新種サトタマゴタケの論文を分解する(サトタマゴタケとは何か?)

2013.07.07 神戸

タマゴタケ、、日本では3本の指に入るぐらい人気のあるキノコである。

きのこびとの副代表である杏美ちゃんに

「どんなタイプの男性が好きなの?」

と聞くと

「タマゴタケみたいな人!!」

と即答するぐらいだ(笑)。
またテングの鬼と呼ばれているOAk氏に数あるテングタケの仲間の中でどれが好きなの?と聞いてもいつも答えは同じ

「やっぱ、タマゴタケですねぇ、、」

となる。
そんないわば日本国民から愛されているタマゴタケの仲間に新たな仲間が新種として追加されたのだ。
実は何年か前に「タマゴタケ」は関西にあるものと関東以北にあるものは別種であり、いつか論文が出されるはずだ、、という噂が流れて来ていた。
その「噂」はつまりはこの論文のことだったのですね。
僕らからしたら、待ちわびた論文であり、それが新種という形で発表されたのは実に喜ばしい限りなのです。

サトタマゴタケの論文
「Amanita satotamagotake sp. nov., a cryptic species formerly included in Amanita caesareoides」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mycosci/65/2/65_MYC618/_pdf/-char/en

そんな「新種サトタマゴタケ」なのですが、一般の方から見ると「新種」という響きは、

今まで人類が誰しも発見出来ていなかった生物を苦労の末に発見した

なんていう少年の頃に読んだ伝記にも出てきそうな物語を思い浮かべるだろう。
確かにそういうものも少なくはないが、今回の新種サトタマゴタケはそういう類のものではない。
しかし、「苦労の末」という意味ではこれほど苦労したものはないのではないか、と思ってしまう。
それは

今まで大先生たちが研究して発表したものの上に立たねばならない

からである。
論文のページ数で言えば19ページ。まさに大作。
それを読んでいるだけで、ふーっと気が遠くなるが、今回の記事では新種として発表されたサトタマゴタケにについて軽く触れてみたいと思う。

新種サトタマゴタケとは

2013.07.07 神戸

新種サトタマゴタケとは、、を簡単に言えば

今まで「タマゴタケ」と呼ばれていたものが、実は2つの種類であって一方はタマゴタケでもう一方がサトタマゴタケとなった。

ということになる。
学名で言えば

タマゴタケ:Amanita caesareoides
サトタマゴタケ:Amanita satotamagotake

となります、覚えやすいですね。
和名がそのまま学名になったことになります。
これはキタマゴタケが Amanita kitamagotakeという学名になったことや、チャタマゴタケが Amanita chatamagotake になった例もありますので、今回が初めてではありません。

「参考」
Reevaluation of Japanese Amanita section Caesareae species with yellow and brown pileus with descriptions of Amanita kitamagotake and A. chatamagotake spp. nov.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mycosci/58/6/58_MYC58457/_article/-char/ja/

では、この2つの種類はどういう点が異なるのでしょうか?

論文のAbstractに書かれている内容から列挙しますと

  1. 系統解析に於いてITSを考慮しない限り明確に2つのグループに分かれた
  2. 分布はタマゴタケは亜高山性から冷涼な温帯地域でサトタマゴタケは温帯から亜熱帯地域
  3. 担子胞子サイズは重なるもののサトタマゴタケの方が小さい
  4. 栄養寒天培地上ではタマゴタケのみ菌糸体の成長がみられた

この4点である。
1はDNAを詳しく調べないと分からない事だし、2は沢山のタマゴタケの標本を集めて1の結果と照らし合わせることによってはじめてわかることです。また3に関しては重なる部分があるので、それを種差として判断するのはなかなか難しく、4に関しては培養試験をして初めて分かることになります。
つまり

タマゴタケを見つけてこれがサトタマゴタケなのか、それともタマゴタケかを見た目で判断することは出来ない

ということだ。
それほど、この2種類は酷似しており、今までこの2種が分けられていなかったということも十分納得できる話である。
つまりは我々素人が簡単に「これはサトタマゴタケだ」「いや、これはタマゴタケでしょう」と言えるシロモノではない、ということは理解してもらえるだろうか?

とはいえ、この4つの中に我々素人でも2種の判断が可能な要素が一つだけある。
それが2の分布の違いだ。

少なくとも神戸などで見ることが出来るタマゴタケは「サトタマゴタケ」であり、北海道の阿寒湖周辺で見ることが出来るタマゴタケは「タマゴタケ」であることが推測できるのですね。

ではそれをデータを入力することによって判断できるツールを作ったので紹介しておきましょう。

タマゴタケ or サトタマゴタケを判断する

202.9.15 阿寒湖周辺

タマゴタケを見つけた「標高」「時期」「その場所の年間平均気温」を入れればタマゴタケなのかサトタマゴタケかを判断できるサイトです。
以下の入力用サイトからタマゴタケを見つけた時のデータを入力し、結果表示サイトで確認してみてください。

『入力用サイト』
https://forms.gle/mSJsjfGAbCBXHU4L6

『結果表示サイト』
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1lbsR6wcWqSzjgfRLPiEbiwj_9RofodSYEnI6LinXOvc/edit?usp=sharing

※なお計算式は大菌輪の中島淳志氏が作成したものを使用させて頂きました
※また計算式は論文の中に記載されている内容より作成されたものです
※計算の精度は約90%です
※「年間平均気温」はGoogleなどで「年間平均気温 神戸」などで検索し、出てくる気象庁のデータなどから入力してください
※結果表示は入力された方全員の一覧になりますので、ご了承ください(名前を知られたくなければニックネームで!)。

結果はこの様にGoogle SpreadSheetの一覧で見ることが出来ます。
実は「サトタマゴタケ美味しくない説」というのがありまして、その判断基準にも使いたいとおもっていますので、食べた方、是非是非食べた感想も入れてみてください。


「参考」

「Amanita satotamagotake sp. nov., a cryptic species formerly included in Amanita caesareoides」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mycosci/65/2/65_MYC618/_pdf/-char/en

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