毒キノコ事件簿 その1
毒キノコを食べて食中毒になる。
良く聞く話ですな。
しかし、どういう毒キノコを食べて、、どういう症状が出て、、そして何と間違えて食べたか、、、あまり知られてなかったりするのが現状ではなかろうか?
たぶん我々キノコ好きにとっては「致命傷」となるので、この手のトピックにはことさらに注意を払うが、キノコに興味がない人にとっては、単にこれらのニュースを観ても「キノコは怖いよ~」で終ってしまうのでしょうなぁ、、きっと。
それはそれで良いことかも知れない。
「自然に生えているキノコは食べない」
それは飽食の現代人にとっては間違いなく正しい選択なのです。
しかし、、、ちょっと聞きかじっただけの
「公園で見つけたこんなキノコ美味しかった」
というあやふやな情報とそこに映し出されている姿だけを頼りに似たキノコを食べて食中毒になる、、なんて事件はおそらく今後も後を絶たないかもしれない。
だって、それって何故か楽しいんだもん、、ね?(笑)
なので、、、そんな方達のために贈る「毒キノコ事件簿」その1は、、、
毒キノコ事件簿(神戸西区にて)
まずはこの記事を見て下さい↓↓↓↓
毒キノコ食べて40代男性が食中毒、神戸市で34年ぶり 長雨と暑さでキノコ大量発生背景に
ちょっと大事な部分を引用しますと
神戸市保健所は4日、同市西区の40代男性が誤って毒キノコを食べ、嘔吐(おうと)や下痢などの食中毒症状を起こしたと発表した。男性は入院したが、快方に向かっているという。
市保健所によると、男性は2日午前、自宅近くの公園で食用のササクレヒトヨタケと間違って、毒キノコを採取。同日の昼食時にいためて食べたところ、約3時間後に食中毒症状が出た。毒キノコの種類は鑑定中という。
ここでは何のキノコを食べたか?というのは書かれていません。
しかし何と間違って食べたか?というのは書かれていますね。
一番上の写真が「ササクレヒトヨタケ」です。
ササクレヒトヨタケは草地や畑地または道端などに群生して出たりします。写真のササクレヒトヨタケも愛知にある公園の駐車場横で大群生していたものです。また食べるに当たっては洋食でも和食でも合うらしいので、ヨーロッパなどでも食材として広く使われているらしい。
またこのキノコはコプリーヌという商品名でも売られており(スーパーなどには置いてないかも?)、「食べたい」と思う人はネットとかで購入も出来るようなので一度チャレンジしてみては如何でしょうか?
容疑者を絞り込む
さて、そんなササクレヒトヨタケなのですが、この男性は一体なんのキノコと間違ったのでしょうか?
ポイントを整理すると
- 採取した日は10月2日
- 自宅近くの公園で採取
- ササクレヒトヨタケと間違う
- 約3時間後に食中毒症状
- 嘔吐や下痢などの食中毒症状
たぶんこれだけで「きのこびと」ならピンと来るはず。
ピンと来ない人は自然のキノコを食べてはいけません(笑)
少なくともこの中で「自宅近くの公園で採取」したこと、「ササクレヒトヨタケと間違う」という2点で容疑者の特定は出来るはずです。
犯人はこのキノコ「オオシロカラカサタケ」です。
これは神戸のとある小学校の横の脇道に並んで出ていました。
どうですか?ササクレヒトヨタケと似ていませんか?
傘の色、傘の形、何となく似てますよね?
ササクレヒトヨタケの最大の特徴である傘の部分のささくれはありませんが、「食べる」という欲に目がくらんだ人にとっては、そのポイントには目が行かないのでしょうね。
ほんとにアブナイです。
あと、公園などにもこんな感じで出ています。
これも似ていますよね?
傘の部分が丸みを帯びているのは「個体差」だ、、、なんて思ってしまうかもしれません。
ほんとに危険ですね、、でも結構可愛いですけど(笑)
ササクレヒトヨタケは傘の部分が長細いですが、この個体は球形に近い。
似ていると言えば似ていますが、これは「個体差」の域を超えている、というのは知ってる人たちの言い分ですね。
なのでちゃんと啓蒙する必要があるのです。
ではでは、比べてみましょう♪
ササクレヒトヨタケの写真は柄が良く写っている成菌に変えてみました。
こうやって見ると
「どうみても違うやろ~~」
と思われてる方、、、多いですよね?(笑)
ただし一枚目の写真(幼菌です)を見るとやはり「何となく似てる」と思ってしまう。
この「何となく似てる」はちょっとヤバイです!!
何故なら「似てる方だけ」を注視してしまい、「似てない方」を蔑ろにするからです。
そこで2つのキノコを並べてその「違い」を注意して見ていきましょう。
『ササクレヒトヨタケ』
- 傘の形が釣鐘型である
- 傘の表面がささくれだっている
- 傘の表面に縦にうっすら条線がある
- 傘の色が成菌だと灰色になる
- 老菌になると傘の表面が溶けてインク状の液体になる
- 柄の部分に小さなささくれがある
- 小さく無くなりやすいがツバもある
『オオシロカラカサタケ』
- 幼菌の頃は傘の形が球形である
- 成菌になると傘は大きく開き平らなまんじゅう型となる
- 成菌になると傘の大きさは20cmぐらいになる
- 傘の表面はツルツルで外被膜の跡が点々と残っている
- 柄の表面はツルツルしている
どうでしょう?
言葉で書くとわかりにくいかもしれませんが、少なくともこれだけの判別しやすい違いがあります。
最後に、これでどうだ?
ではでは最後に、オオシロカラカサタケが成菌の状態になるとこうなります。
もうこうなると絶対に間違いませんよね?(笑)
傘の直径は20cmぐらいあるしね。
そして、こんなオドロオドロシイきのこを「食べよう」とは絶対に思わないでしょう。
しかも美味しそうじゃないし。
でもでもこの写真を見て「美味しそう」と思う人、、、別の病院行ったほうがいいわ(笑)