論文のすゝめ(どろんこ氏の最新の論文を読んで)

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クモ生冬虫夏草Torrubiella sp. の生息地での発生状況
(東京都八王子市).撮影:大塚 健佑氏

Twitterでフォローしてるどろんこさんがこんなツイートをされていた。

出されたのはこの様な論文です。

クモ生冬虫夏草 Torrubiella sp. の生活史 ― 追培養と野外採取試料の観察による温度条件に着目した考察 ―

簡単に書くとヌンチャククモタケと和名を付けられた未記載種と同種かまたは近縁種(Torrubiella sp.)という冬虫夏草の生活史を「温度条件」という要素に着目していくつかの環境で実験を行い、その成長過程を観察し考察をする、というものです。

実はあまり最初から最後まで論文を読むことは少ない僕なのですが(あかんのは分かってます)、どろんこ氏の論文に関しては最後まで興味深く読み込みました。
それにはどろんこ氏がTweetした言葉に感銘を受けたからでした。

ただ今後ですが、しばらくは論文という形で報告する事は難しいと思います。
まず、僕はアマチュアなので自分のラボというものを持っていません。
それでも友人にワインセラーを借り、実験器具は自作し、時間と労力でカバーしてきました。しかし家庭を持ち優先すべきものが多すぎる現状それは不可能です。
こんな状況でも発想だけは溜まっていく一方なので少し残念ですが、子供が産まれてその大切さを知りました。それを蔑ろにするのは論外です。まぁ、これからは短報を出すくらいにしていこうと思います。人生まだまだ長いですし大丈夫(笑)
それでも言っておきたい。アマチュアでも論文は出せます!

https://twitter.com/doronko15/status/1497172360599769088
https://twitter.com/doronko15/status/1497172483903918080

この最後の一文に心を打たれました。

いや、アマチュアでも論文を出せるのは知っております。
ちえちゃんも一生懸命論文を書いてるし、「一緒に何か書かない?」と誘われてもいるのですが、しかしそれは僕の様な駄文を書くのが好きな人間にとっては遥か遠くにある存在だし、僕がいる場所とは次元の違うものでもあると感じてるんですよね。

でもやっぱり惹かれるんですよねぇ、、この誘惑、、一体何者なんだろう(笑)

それではどろんこさんの論文についてもう少し深く解説してみたい。

論文への道のりを解説してみる

1.試料集め

まずは試料であるヌンチャククモタケ近縁種(Torrubiella sp.)を沢山集める必要があります。これは自分で採取するか、他者の協力を得て、採取してもらったものを送ってもらう必要があります。
論文では2014年から2021年までの8年間に20個体が採取されています。

8年かかって実験&検証が行われた、、ということですね (◎_◎;)

2.追培養について

冬虫夏草と言われる菌類は採取された時点ではまだ生きております。
きのこは採取してしまったら、それ以後「生長」というのは難しい話。
しかし冬虫夏草は基本的には「虫」が宿主ですので、虫ごと採取出来たらその後「追培養」という形で生長させることが出来ます(※1)。もちろん採取された時点での生長度合いというのもありますので、全てが同じ条件だとは限りませんが、条件さえ整えれば未熟な試料から子実体を発生させ、子嚢殻をつくり、胞子を拡散させるまでの生長を観察することが出来ます。

※1
追培養に関してなのですが、かなりの経験と熟練の知識が無いと成功させることは出来ません。「実験」という形で持ち帰るのはアリかと思いますが、興味本位で「やってみよう」と思って持ち帰るべきではありません。間違いなく失敗し、死屍累々たるありさまになるのは火を見るより明らか。本来は自然の環境(つまりそのままの状態)で経過観察するのが望ましいでしょう。

3.追培養実験

追培養にはこの様な自作の装置を用意し、試料を宙づりにする様にして実験を行うそうな。

実験に用いた追培養槽

こういうケースを4個用意し、これを温度が違う(11℃,14℃,18℃,23℃)4つのワインセラーに設置し追培養をすることによって(1ヶ月半~2カ月)、温度によってその試料がどの様に生長するかが分かるのだ。
この辺りの詳細は是非論文を読んで欲しい!!

4.考察

実験も大変だが、この考察は論文のキモと言える部分。
いくら実験が上手くいっても、この考察に抜けがあったり解釈が間違っていたら実験が台無しになってしまうほど。
例えば実験で使用した試料は「本当にすべて同じ種なのか?」「宿主はすべて同じ宿主なのか?」「宿主の違いによって生態は異ならないのか?」「採取地によって条件が変わることはないのか?」などなど、あらゆる角度から考察を重ねる必要がある。

その為には知識が必要なのはもちろん前提条件としてあるのだが、あらゆる方面に目を凝らしてそれが正しいのか、そして何か漏れがないのか、ということをある時はマクロな視点で見る必要があったり、またある時は広角な視野で考察することも必要であったりするのですね。

どろんこ氏の論文を読んでいてこういう視点が必要なんだな、、と深く関心した次第であります。


これらの手順を踏み、長い時間をかけて論文は完成する。
また、この論文を書き上げるために多くの人に協力を求めることとなる。
論文の書き方の指導、宿主の同定、サンプルの提供などなど、、、
Tweetでも書かれていたが「一人でも欠けたら論文は出来ませんでした」というのはまさにその通りだと思うのですね。

論文のすゝめ

「論文を書く」という作業は深く、そして長い。
しかしその分、完成したものと言うのは大げさに言えば人類が存在する限り残され、後世の人に参照され、そして若い人たちへとバトンが引き継がれていくものである。
僕がこの「きのこびと」に書いている文章も多くの人に読まれはするものの、その資料的な価値としては論文には遥か及ぶものではありません。

例えばこの間記事にした「タマゴタケの柄はなぜダンダラなのか?」を論文にしよう、と思いつくとする。
すると採取した環境はさることながら「それらは本当に同じ種なのか?」とかを厳密に検証していかねばならない。
タマゴタケは現在 Amanita Caesareoides という学名がつけられているが、コナラ、クヌギなどのブナ科の樹下に発生しているものと、モミの樹下などの針葉樹と共生しているものとがあるが、これらは果たして同種なのか、、、なんてところから始めないといけない。
また、記事では顕微鏡での検証を一切行っていない(肉眼的な形態のみ観察)。
それではさすがに論文としての体を無すわけがないので、採取してきたタマゴタケのあらゆる部位の細胞を検鏡し、その組織を比較検証する必要があるだろう。

いやぁ、、やはり遠い存在だぁ、、、

しかし価値あるものを残していくには、これぐらいきっちりした検証が必要ということだ。

それでも言っておく、やるのなら論文が書けるぐらい研究しよう!

どろんこさんの言葉にあやかって言ってみました(笑)

最後に

どろんこさんのお話を初めて聴いたのがこのYoutubeの動画でした。
2時間ほどありますが、冬虫夏草の魅力やエッセンスがたっぷり詰まった内容となっておりますので、是非こちらも観てみてください。

冬虫夏草の魅力 日本冬虫夏草の会理事 大塚健佑氏

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