紫外線による同定は可能なのか?ニガクリタケとクリタケを比較してみる(前編)
先日、Twitterのフォロワーでもあるボーロさんがこんな投稿をされました。
多くの方は「クリタケ」という名前を出されるでしょう。
クリタケ、、、今の季節に、材から発生し、傘の径は3cmほど、色がややくすんだ茶色をしていて、傘の縁に白い被膜など付着させてた日にゃ、
「クリタケに間違いない!」
と断言する人がうじゃうじゃ湧いてくる、、、ってのは想像に難くない。
でも本当に「それだけ」でクリタケと断定していいのでしょうか?
そもそもあなたがクリタケと思っているキノコは本当にクリタケなのでしょうか??
違うキノコをクリタケと誤認していて、それをたまたまこのキノコがあなたが思っているクリタケに雰囲気が似ているから「クリタケですわ」と言っているのかもしれないのです・・・。
そんなお話をしてみたいと思います。
今回はボーロさんの投稿を中心に内容を展開していきます。
まずはボーロさんの質問
「ニガクリタケとクリタケどっちでしょう?」
そのヒントをボーロさん自身が与えてくれています。
UVライトを当てると反応する
UVライト、つまり紫外線を暗闇の中でキノコに当ててみるとこの様な感じで青く写っている部分と、若干ですが蛍光色に写っている部分が分かるでしょうか?
この蛍光色の部分は「光っている」ところなのです。
このUVライトを当てて光る、ということが今回キノコを見分けるための重要なポイントとなるのです。
ではボーロさんの投稿を続けてみていきましょう。
ボーロさんの検証
これから、ニガクリタケとクリタケの比較をやっていこうとおもいます。
構成は1,2枚目がニガクリタケ、3,4枚目がクリタケで、偶数枚が紫外線の反応です。
※以下の写真は左がニガクリタケ、右がクリタケです。
まずは全体像から 一見、カサの色がとても近いので同種だと思われますが、ニガクリタケは柄の上部が黄色みを帯びており、クリタケは白色です。また、紫外線を当てるとニガクリタケの方が強く蛍光イエローになっているのがわかります。
ニガクリタケ ニガクリタケ (紫外線を当てる) クリタケ クリタケ(紫外線を当てる)
お次に、カサについてです 紫外線を当てた写真は、反応が見られなかったので省略させていただきます。 カサの色はほとんど同色で、同じ様に皮膜が縁に付いていて、カサだけを見るとどちらもクリタケに見えます。
ニガクリタケ クリタケ
次はヒダについてです。 以前、クリタケは反応しないと言いましたが、クリタケも反応しました。しかし、反応の強さで言うとニガクリタケの方が強いです。反応前の色はどちらも白っぽい色ですが、色合いが違います。
ニガクリタケ ニガクリタケ(紫外線) クリタケ クリタケ(紫外線)
お次に、ヒダを顕微鏡でさらに拡大したものです。 まずはヒダの縁から ヒダの縁が特に反応するのは一緒ですが、反応の強さが違います。
ニガクリタケ ニガクリタケ(紫外線) クリタケ クリタケ(紫外線)
ヒダの側面の拡大写真です ニガクリタケは側面でも反応は見られますが、クリタケは全く見られませんでした。 個体差も考えられますが、クリタケ方が圧倒的に反応する部位が少ないのだと思われます。
ニガクリタケ ニガクリタケ(紫外線) クリタケ クリタケ(紫外線)
柄の頂部です どちらも粉っぽいですが、ニガクリタケだけが反応を示しています。
ニガクリタケ ニガクリタケ(紫外線) ニガクリタケ ニガクリタケ(紫外線)
カサの縁に付いた内被膜です。 写真では分かりづらいかと思いますが、ニガクリタケは被膜の色が黄色みを帯びており、クリタケは白色です。 また、ニガクリタケではツバがあります。 反応の強さはニガクリタケの方が強いです。 破れ方については環境や個体によって異なるかもしれませんので言及しません
ニガクリタケ ニガクリタケ(紫外線) ニガクリタケ ニガクリタケ(紫外線) クリタケ クリタケ(紫外線) クリタケ クリタケ(紫外線)
柄の中部です どちらも柄に付着した内被膜の痕跡が紫外線に反応しています。反応前の色はカサの縁に付いた被膜同様、色が異なります。
ニガクリタケ ニガクリタケ(紫外線) クリタケ クリタケ(紫外線)
柄の基部です こちらは紫外線の反応を確認するのを忘れてしまいました。すみません 私には外見での見た目はほとんど一緒に見えます。
ニガクリタケの方が鱗片が目立つ位でしょうか。
ニガクリタケ クリタケ
ここから顕微鏡での比較をしていきますが、今日はここまでにしたいと思います。 というのも、胞子はすでに確認したのですが、シスチジアについてもっと観察したいからです。明日じっくり観察します。
紫外線で光るニガクリタケ
どうでしたでしょうか?
実は僕自身どうしてもクリタケに見えたもんですから、途中でこんな質問を投げかけています。
- 1枚目は齧ると苦みがある=ニガクリタケ
- 2枚目は齧ると苦みが無い=クリタケ(※翌日確かめたとのこと)
これは揺るがしようのない事実であります。
そしてニガクリタケの方は紫外線を当てると光ることが知られています。
そしてもう一方のクリタケは光りません。
つまり、1枚目は齧ると苦く、そして紫外線を当てると光るのです。その特徴から左側がニガクリタケ、そして右側がクリタケということになります。
さて、あなたはもう写真を見ただけで安易に「これクリタケですわ」と気軽に言えなくなっちゃいましたね(笑)
そして、ボーロさんの顕微鏡による検証が続きますが、それはまた「後編」でのお楽しみに、、、