新種サトタマゴタケの論文を分解する(タマゴタケの学名の変遷)

2013.07.07 神戸

新種サトタマゴタケの論文が発表されました。
「Amanita satotamagotake sp. nov., a cryptic species formerly included in Amanita caesareoides」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mycosci/65/2/65_MYC618/_pdf/-char/en
かなり以前から「タマゴタケには2つのタイプが存在する」という噂が流れていたのですが、やっと「論文」という形で発表されたのが今回のサトタマゴタケの論文となります。
タマゴタケという超絶人気のキノコを細分化し、それを論文にする、などという所業はまさに「産みの苦しみ」であったことが「それにかかった長さ」から推測されますし、中身を読んで気絶するほどの内容に圧倒されてしまいます。
きのこびとでは、そんな論文の発表を記念して細かく解説していきたいと思います。


タマゴタケの現在の学名はご存じだろうか?

Amanita caesareoides

読みは「アマニタ・カエサレオイデス」と呼ぶのが一般的です。
一般的というのは、「Amanita caesareoides」自体はラテン語なのでざっくり言えば、我々日本人としてはローマ字的な読み方をすればいいのですが、英語圏の人たちは英語風な発音をする人が多く、Amanita であれば「アマニータ」なんていう極うまスイーツの様な呼び方となるのですね(笑)。

では「caesareoides」とはどのような意味なのでしょうか?

これは2つの意味が隠れています。
まずは前半の「caesar」ですが、これはローマ皇帝だったガイウス・ユリウス・カエサル(Gaius Iulius Caesar)から来ております。また後半の「oides」はラテン語で「~に似ている」という意味ですね。
つまり日本語で言うと「カエサルに似ている」となるのですが、ここでいうカエサルというのは元になるキノコがありまして、それがセイヨウタマゴタケと呼ばれているキノコですね。
学名は

Amanita caesarea

「アマニタ・カエサレア」と読みますが、これは「caesar」をラテン語風にしたもので、ガイウス・ユリウス・カエサルの名前が由来で「きのこの皇帝」という意味でつけられたものだそうな(諸説ありますが)。

ともあれ、日本の「タマゴタケ」の現在の学名がAmanita caesareoides(アマニタ・カエサレオイデス)でその名前はAmanita caesarea(アマニタ・カエサレア)に似ているという、というところから来ていると覚えると非常に覚えやすいのですね。

さて、では Amanita caesareoides はいつどこで記載されたものなのでしょうか?

その答えは論文のIntoroduceに記載されていました。
今回の論文を読んで驚いたのが、Amanita caesareoides という学名に至るまでの経緯がとても詳しく解説されていたことなのです。これはせっかくの良い機会なのでこの名前の変遷を写真と一緒に分かりやすいようにまとめてみようと思います。

Amanita caesareoides はいつ、どこで記載されたのか?

2023.9.15 阿寒湖

Amanita caesareoides は1950年(昭和25年)にカムチャツカ半島のものをタイプ標本として初めて記載されました。Vassiljeva, L. N.という方が「Species novae fungorum」という15ページに渡る論文の中で15種ほどのキノコを記載しているのですが、その中の一つに Amanita caesareoides があります。

これラテン語とロシア語で書かれているのですが(通常はラテン語か英語)、正式なものなんだろうか??と疑ってしまいますが、この年代のものはこんな感じなんだろうなぁ、、と思っておるのですが、どうなのでしょう?
原記載が手に入りましたので、ここで原文(ラテン語)と翻訳し内容を整理したもの(Gemini使用)を載せておきます。

Dеsсriрtiо. Pileo ovato, dein plano, late umbonato, aurantiaco-miniato, 100-140 mm lato, margo costato-striato. Carne alba, tenui, circa 3 mm crassa; lamellis liberis, confertis, circa 10 mm latis, pallide ochraceo-flavis; stipite ochraceo-flavo, farcto, circa 190 mm longo, annulo concolore; volva libera, interne flava, externe alba. Edulis. Sporis late ellipsoideis, 8-10Х 7 :.1., non amyloideis. Stаtiо. USSR: Extremus Oriens australis, in quercetis. Distr. Voroschilov et prope Primorskaja. VIII-IX 1945, 1946. Leg. auctor. ОЬsеrvаtiо. Species nostra А. caesareae valde proxima, а qua differt volva intus flava et sporis minoribus.

傘 : 最初は卵形、その後平らになり、中央が盛り上がる。橙色から朱色、直径100-140mm。縁は肋状に条線が入る。
肉 : 白く、薄く、厚さ約3mm。
ひだ : 柄から離生し、密生しており、幅約10mm。淡い黄土色から黄色。
柄 : 黄土色から黄色、中実、長さ約190mm。同色のつばがある。
つぼ : 柄に付着せず、内側が黄色、外側が白色。
胞子:幅広の楕円形、8-10 × 7 µm。デンプン(?)を含まない。
産地:ソ連邦(現・ロシア連邦):南極東部、オーク林。ボロシローフ近郊とプリモリエ近郊での分布が確認されている。1945年8月-9月、1946年8月-9月。著者採集。
考察:本種はセイヨウタマゴタケ (Amanita caesarea) に非常に近縁であるが、つばの内側が黄色で胞子が小型である点で区別される。

https://www.binran.ru/files/journals/MOSR/1950_6_7-12/MOSR_1950_6_7-12_Vassiljeva.pdf

この時代の新種記載はこれぐらいで済んでたのね、、、ふーん、と思ってるのは僕だけでしょうか?(苦笑)
サトタマゴタケの論文は1つの種を記述するのに19ページ。
Amanita caesareoides は1つの種を記述するのに7行。
あぁ、昔は良かったなぁ、、、なんて懐かしむ気持ちになってしまいますね。

さて、この論文の中で注目なのは最初にも書きましたが「カムチャッカ半島」で採取されたもので記載された、ということです。

北海道からカムチャッカ半島までの距離は北北東に進んで約1200km。
Amanita caesarea が原記載されたヨーロッパと比べて遥かに近い場所である。
しかし、タマゴタケは Amanita caesareoides が発表された後も同種と同定されることはありませんでした。

何故なのでしょうか?

Amanita caesarea(オオベニタケ)時代

https://www.inaturalist.org/observations/68800848

タマゴタケは当初、1900年(明治33年)Hennings(ヘニング)によって「オオベニタケ」という一般名でA. caesareaとして同定されました。

「Fleischige Pilze aus Japan」(日本産のカサのあるキノコ類)というドイツ語のタイトルを付けれた小冊子?の中にキノコの一覧が書かれていて、その中にこの様な記述があります。

「Amanita caesaria Scop. Cam. II. p. 419. Nom. Jap. Obenitake. Nikko.」

ここからタマゴタケはオオベニタケという和名が付けられたことがわかります。

では「Fleischige Pilze aus Japan」はどういうものなのでしょうか?
その序文を翻訳してみました。

日本産のカサのあるキノコ類。
P. ヘニング著
以下のキノコは、白井博士が現地で生きた標本から描いたカラー図をもとに、著者が同定したものです。
白井博士は親切にも、この目録に日本語名を加えてくださいました。この目録は、この地域の菌類研究に少なからぬ貢献を果たすものでしょう。
この地域の菌類の大部分は、ヨーロッパで見られる種と完全に一致しています。

https://www.zobodat.at/pdf/Hedwigia_Beiblatt_39_1900_0155-0157.pdf

この中の「白井博士」というのは植物学者・菌類学者の白井光太郎博士だろうと思われます。
その白井博士がスケッチした絵を元に来日していたP.ヘニングが同定したものであると考えられます。
その際に和名に関しては白井博士が書き加えたと書いてありますので、オオベニタケというのは白井博士によるものなのでしょう。

ちなみに、ヘミングが同定したという標本は1894年、栃木県日光市の中禅寺湖畔のミズナラ林で採取されたもののようですので、これをサトタマゴタケかタマゴタケかを調べるサイトで調べてみると「タマゴタケ」でした (#^.^#)

Amanita caesarea(タマゴタケ)時代

日本菌類図譜 川村清一
https://dl.ndl.go.jp/pid/1014705/1/1

タマゴタケが、「タマゴタケ」として初お披露目したのは川村清一博士の「日本菌類図譜」でその名前が発表されてからだ。Amanita caesareaとして「たまごたけ」の和名が付けられているのがわかります。

1913年(大正2年)の事である。
ここから「タマゴタケの歴史」が始まったと言って過言ではありません。

川村博士は幼菌の頃の卵に包まれた姿、また、幼菌から傘をちょこっと出した愛らしさから「タマゴ」という名にふさわしいと思われたのでしょう。

ちなみに川村博士は大正・昭和という菌類学の黎明期に、今日の日本菌類学の基礎を築かれた方で「原色日本菌類図説」などの図鑑を刊行されたことで知られています。
また、大阪自然史博物館で開催された「きのこ!キノコ!木の子! ~きのこから眺める自然と暮らし~」で「きのこの描き方」というパネルがありまして、川村博士が重要視した学術的な図の描き方を説明されておりました。
川村博士はキノコの分類を専門とされていましたが、イラストの描き方も飛びぬけて上手かったのです。

「きのこ!キノコ!木の子! ~きのこから眺める自然と暮らし~」

川村清一博士によるイラスト。
まるで写真の様に美しい。

「きのこ!キノコ!木の子! ~きのこから眺める自然と暮らし~」

話は脱線しましたが、川村清一博士によって「タマゴタケ」と名付けられ、その和名が1917年に発行された「訂正増補日本菌類目錄 2nd」(白井&宮部)などにも引き継がれていきました。

その後、川村博士は傘の色によってタマゴタケが3つの品種に分かれることを提案したのです。
それらは

  • 黄色いもの
  • 赤みがかったオレンジ(朱色)のもの
  • 深紅色(クリムゾン)のもの

傘の色による分類が正しいのかどうかは何とも言えませんが、これらは

  • 黄色いもの1:長野県木曽福島で安田博士が採取
  • 黄色いもの2:千葉県松戸で川村博士が採取
  • 深紅色のもの:長野県(根野山)で川村博士が採取
  • 朱色のもの:千葉で川村博士が採取

とのことで、この時点で既に「タマゴタケには複数種(複数品種)あるのでは?」という風に考えられていたのは間違いありません。

しかし、この段階ではまだ Amanita caesarea なのでありました。

Amanita hemibapha(アマニタ・ヘミバファ) 時代

さて、ここで大きな転換期を迎えます。

1975年(昭和50年)、本郷次雄博士によって「タマゴタケ」は Amanita hemibapha と同定されたのです。

やっと Amanita caesarea の呪縛から離れることが出来たのです!!

では、Amanita hemibapha とはどんなキノコなのでしょうか?
まずは原記載を見てみましょう。

原記載は1870年(明治3年) M. J. Berkeley によって記載された
「IV. On some Species of the Genus Agaricus from Ceylon」
という論文です。
https://academic.oup.com/transactionslinnean/article-abstract/os-27/2/149/2374873

論文のタイトルが示すように、Amanita hemibapha はスリランカのセイロン島で採取されたもので記載されています。
まぁしかし、古すぎますなぁ、、一応 Amanita hemibapha の記載を引用してみます。

AGARICUS (AMANITA) HEMIBAPHUS, Berk. & Br. Pileo e campanulato expanso glabro obtusissime umbonato flavo, sursum coccinco, margine sulcato crenato; stipite farcto, (basi excepta attenuata) subæquali, pallide flavo, e volva crassa bilobata oriundo; annulo supero deflexo striato lato; lamellis albis segmentiformibus adnexis. (Thwaites, Ceylon, n. 700.)
Hab. On the ground, July 1868, Peradeniya.
—-
Pileus nearly 3 inches across, yellow, the upper half of a beautiful scarlet; margin deeply sulcate; stem 4 inches high, an inch thick, attenuated as in Phallus and its allies at the very base, where it sinks into the strongly incrassated bilobed volva, which gives off a few short fibres.
This belongs to the first section of the subgenus Amanita, in which it is remarkable for the great thickness of the volva and the attenuated base of the stem.
—-
・傘の直径はほぼ3インチ (約7.5cm)
・色は黄色で、上半分は鮮やかな緋色
・縁は深く溝状になっている
・柄の長さは4インチ (約10cm)、太さは1インチ (約2.5cm)
・柄の基部は、タマゴタケ (Phallus) やその近縁種のように細くなり、厚く肥大した二裂した菌托に埋没している
・菌托からは数本の短い繊維が生えている

https://academic.oup.com/transactionslinnean/article-abstract/os-27/2/149/2374873

これもまた短い内容ですねぇ、、、1870年ならこんなもんなのでしょうか?(苦笑)

そこで、本郷先生が Amanita hemibapha について記載された資料から記載分を和訳してみます。
1975年に発行された「Notulae Mycologicae (14) 」という論文で、滋賀大のリポジトリーの中に記載分がありました。
https://shiga-u.repo.nii.ac.jp/records/1515

興味深いので記載の部分を全て翻訳して引用しておきます。

傘:直径8-9cm以上、凸状から平開し、やや盛り上がる。
表面は最初粘性があり、内部に条線がみられる。
色はブロンズ色 (5E5) からハチミツ色 (5D6) で、中央に向かって濃くなる。
縁から中央に向かって 1/3 から 1/2 程度の部分が溝状に条線が入る。
肉質は中央は適度な厚さ、縁は薄い。淡黄色で柔らかく、味は淡、匂いも弱い。
ひだ:柄の上部に垂生線があるが、柄からは自由。密生しており、淡黄色 (3A4~3A3)。
縁は灰褐色で絮状毛状になり、浅く波状 (crenulate)。幅は6-7mm。短いものは内側の先端が斜めに切断される。
柄:長さ11-14cm、太さ1-1.3cm。上に向かってわずかに細くなる。詰まっており、トウモロコシ色 (4A6) からバター色 (4A5)。
いくつか濃い黄色の不完全な帯がある。
つば:上部についており、黄褐色、膜質で、上部はわずかに条線が入る。
つぼ:下部が厚く、裂片状の縁に向かって薄くなり、全体としては大きい。色は白っぽい。
胞子:幅広楕円形、滑らか、透明、7.5-10.5 x 5.5-7.5μ。 1個または複数個の内部液滴 (guttulate) があり、デンプンを含まない。
担子器:4個の胞子をつける。24-34 x 7.5-10μ。
縁細胞:棍棒状、楕円形、または洋梨形。薄壁で、22-52 x 12-37 μ。

生息地と分布:本菌は、1974年7月20日、京都市左京区にある詩吟学院離宮の庭園内のマツやカシなどの下に生息しているのが発見されました (標本番号5120、採集者: 吉見清次氏)。
これまでの分布としては、ジャワ島、ボルネオ島、シンガポール、マレーシアが知られており、日本 (京都) での発見は初記録となります。
既知の図としては、Boedijn [文献1] の図 III,2、Corner & Bas [文献2] の図54 とプレート11を参照してください。
特徴と近縁種:
本種は、茶褐色オリーブ色の傘と、鮮やかな黄色から薄汚れた黄色の帯のある柄が特徴です。
Amanita hemibapha は色変異が多く、Corner & Bas [文献2] はこれを 3 つの亜種に分類しています。
亜種ヘミバファ (ssp. hemibapha) は、深紅色をした傘と赤い帯のある柄が特徴で、日本でも古くから知られており、多くの研究者 (筆者を含む) によって A. caesarea と同種と考えられてきました。
しかし、ヨーロッパ産の A. caesarea は全く別の菌種であり、一般的には厚くほとんど条線のない傘、鱗片のない太くて詰まった柄、そしてより長い胞子などが特徴です。
記載と図を見る限り、北米産の A. caesareaAmanita hemibapha 亜種 hemibapha と同一種のようです。

https://shiga-u.repo.nii.ac.jp/records/1515

この論文の中で A.caesarea との明確な違いが指摘されています

  • 厚くほとんど条線のない傘
  • 鱗片のない太くて詰まった柄
  • より長い胞子

これらの違いにより、タマゴタケはヨーロッパ産の A. caesarea ではなく、スリランカで記載された A. hemibapha であると。
また同時に A. hemibapha は色変異が多く、川村博士が指摘したように3つの亜種があることも書かれています。

そして、ここでもっとも重要な点は

Amanita caesareoides が検討されていなかった

という事です。
まだDNAでの分子系統解析による分類が行われていなかった時代、肉眼的な特徴と、顕微鏡的な特徴などが一致していれば同種である、という結論を出すのは仕方ない話であると思えます。
また、もしかして Amanita caesareoides の情報へのアクセスが難しかったとか、知られていなかったなどにより、検討から漏れてしまったということも考えられます。

ちなみにこの時の標本というのは滋賀県大津市南郷井穂谷で採取されたものだそうなので、恐らく今でいう「サトタマゴタケ」だと思われます。

Amanita caesareoides(アマニタ・カエサレオイデス)時代

2013.07.07 神戸

いよいよ、また大きくタマゴタケの歴史が動きました。

2015年(平成27年)遠藤直樹先生によりタマゴタケは Amanita caesareoides と同定されたのだ。

2016年に発表された論文のAbstractをここに引用してみます。

本論文は、日本産の赤いベニタケと呼ばれるキノコ、通称「タマゴタケ」の分類について再検討したものです。
これまで、日本産の「タマゴタケ」は、Amanita caesareaA. hemibapha として同定されてきました。
本研究では、日本産の「タマゴタケ」の形態学的特徴と分子系統解析を行いました。
形態学的特徴は、模式標本 (レクトタイプ) である A. caesareoides と一致し、A. hemibapha の模式標本 (等模式標本: アイソタイプ) とは一致しませんでした。
また、核リボソームRNA遺伝子内の ITS領域の分子系統解析を行った結果、日本産の「タマゴタケ」は A. caesareoides の模式標本と単一の系統群を形成し、A. caesareaA. jacksonii に近縁であることが示されました。
一方、形態的に A. hemibapha の模式標本と一致するタイ産の標本は、インド産の標本と同じグループに含まれており、A. caesareoides とは離れた系統群であることが明らかになりました。
以上のことから、日本産のタマゴタケは、A. caesareoides であることが強く支持されます。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/mycosci/57/3/57_MYC57200/_pdf

ここで興味深いのは「形態学的特徴もタマゴタケと A. hemibapha は一致しなかった」と書かれています。
素人目から見ると、タマゴタケと A. hemibapha はどう見ても同じに見えるのですが、細かい部分を検証していくと異なっている様ですね。
では、論文より異なる部分というのをピックアップしてみます。

A. hemibaphaは以下の点でタマゴタケと異なります

  • 傘の表面の色は、主に中央部分のみが赤みがかった色をしています
  • 傘は盛り上がりがなく、平たい形をしています
  • 柄の下部が菌托 (volva) につながる部分の形状が異なる
  • 胞子の形と大きさが異なり、主に楕円形で、まれに幅広楕円形や細長いものがある

どうでしょう?
実はDNAでの分子系統解析することもなく、形態的、顕微鏡的な検証に於いて比較するとこの様な違いが確認できたそうです。

しかし現在も多くの図鑑がタマゴタケの学名が Amanita hemibapha の状態で掲載されています。

  • 日本のきのこ(ヤマケイ新版)
  • きのこ図鑑(幼菌の会)
  • 北陸のきのこ図鑑

などなど、、、
僕が持っている中で、唯一 Amanita caesareoides となっているのは「青森県産きのこ図鑑」のみです。
これは、出版時期が2018年と比較的新しいので、既にその時点では Amanita caesareoides に変更されていた、ということでもあります。

Amanita satotamagotake(サトタマゴタケ)の時代がやって来た

そしていよいよ和名タマゴタケ自体が細分化される時代が訪れました。

学名はこれまで変遷してきましたが、和名が変わるのは川村博士が1913年に「タマゴタケ」という和名を発表して以来の事になりますので、なんと111年目での変更ということになりますね!!(◎_◎;)
思えば、川村博士が傘の色による品種の違い、というのを提唱しておられましたが、当たらずとも遠からずで、例えば日光の中禅寺湖湖畔でみれるもの(Amanita caesareoides)と、滋賀県の大津でみれるもの(Amanita satotamagotake)とは種類が違ったのですね。

この2種類、肉眼的に判断するのはかなり難しいと論文の中では記載されています。

しかし、例えば A. hemibapha と日本のタマゴタケが実は違ったように、肉眼的な違いを我々でも見出せるかも知れないなぁ、、なんて大胆な事を考えつつ、今回の記事を終わりたいと思います。

「参考」

きのこ学名読み方の例示(埼玉きのこ研究会会誌「いっぽん」No.13(1999.1.15)より)
http://www.ippon.sakura.ne.jp/kanren_data/gakumei_yomi.htm

セイヨウタマゴタケ(Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%82%A4%E3%83%A8%E3%82%A6%E3%82%BF%E3%83%9E%E3%82%B4%E3%82%BF%E3%82%B1

Species novae fungorum
https://www.binran.ru/files/journals/MOSR/1950_6_7-12/MOSR_1950_6_7-12_Vassiljeva.pdf

「Fleischige Pilze aus Japan」
https://www.zobodat.at/pdf/Hedwigia_Beiblatt_39_1900_0155-0157.pdf

白井博士
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BD%E4%BA%95%E5%85%89%E5%A4%AA%E9%83%8E

Facebook コメント

Follow me!

コメントを残す