カンゾウタケ(肝臓茸)Fistulina hepatica
※このページをご覧のみなさまへ
今回のブログでは、きのこの管孔(穴が沢山集合しているような写真)をいくつか掲載しています。この記事をご覧になる前に、「集合体」が苦手な方はお控えになられた方がいいかもしれません…。
そのまま、ご覧になる方はこのままお進みくださいませ。
きのこちゃんより
時期
梅雨期と秋(福岡県では4月下旬から6月上旬、10月頃の2季節で観察することができます。)
発生環境
比較的大きなスダジイ・コジイなどのブナ科の根本や幹の隙間、うろの隙間などから生えてくる根際心材褐色腐朽菌です。
特徴
【傘】
子実体は扇形、半円型、腎臓型で濃い紅色~ワイン色。傘は根元から一つ出ていますが、発生場所によっては重なり合って生えている姿を見かけることもあります。未熟な子実体はピンク色で遠くからでも良く目立ちますが、成熟するとだんだんと色あせていき、最終的には黒褐色へと変化していきます。その見た目から、米国では「Beefsteak Fungus(ビーフステーキのきのこ)」、フランスでは「Langue de boeufまたはOx Tongue(牛の舌)」とも呼ばれています。
【⠀管孔(かんこう)】
未成熟な子実体は、裏も表も共通の表皮構造を持っているので、傘と管孔との境目ははっきりとはしていません。成長すると下面のみが管孔へと変化していきます。下面は無数のパイプが敷き詰められているような構造になっていて、大きさの違う管孔がまばらについています。
【断面】
カンゾウタケの子実体の断面は、本当に霜降り肉にそっくりな色合いをしています。また、本種は赤い色素が水分と一緒に流れ出るため「血」のようにも見えてしまいます。
一般に若いうちは食用になるとされ、広く食べられていますが酸味が強いこともあり、肉の味には程遠いです。
今回は炒め物を作ってみました。…外見だけ見ると本当に肉なんじゃないかと疑ってしまうくらいそっくりでした。(ちなみに、炒め物には肉は入っておりません)実際に食べてみると…きのこ自体は歯ごたえはありましたがやっぱり酸っぱかったです(笑)
「ヒダナシタケ目」から「ハラタケ目」へ
樹木の根本付近から生えるカンゾウタケは、見た目だけで判断するとサルノコシカケ類に似ているきのこという印象がありましたが、最近の研究ではカンゾウタケはサルノコシカケが所属している「ヒダナシタケ目」ではなく、「ハラタケ目」のきのこ。つまり、私たちがよく見にするきのこ型のきのこに比較的近いことが分かってきました。また、カンゾウタケ属のきのこは世界で8種類しか確認されていない小さな属なのです。
ちなみに、カンゾウタケの管孔は他の種類のきのこと違って独特な形をしています。せっかくなので、イグチ類・タマチョレイタケ類・ラッシタケ類の管孔と一緒に比較していきましょう。
以上、代表して3種類のきのこの管孔を紹介しました。この管孔を見てみるとカンゾウタケの管孔は他とは違った構造になっているので面白いですね。
漫画「さすらいのきのこ」
■前回の物語「ユウレイタケ(ギンリョウソウ)」はこちら
【参考書・文献】
山渓カラー名鑑 増補改訂新版 日本のきのこ(山と渓谷)
しっかり見わけ観察を楽しむ きのこ図鑑(ナツメ社)
世界きのこ大図鑑:原色・原寸(東洋書林)
北陸のきのこ図鑑(橋本確文堂)
注)きのこ豆知識は毎月2回更新をします。(第1、第2金曜日に更新を予定していますが、臨時休載、更新の変更などもあるかもしれないので、その際はご了承ください)