ツクツクボウシタケ(つくつく法師茸)Cordyceps kobayasii

時期

夏~秋(福岡県では6月~10月(稀に11月)ごろ観察することができます)

発生環境

湿気がある山道、斜面地、公園の脇など、地中にいるツクツクボウシの幼虫から発生します。まれにアブラゼミの幼虫から発生することもあります。

特徴

ここでは、「ツクツクボウシタケ」と「ツクツクボウシセミタケ」について書いていきます。

「ツクツクボウシタケ」(アナモルフ(無性世代)または分生子と呼ばれます)

まるでカビのように粉々している「ツクツクボウシタケ」。きのこの形はまっすぐ直線的に伸びるものもいますが、先端で分岐するものもいます。地上に顔を出した子実体は頂点に白い粉をたくさんつけます。この白い粉は指で触れると付着します。

白い粉々がついた子実体。この粉々は分生子です。
未熟な子実体。

セミの幼虫は白い菌糸で覆われていて、子実体はセミの幼虫の頭部から出てくることが多いです。

ツクツクボウシが地上に出る寸前で感染してしまったもの。

ツクツクボウシの終齢幼虫は地上に出てくる際、巣穴の周囲に土を盛る性質があるようで、今回の感染個体は土を盛り、出口を作りあげた瞬間をやられたようです。

盛り上げ土を剥がすと、感染個体が出てきました。

「ツクツクボウシセミタケ」(テレオモルフ(有性世代)と呼ばれています。)

きのこの形は棍棒型で宿主の頭部から1本~10本発生します。宿主の体は白い菌糸に覆われています。ツクツクボウシタケ(アナモルフ)も同じ個体から出ていることがあります。

棍棒状のものはツクツクボウシセミタケ。ツクツクボウシタケも発生してました。
未熟なツクツクボウシセミタケ。
ツクツクボウシセミタケとツクツクボウシタケが発生していたもの。
成熟すると、子のう殻(ぷつぷつ)が観察できます。

実はツクツクボウシセミタケ(テレオモルフ)はなかなか見ることができない珍しいきのこなのです。

ツクツクボウシタケ(アナモルフ)はあんなに多く見られるのに、どうしてツクツクボウシセミタケはあまり出現しないのか…。まだまだ分からないことだらけなのです。

ちょっとした実験

ツクツクボウシタケやツクツクボウシセミタケを覆っている菌糸…さわるともふもふしててひんやりします。でも、そんなきのこを「ブラックライト」を使って見ると面白い発見があるのです。

通常、肉眼で観察したツクツクボウシタケ。
ブラックライトを当てると、緑青色に光るのです。

ブラックライトを当てると、菌糸が光る。というのはとても驚きでした。この発見以降、ブラックライトでの光り方実験をしてみることにしました。

表面のみの実験
菌糸及び柄の発光が確認できました。
ツクツクボウシタケ及びツクツクボウシタケ断面
ツクツクボウシタケの柄及び、菌糸の一部が発光していました。

今回の実験から、ツクツクボウシの体内に広がっている菌糸は光るのは確認できませんでした。菌糸の構造が異なるのかな…。

漢方薬での名前

ツクツクボウシタケは漢方薬として「蝉花(ぜんか)」の名前で販売されています。まれに、ツクツクボウシセミタケというこん棒状のきのこ(白い粉はついていません)が混じっていることもあるようです。

漫画「さすらいのきのこ」

■前回の物語「ソライロタケ」はこちら

【参考・サイト】
日本冬虫夏草図鑑(誠文堂新光社)
日本のきのこ(山と渓谷社)
冬虫夏草図鑑(家の光協会)

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