きのこの胞子の色と進化

http://www.mushroomthejournal.com/greatlakesdata/Authors/Buller682.html

ファーブル昆虫記のきのこ版?いやいや、きのこ界の熊楠!?

今年はじめにわたしが書いた「きのこは原始的な生物なのか?①」でも紹介したのだが
きのこ好きの方なら、きっと ”ブラー” という名前くらいは聞いたことがあるだろう。

わたしが所属しているきのこゼミでは、

A. H. Reginald Buller「RESEARCHES ON FUNGI」

この本↑ の 輪読をしているのだが、これが実に面白い。

ブラーは、きのこの謎にせまるため、ユニークで独創的な実験を数多くしているが、
なぜそんなことを思いついたのか?どうして彼はそう考えたのか?
輪読会の中でも時折脱線して、彼の人間性や時代背景にまで話題がおよび盛り上がる。

まだ日本語に翻訳されていない英語の本ということもあるのだろう、
こんなに面白いのに関わらず あまり知られてないのはもったいないと思い、
ここで少しづつわたしが面白いと感じたトピックをとりあげたいと思う。

ただ、ブラーの生い立ちなどは、特に必要でない限り、取り上げない。

なにより、その研究を知れば、どんな人となりであるのか、
だんだんと頭の中にブラーの輪郭が出てくるだろうし。

でも、どーしても知りたい人は、wikiさまに聞くべし

Wiki: Arthur Henry Reginald Buller

じつは、この「RESEARCHES ON FUNGI」はネットで読むことが出来る。

実にいい時代になった。

興味ある方は、ぜひ読んでみて欲しい。(ほかにも公開しているサイトがあると思う!)

https://www.biodiversitylibrary.org/item/34820#page/9/mode/1up

胞子の色ときのこの進化

今回は、わたしが書いた「きのこは原始的な生物なのか?」に呼応して、
胞子の色ときのこの進化についてのブラーの考察を取り上げたいと思う。

まず、「The Colour of Spores」(1巻1章)で、
胞子の色は、進化と共に変化してきたのか、ブラーはこういっている。

During the evolution of the Hymenomycetes there must have been an evolution of spore colour,
and it would certainly be very interesting if some law of progressive colouration could be dis-covered.
(きのこ(Hymenomycetes;菌じん【蕈】綱)の進化の中で、胞子の色も変化したに違いない。
そして、どのように色が進化とともに変化していったのか、
その法則性が発見されれば、とても興味深い結果となるだろう。【林 意訳】)

Researches on fungi Vol. 1

続けて、

It seems to me that a fairly good case has been made out for the view that, in flowers in general, yellow is a more primi- tive colour than red, and red more primitive than blue, but no attempt to work out the phylogeny of the colour of spores has yet been made.
(花の一般的な色は、黄色が赤よりも原色で、赤が青よりも原色であるという見解は、
かなり有力な根拠となっているみたいだが、胞子の色の系統を解明しようとする試みは、まだ行われていません。【Deeplくん】

へぇ~~、当時は(現在はどうなのかはわからない)花の色は、
黄色→赤→青 と進化していったと考えられていたんだぁ~!!!

だから、きっと胞子の色にも、そんな進化の法則性があるだろう、と。

続けて読んでみよう。

Massee came to the conclusion that the genus Coprinus is the remnant of a primitive group from which have descended the entire group of the Agaricine, and he then made the deduction that since Coprinus spores are black, blackness in spore colour is a primitive feature. According to this view, the species of Agaricinere with yellow, red, brown, purple, and white spores have descended from black-spored ancestors.
(Masseeは、ヒトヨタケ属は、ハラタケ科のすべてのグループの原始的な名残であると結論づけ、そのヒトヨタケ属の胞子は黒いので、その胞子の色が黒いというは原始的な特徴であると推測した。この見解によれば、黄色、赤、茶色、紫、白の胞子を持つハラタケ科の種は、黒い胞子を持つ祖先から進化し変化してきたことになる。【Deeplくん+林】)

なるほど、
この時代は、ヒトヨタケ属がきのこの祖先に近いとされていたんだぁ!
だから、黒いってのは、原始的な名残である!としたわけだ、ふむふむ。

ちなみに、
Massee というのは、George Edward Massee  という当時のめちゃくちゃスゴい菌学者。

George Edward Massee (1850-1917), englischer Botaniker und Mykologe

これは私感だが、

ブラーは、Massee の論をしばしば持ち出しては、否定する。
(なんか権威ある菌学者に、勝手に嫉妬してるみたいな??)

ほら、やっぱり、ブラーは、真っ向から反論しだした!

On general grounds, I am inclined to regard colourlessness as the most primitive condition in spores
((でもさ、)普通に考えたら、無色っていうのがもっとも原始的って思わない?【林 意訳】)

このあと、

ブラーは、

We may well believe that at first the conidia were as colourless as the basidia off which they became constricted. It seems to me probable that the various pigments were only gradually developed, possibly by a series of mutations.
「だってさ、原始的な分生子(conidia)は、無色の菌糸が分化して作られてるんだよ、
それらが進化して担子器になったりしたわけなんだから、
それを考えるとやっぱ最初は無色だったんだって思うよ、
進化する過程でいろんな色素を獲得していったって考えたほうが筋が通ると思うんだけどな~【林 超意訳】」

と持論を展開するわけです。

なぜ、色を獲得することになったのか?

これもきっと意味があるはず、とブラーはいろいろと思考をめぐらせます。

Possibly, too, the colouring matters of spores are useless so far as their colour properties are concerned
: they may be merely bye-products of certain metabolic processes.
(そもそも胞子に色があることに意味があるのか?
単なる代謝過程の産物ではないのか?【林 意訳】)

ナラタケの根状菌糸束が黒いのは、

いったい生態的にどんな意味があるのか?意味がないぢゃないか、

とこれを引き合いに出して、上のような考察に繋がっていく、

黒いにょろって出ているのがナラタケの根状菌糸束
ナラタケの発生する樹木にこんな黒い根のようなものが巻き付いているのを見たことがないだろうか

でも、これだけぢゃないのが、ブラーのめんどくさい面白いところ、

However,

(きたきた!)

it will shortly be shown that sunlight is injurious to the spores of certain Hymenomycetes.
(日光がきのこ(Hymenomycetes;菌じん【蕈】綱)の胞子にとってどれだけ有害であるか、
(この先まで読んでくれれば)わかるよ【林 意訳】)

なんていうか~・・・もったいぶる言い回しは、ブラーならでは🍄です。
もったいぶりすぎ、回りくどすぎで、翻訳してても意味がわからず~なんて、もう OFTEN!

もしかしたら胞子の色は、
大気中に放出され長時間空気中に漂うとき、
さらされる日光の影響を軽減する作用があるのかもしれない、と考えたわけですな!

そこで、ブラーは、スエヒロタケの胞子(無色)を使って、
太陽光の影響をどのくらい胞子は受けるのか、実験をするわけです。

なんだか、長文になってしまったので、その実験の内容と結果は、次回に!!

(2021.1.11)

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