ツバキキンカクチャワンタケ(椿菌核茶碗茸)Ciborinia camelliae

時期

初冬から早春にかけて、「ツバキ」や「サザンカ」が咲くころに出現します。(福岡県では12月~4月まで観察することができます)

発生環境

本種は名前の通り、「ツバキ」や「サザンカ」の樹下に出現します。
菌核化した前年の花や蕾から発生するきのこで、「ツバキ菌核病」という植物病害菌としても知られています。

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昨年の花からでていたツバキキンカクチャワンタケ

特徴

【形】はじめお茶碗型で、成長すると皿型に開きます。きのこ自体は柔らかく、乾燥すると小さく縮みます。幼菌の時は全体的に褐色ですが、老菌になると黒っぽくなり見つけづらくなります。

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幼菌時はお茶碗型
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お皿型に開き、老菌になると黒っぽくなります

【菌核】菌核は通常土に埋まっていますが、地表に露出していることもあります。

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地中に埋もれた黒っぽい菌核

【ツバキ菌核病の症状】一見綺麗な花に見えても、よーく観察してみると「花」の違和感に気がつきます。
ツバキやサザンカの花びらに褐色のシミが出来始めます。本種は花や蕾の先端部が褐色に変化し、しおれたような姿になります。花はやがて落下します。

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褐色萎凋(かっしょくいちょう)しはじめたツバキの花(紅花品種)
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感染花にはこのような線状模様が見られました。(ツバキ白花品種)

さまざまなキンカクキン類(菌核菌)

今回、油山でも見られる「ツバキキンカクチャワンタケ」を紹介しましたが、キンカクキン類の中には特定の植物にしか発生しないものもいくつか知られています。

⚫ヤマグワやマグワの実から栄養を摂っている「キツネノワン」「キツネノヤリタケ」
両種ともにクワ菌核病の原因菌としても有名で、クワの果実を白化させることでも知られています。

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「キツネノワン(右)」と「キツネノヤリタケ(左)」は同じ場所に生えていることが多いです
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感染したヤマグワの果実。全体が白く、落ちやすくなります。

⚫ホオノキやモクレンなどのモクレン科の花弁から栄養を摂っている「ホオノキキンカクキン」

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奥に見えるのは、落下したコブシの花弁
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花弁に形成された菌核の観察

油山産コブシの花でちょっと実験。茶色く変色した花弁を採取して、タッパーの中に置いていると2週間ほどして菌核が発生。そのまま放置していると花弁は破れてしまうので、いくつかは押し花標本として保存してみました。

⚫キンポウゲ科イチリンソウ属、ミスミソウ属の根から栄養を摂っている「アネモネタマチャワンタケ」。本種は、デュモンティニア根腐病の原因菌としても知られています。

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ニリンソウ群落でみられたアネモネタマチャワンタケ

【参考書・文献】
山渓カラー名鑑日本のきのこ(山と渓谷社)
植物病原菌類の見分け方 増補改訂版(大誠社)

注)きのこ豆知識は毎月2回更新をします。(第1、第2金曜日に更新を予定していますが、臨時休載、更新の変更などもあるかもしれないので、その際はご了承ください)

◾︎前回の物語「ニセマツカサシメジ」はこちら

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