不思議の国のアミガサタケ
本日変なところに出ているアミガサタケを見せてもらいに行ってきた。
いや「変な」と言うのはちょっと語弊があるかもしれない。
何故ならばアミガサタケはその多くが「変な」ところから出てきているからだ。
そんなアミガサタケを
「だから魅力的なのよ、おほほ」
と、きっとアミガサタケを愛して半世紀のご婦人は静かに微笑むに違いない。
その通りだ。
そんなミステリアスな部分に「惹かれる」と言うのは、キノコだけに限ったことではあるまい。
対象が人間であれ、動物であれ、はたまた架空のバケモノであったとしても、ミステリアスであればあるほど心を奪われるものなのだ。
場所はどこなのか?
場所は兵庫県芦屋市の某会社の敷地内。菌友のSさんが勤めている会社である。
ご覧の通り、玉砂利が敷地の周りに敷かれており、その庭の隅っこにアミガサタケが「毎年」でるそうです。
今年も「出るかなぁ、出るかなぁ、、」と待っていたらやはり去年と「同じ場所」に出たそうです。
このアミガサタケが出る場所というのは約60cmx1mぐらいで庭のほんの片隅のエリアだけに限られており、それ以外の場所にはまったく出ないらしい。つまりこの小さなエリアはアミガサタケに取って「居心地のいい場所」なのか、それとも「居心地が悪いから」出てくるのか、、、そんな妄想を掻き立ててくれる場所なのだ。
掘ってみました
会社の敷地の中であり、しかも本日はお休みなので、誰はばかること無く調査をすることが出来ました。
調査をする上での最大の疑問は
「菌糸はどう延びているのか?」
でした。
そこで、今回は菌友のSさんの許可を取って掘らせてもらいました。
まずはアミガサタケの周りをザクザクと小さなスコップで掘ってみます。
玉砂利をのけると白い菌糸みたいなものが、まるで根っこの様に延びているのではないか?と想像していたのですが、白い菌糸のようなものは肉眼では確認できませんでした。。
アミガサタケの菌糸は「見えないもの」があるそうです。以前に採った事があるトガリアミガサタケは柄の下の部分が白い菌糸の塊のようなもので包まれており、そこから根っこのように白い菌糸が繁殖しておりました。今回もそんなイメージのものを想像していましたが、まったく違っておりました。
土の中身のチェック
土の中を取り出してみました。
ご覧のように菌糸らしいものはまったく目につきません。
今回ちょっとビックリしたのが、玉砂利を除けると直ぐ下にこの様な肥えた土の存在があったことでした。
「あぁ、もう直ぐに土なんだ~」
てっきり、砂とかが敷いてあったり、石の下なので乾燥しているかと思いきやかなりの湿り気があり、そしてちゃんと土の匂いがしたのでした。
そしてもっと意外だったのがこの根っこの存在です。
同じく石の下なので、植物が繁殖する余地などあまり無いもの、と思い込んでいたところがありました。ところがこのアミガサタケの周りには何かの木の根っこが這い回っており(まるでアミガサタケがこの根っこと共生しているように)、容易にこの土を取り除くことが出来ませんでした。
- 菌糸が見えなかった
- 木の根っこが近くに這い回る
よってもしかしたらこのアミガサタケはこの木の根っこと共生しているのではないか?
と考えました。
ただ目視ですが、根っこの周りに菌根は確認できませんでした。
何の木の根っこなのか?
ちなみにこの場所にはどんな木があるかというと
・近くに桜はあるが、石積みの上にあり、その木の根っことは考えにくい
・アラカシ(らしい)木が直ぐ近くにあり、その根っこが延びている可能性が高い
ただ、いままでアラカシの下にアミガサタケが出る、という話は聞いたことが無い。まったく無い。
なのでアラカシの木に菌根を作っている、という妄想は今のとこペンディングでしかないですね(笑)。
pHを測ってみる
さてさて、そして今回もpH値を測ってみました。
今回測る最大の目的はずばり「玉砂利」です。
この玉砂利、種類は良く分かりません。しかし川などから採ってきたものではなく、何か人工的に割られたような、または採石場から採られて来たような、そんな石の表面をしているのです。
もしかしてここからアルカリ成分が染み出してるのではないか?
このアミガサタケの写真を最初に見せてもらった時に思ったことです。
あくまでも想像の範疇なのですが、この玉砂利自体が石灰質の成分を含んでいて、それが雨などで地中に溶け出す。
自ずとその下の土たちは石灰質の成分によりアルカリ性に変わる。
そのアルカリ性を好んで(もしくは嫌って)、より遠くの場所へと移動するために子実体(アミガサタケ)を地上へと向かわせているのではないのか??
ここでネットを検索してみました。するとこんなQ&Aがありました。
「石について質問なんですが石はPHをアルカリ性にするんですか?」
どの石ではなくすべての石がPHを上げると考えたほうがいいです。
石を入れると少なからずなんらかの成分が溶け出し硬度があがります。硬度が上がる=PHも上がるということです。事前に「酸処理」を行っていればPHの上昇は防ぐことは可能です。エビやコリドラスなら酸処理しなくてもいいですし、それなりにPHの変化に対応することが出来るので酸処理しなくても大丈夫でしょう。https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1449383844
・・・ですか、そうですか、、
石を水の中に入れると(入れるだけで)pH値が上がる(アルカリ性に向かう)ということらしい。
じゃあ測ってみると、、、
pH値は何と 7.92 でした。
この前測ったものの中で一番高いものよりも高い値です。
もちろんこれはまだ「アルカリ性」とはいい難い値ですが、土としてはかなり高い値だと思われます。
まとめ
菌友のSさんからこんな耳寄りな話を聞いた。
「ここのアミガサタケは毎年同じところからしか出ません」
なるほど、、、
「そしてまったく同じところから『5本だけ』出てきます」
まったく同じところから???
という事は多年草の花の様に「根」みたいなものがずっと土中に居座り続け、毎年そこから子実体を作りだして地上に姿を現しているというのだろうか?
これはかなり耳寄りな情報であり、それが事実だとするとアミガサタケは菌根を作りその植物と共生している可能性が高いのだと思われる。
顕微鏡などでは分かるかもしれないが、写真に写っている根には菌根があるのか??
そんな事を考えているとSさんはこんな風につぶやいた。
「来年はこの一本だけ出てこないかもしれないね」
マジですか!!僕が掘ったから?根を切ったから??
その可能性は捨てきれない。
少なくとも僕がアミガサタケが生息していく生態を破壊したことは確かだ。
毎年このアミガサタケたちは「抜かれる」。それでもたくましく毎年出てきているのはきっと抜いたところで、その環境は破壊されていない、ことを表している。しかし僕がこうやって掘り起こしたことによりもしその環境が変わってしまい、出てこなくなったら・・・・。
これは実験としてはなかなか興味深い実験であるが、アミガサタケファンとしては少し悲しい気がする。
来年もやっぱり同じように出てきて欲しいものだ。
アミガサの精にお願いしておこうかな(笑)