ツチグリ(土栗)Astraeus sp.

時期

主に夏から秋(福岡県では、1年を通して観察することができますが、最もよく見られるのは秋から冬、梅雨時期です。)

発生環境

菌根菌。マツ科・ブナ科・カバノキ科など各種林内の地上に姿を現すきのこです。主に登山道脇などの斜面地で見かけることが多いです。

タイミングが良い時はたくさん見られることも…

特徴

名前の由来は、幼菌時丸い形をしていて土を掘るとコロコロと栗の形のようなものがでてくるので、この名前がついたといわれています。(名前の由来には諸説あり)

ツチグリ幼菌。成熟しているもの(これから星型に開くもの)は地表にでていることが多いです。

幼菌時は丸い形をしていて、土の中埋まっている状態になっています。この球体(外皮)の中に胞子の入った袋(内皮)があります。

成熟すると、地中から腕を開くようにして地表に出現してきます。始めは内皮と内側外皮は白い蜘蛛の巣状の菌糸で覆われています。

内側は蜘蛛の巣状の菌糸が見られます

その後、7~10枚ほどに外皮が裂けてきます。外皮の内側は、亀甲状に白くひび割れて遠目からでも目立つ模様へ変化します。

地中から出てきている様子。
土を押し上げて、地表に姿を現します。

湿った日は星形に開き、雨水や落ち葉などが上から降ってくるのを待っています。それらがツチグリの内皮に当たると大量の胞子を放出します。

画像
星型に開くと、袋(内皮)のてっぺんに穴が1つ空き、そこから胞子がバフっとでます

菌糸束は黒色で地中にある時は目立っていますが、星型になると切れやすいようで…目立たなくなってしまいます。

地中に埋まっていたツチグリには、黒色の菌糸束がたくさん付いてました。

森の環境は1日、1日変化します。雨が降ったり、雪が降ったり、乾燥したり…

ツチグリは、成熟すると地上に星のような子実体を出現させますが、乾燥した日には星形(外皮)は内側へと巻き込み、胞子の詰まった袋(内皮)を押して丸くなってしまいます。

乾燥して丸くなったツチグリ。

乾燥時このように丸くなることで、自らの腕で中の袋を押して胞子を出すことが出来ると共に、斜面地を転がりながら胞子散布を助けているのではないかと言われています。

左は乾燥しているもの。右は水にしばらく付けていたもの。

ちなみに、乾燥したツチグリに水分を与えて開かせる実験では約2時間~5時間ほど時間がかかります(その時の環境や子実体の状態次第)

水分を与えて開く様子を観察(この時は完全に開くまで約2時間かかりました)

この湿時と乾燥時の様子から、ツチグリは「きのこの晴雨計」とも呼ばれています。ちなみ、海外の「Astraeus hygrometricus※」のAdtraeusはギリシャ神話の星空の神で、hygrometricusは湿度計を意味するhygrometerに由来しています。

※以前は海外の「Astraeus hygrometricus」と同種にされていましたが、別種であることが分かり、現在も図鑑には「Astraeus sp.」と表記されています。(日本きのこ図鑑)

ツチグリを拠り所にする菌類

ツチグリは、星型に開く可愛らしい菌類です。一方でこのツチグリを拠り所としている菌類がいることも知られています。

■タマノリイグチ(玉乗猪口)Xerocomus astraeicola

本種はツチグリ幼菌上に発生する寄生菌です。全国的に発生は少なく、絶滅危惧種として記載されてる県もあります。福岡県でも発生は稀です。

ツチグリ上に発生した姿はまさに「玉乗り」

ツチグリツブタケ(土栗粒茸)Gelatinipulvinella astraeicola

本種はツチグリの古い外皮のみに発生する菌類です。見る機会は少ないかもしれませんが、実は1年を通して観察することができます。

画像
外皮上にあるちいさな白いツブツブです…
発生状態が良いと、埋め尽くすくらいにでています。
もっと拡大すると、ゼリーのようにぷにぷにした子実体を観察することができました。

不明菌

本種は、まだ何者か分かっていない菌類です。外皮上に黒いツブツブを出現させます。この種は古くなって間もないツチグリ外皮から発生していました。

外皮上の黒いツブツブ
これでまだ未熟なようで、胞子は確認出来ませんでした

■不明菌

こちらは、枯れてしまった幼菌の外皮の外側に発生していた菌類です。

奥にあるツチグリ幼菌にのみ発生していた
何かの卵のように見えますが、子実体は硬くしっかりと生えてました

漫画「さすらいのきのこ」

■前回の物語「赤星病菌」はこちら

<参考>
・関西菌類談話会会報no.34 大久保泰和 著(2017年5月 P16~P18)

・北陸のきのこ図鑑

・日本のきのこ

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