのこのシャグマアミガサタケが生えているのを見つけました。
初めての遭遇という事でテンションが上がる露木。
この妖しさが逆にかっこいい・・・
と、この時すでにシャグマアミガサタケの魔力に囚われていたと思います。
迷いながらも採取したのでした。
シャグマアミガサタケの毒抜き方法
神奈川に連れ帰ってきたシャグマアミガサタケ。
もう覚悟は決まっていました。
『シャグマアミガサタケを毒抜きして食べてみよう!』
採取した翌日に、さっそく毒抜きを実践しました。
毒抜きの手順は下記の通りです。
1.水洗いして石づきを落とす
シャグマアミガサタケを軽く水洗いして汚れを落とし、根元の石突を切り落とす。
2.数回茹でこぼす
沸騰状態でシャグマアミガサタケを5分以上茹でたら茹で汁を捨て、2~3回繰り返す。
※茹で汁に毒成分が溶け出しているので、決して飲んだり料理に使わないようにしてください。
シャグマアミガサタケの毒抜きをする時は湯気を吸わないように注意!
シャグマアミガサタケの毒抜きで厄介なのが『湯気』
気化した毒成分が含まれているため、この湯気を吸っただけでも死んでしまう危険があるそうなんです。
本当に恐ろしい毒を持っているきのこです。
そんな湯気を室内にこもらせるわけにはいかないので、屋外にコンロと鍋をセット。
また念のためマスクを着用して毒抜きを行いました。
シャグマアミガサタケの毒抜きは恐怖との闘いだった
ぐつぐつ茹でられるシャグマアミガサタケ。
この湯気を吸ったら死ぬのか…と思うと、恐怖と後悔が頭をよぎります。
遠くからおそるおそる見守りつつ、時々息を止めて近づき写真撮影。
加熱したシャグマアミガサタケは、だんだんカサに赤味を帯びていきました。
ゆで汁にも赤っぽい色がついています。
ほんのり香った程度ですが、何やらものすごい良い香りがするような気がします。
毒成分と一緒に出汁も出ているのかもしれません。
※重ね重ね、茹で汁にも毒成分が溶け出しているので、決して飲んだり料理に使わないようにしてください。
しっかり茹でてから茹で汁を廃棄、この流れを3回繰り返しました。
たぶん、これだけやれば大丈夫でしょう。
しかしシャグマアミガサタケの毒成分が本当に全部抜けたのか、それとも残っているのかは見た目では判断できません。
もし毒が残っていたら?
もしガスコンロの火力が弱かったら?
そんな不安がいくつも頭をよぎります。
というこで、最後の仕上げとしてキッチンの火力でしっかり茹で上げました。
これで毒抜き完了です。
毒抜きしたシャグマアミガサタケを調理する
毒抜き後のシャグマアミガサタケ。
正直にいうと、とても美味しそうには見えません。
なんだって海外ではこんなきのこを食べているのだろう?なんて思ってしまいました。
今回はシンプルにバターソテーで食べることにします。
包丁で半割りカットした断面、中は空洞です。
どことなく、ウラスジチャワンタケやカニタケなどのきのこに似ています。
バターの香りに包まれて調理されるシャグマアミガサタケ。
うーん、見た目は相当ヤバいです。
シャグマアミガサタケをバターソテーで食べてみた
一応、家族にシャグマアミガサタケを食べる旨を伝えておきます。
万が一倒れた際に、すぐに原因を特定できるようにしておくためです。
さて、準備は整いました。
それでは実食します。
しっかり毒抜きしたつもりですが、やはり恐怖はあります。
おそるおそる口に運びました。
あ、これ美味しい。
あんな濃い見た目のきのこの割に、味はクセがない感じ。
しっかり煮こんだ後だというのにちゃんと歯ごたえが感じられ、旨味も残っていました。
野菜炒めなどに入れたら味・食感でアクセントになり美味しそうです。
ただ、めっちゃ美味しいかと言われると、そこまでではないかなとも思います。
もしかしたら、慎重になりすぎて毒抜きをやりすぎてしまったのも影響しているかもしれませんが。
少なくとも露木の中では、毒抜きを失敗するリスクや多大な手間をかけてまで食べたいきのこでは無いのではないか、と思ってしまいました。
とはいえ、今回1回食べただけでそう決めつけるのはもったいない。
特に海外では、そのリスクを負っても食べ続けられているきのこなので、きっとそれだけの魅力があるはずです。
また機会があったら、慎重を期してシャグマアミガサタケ料理に再挑戦してみたいと思います。
尚、シャグマアミガサタケを食べた翌朝、特に問題なく目覚めたことを記載しておきます。
毒きのこのシャグマアミガサタケを食べたまとめ
- シャグマアミガサタケは死亡例もある猛毒きのこ
- 数回茹でこぼして毒抜きすることで食用になる
- 毒抜き中は湯気を吸わないように要注意
- 毒抜きしたシャグマアミガサタケは旨味と歯ごたえのある美味しいきのこだった
ただし、命のリスクや手間をかけてまで食べたいかと言われると、微妙なところだと感じました。
今回はシャグマアミガサタケの魅力をしっかり引き出せなかったようなので、また機会を作って挑戦してみます。
※決してシャグマアミガサタケを食べることを推奨する記事ではありません。
もし食べる際は自己責任で、しっかり毒抜きしてください。
”キノコ”といったら露木までっ!
もともときのこ問屋の営業マンでしたが退職し、今はIT業界に勤めています。
ただ、それでサヨナラは寂しいので、キノコの記事を書いたり、YouTubeなどで情報発信することにしました。
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