赤星病菌Gymnosporangium asiaticum

※「ナシ赤星病」と「ビャクシンさび病」は同じ菌が引き起こす植物の病気です。

時期

福岡県では、1年を通して観察が出来ますが、季節によって宿主が異なります。

発生環境

秋~冬︰ビャクシン類(今回はカイヅカイブキを観察)

春~夏︰ナシ・カリン・ボケなど(今回はカリンを観察)

カイヅカイブキ(ヒノキ科ビャクシン属)。中央にあるオレンジ色の塊が今回の主役。

特徴

春先、カイヅカイブキの枝先などに茶褐色の塊が見られます。この部分に雨水などがつくと膨らんでオレンジ色のゼラチン状になり、そこでつくられた胞子は近くのカリンに寄生して発病します。

1月、カイヅカイブキの葉は感染部分がやや黄色味を帯びてきます。黄色っぽくなっているところをよく見てみると、葉表面が膨れていて冬胞子堆がみえ始めています。

健康な葉と比べると、やや肥大していた
葉表面を破り、冬胞子堆が見え始めてきていた

2月~4月にかけて、カイヅカイブキの葉にはさび色の塊(冬胞子堆ふゆほうしたい)が現れてきます。

2月に観察した冬胞子堆(錆色をした部分)
葉表面から冬胞子堆が突き抜けていた

3月~4月頃、雨水に打たれたさび色の塊はゼリー状の塊に変化します。

雨水に打たれたあとは、ゼリー状に変化。
冬胞子堆を水につけて観察した様子。水につけて約1日経つとゼリー状に変化していた。

冬胞子堆の中にある冬胞子は発芽し担子胞子の形成を始めます。この担子胞子は風に乗ってカリンへと伝染します。

4月頃、新芽が出てきたカリンの木にはある変化がでてきました。

若葉には既に橙色の病斑がでていた

4月~5月頃、カイヅカイブキの冬胞子堆(ゼリー状)は見られますが、活気を失っているものが多く見られました。一方、カリンの葉は目立つ病斑がいくつも現れていました。病斑を拡大してみると橙色の点々(精子器)が発生しており、様々なハチ目昆虫が観察できました。

ゼリー状の冬胞子堆は次第にベタっと薄くなり、最終的には枝に張り付いたようになる
カリンの葉は模様がついてるように鮮やかな赤色をしていた
病斑を拡大すると、橙色の点々が現れていた。この周辺は蜜を出しているのか、ハチ目昆虫が訪れていた。

5月~6月上旬頃、橙色の点々(精子器)は次第に黒い点々へと変化していきます。蜜のようなものや、そこを訪れるハチ目昆虫は引き続き観察できました。

次第に黒点が増えていく

6月~7月頃、カリンの葉裏には毛のようなふさふさした物が出現します。これは銹子毛(しゅうしもう)と呼ばれていて、この内部に多数のさび胞子が連なっています。

葉の裏から出始めている銹子毛。
銹子毛は伸び進めると先端付近から亀裂を生じ、その中からさび胞子が溢れ出してきていた

8月頃になると、カリンの葉は感染した部分を中心に穴が空いてしまいました。今回の観察はここまでです。

病斑は茶色くなり、枯れたようになっていた。

赤星病と昆虫たち

今回の観察ではどのような生きものたちが関わりを持っているのか、週に1度同じ場所に通い続けました。その結果、

「トビイロケアリ」

精子器の周囲をウロウロしていた
横から見ると、美味しそうに舐めていた。おいしいのかな…

「ルリチュウレンジ」

観察中も3匹ほどウロウロしていて、舐めるような動作も観察できた

の2種を観察することができました。

今回は、この2種が赤星病菌に関わりがある事を知りましたが、地域によって利用昆虫は違っているのかもしれません。この観察地も含め、これからも観察していきたいと思います!

漫画「さすらいのきのこ」

■前回の「ウスベニタマタケ」はこちら

〈参考〉

野外で探す微生物の不思議カビ図鑑(全国農村教育協会)

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