きのこ 森の妖精

きのこ 森の妖精

『きのこ 森の妖精』
藤澤寿 著 
谷川俊太郎 詩・編

その妖しい形状からか、はたまた神経毒のせいか、キノコは幻の中に舞う妖精を連想させるものであるようだ。

むろん、現実の世界でシイタケを見たとしても、想像できるのはおよそ妖精とは似ても似つかない(たとえばスターウォーズに出てくるヨーダが型崩れしたような)ものであろうけれども。

それは、多分現実にキノコを見てしまったからだ。キノコに現実を見てしまったからだ。

キノコを媒介としてファンタジーの世界にひたるには、現物のキノコを見てはならない。それには、あれを、そうだ、キノコの幻を 見ね...ば...

キノコ ちいさな

ひかり やみに

アリの憲兵 露の一夜

見あげるか そのこころを

そしてそこにあるのは 詩か

...ハッ。私にはここまでが限界のようです。

私は現実のキノコとそこに巣食う崩れヨーダに心奪われし者。これ以上幻想にくみするわけには参りません。あなたがあなたの幻想へと参られるというのなら、あえてお止めはしませんが。でも心してください、キノコを介してあなたの魂が妖精と出会うとき、その現実において身体は少しずつ蝕まれていくということを。

そう、薄水色の悪魔の手によって。

...妄想モード解除。

谷川俊太郎氏の詩が数偏に、名だたる作家の作品に登場するキノコの断片がいくつか。そして、名も無き極小キノコたちの写真。どのような経緯で作られたものか、このようなキノコ本も珍しい。なんだかよくわからん縁というヤツが菌糸はびこる地下でイタズラをした、その賜物なんだろう。

さぞかしピント合わせが難しかったろう、というのはキノコ写真を撮る身としての評。

「月刊きのこ人」(こじましんいちろう)2010年05月9日に掲載分を再掲載

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