オオセミタケ(大蝉茸)Paraisaria heteropoda
時期
春に見られるきのこで、セミの幼虫から生えています。(福岡県では3~5月頃見られます)
発生環境
本種は寄生菌。広葉樹林や針葉樹林の地上で見られます。比較的多湿で一年を通して肌感がひんやりするところに発生していることが多いです。
特徴
【宿主】「アブラゼミ」「ヒグラシ」「エゾハルゼミ」などの幼虫
ちなみに…地中に住んでいるセミの幼虫は目の色が白色ですが、羽化直前の終齢幼虫は目が黒色になっています。感染したセミ幼虫の形から推測すると、子実体が出てくるときは羽化直前個体が高いように思われます。(他のセミ幼虫も同じ)
【形・柄】子実体はタンポ型で円形または楕円型の頭部と円柱形の柄からなります。肉質の柄を形成し、根元は細くねじれてやや硬めです。全体的に黄色味が強く、徐々に茶色くシミのようになっています。地上部では高さが10~12㎝ほど、結実部の大きさは0.3~0.8mmほど。頭部はこげ茶や褐色、黄土色など環境によって色味は誤差があります。湿気がある時は光沢もあり、小さな点々が敷き詰められているような構造になっています。この点々のひとつひとつに胞子がたくさん入っています。
【子のう殻】頭部のぷつぷつは、専門用語で「子のう殻(しのうかく)」と呼んでいます。子のう殻は埋生(まいせい)で、肉に埋もれているような構造をしています。オオセミタケは、成熟すると子のう殻から細長い胞子を放出させます。まとまって放出するので肉眼では白っぽく見えます。
【菌糸】菌糸は黄色っぽい色をしていますが、時間が経ったり古くなると褐色に変化してきます。
そもそも冬虫夏草(とうちゅうかそう)ってなに?
「冬虫夏草」という言葉は、“冬は虫で動きまわり、夏にいたれば草にかわる”との発想から生まれた言葉で、名称の元になったのは中国の奥地(四川、雲南、青海、甘粛の各省とチベットからネパールヒマラヤの高山帯)に分布しているコウモリガの幼虫に寄生する「シネンシス・トウチュウカソウ」のことを指しています。ただし、現在では昆虫やクモ、菌類や一部高等植物の果実に生ずるものも合わせて「冬虫夏草」と呼んでいます。
また、冬虫夏草を探す人たちの中では「虫草(ちゅうそう)」と呼ぶことも多いです。
冬虫夏草の3つの生活型
冬虫夏草は、様々な昆虫、節足動物、菌類に寄生します。宿主の生育環境により、子実体のでき方にも違いがあります。そのため、冬虫夏草には大きく分けて3つの型に分けられています。
地生型
寄種は地中に埋まっていて子実体のみ地表に出ていたり、飛翔中に倒れた昆虫などが地上に落下し、長い間落ち葉や土壌に埋もれてしまうもの。地中に生息している菌類から生える虫草を指します。宿主はセミ類幼虫、コガネムシ類幼虫、ツチダンゴ類など
朽木生型
立ち枯れや、生の立木に見られる枝腐れにも発生しますが、主力は風倒木や枯損木、伐根、原木栽培で放棄された古い榾木などで観察することができる虫草を指します。宿主は、コメツキムシ類幼虫、コガネムシ類幼虫など
気生型
樹幹、枝上、葉面上(主に葉の裏)、崖の壁面、苔のクッション上、クモの巣上などの基物に菌糸で固着したままの宿主から子実体が発生する虫草を指します。宿主は、アリ類成虫、ガ類成虫、ヤンマ類成虫など
漫画「さすらいのきのこ」
■前回の物語「ミドリコケビョウタケ」はこちら
【参考書・文献】
山渓カラー名鑑 増補改訂新版 日本のきのこ(山と渓谷)
冬虫夏草生態図鑑(日本冬虫夏草 著)
冬虫夏草図鑑(清水大典 著)
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