オオワライタケを食べるという人を全力で止めてみる
今朝X(旧Twitter)を眺めていたらこんなTweetが流れてきた。
オオワライタケを他の人から貰ったので、それは毒キノコと知りつつ食べてみる、という投稿。
オオワライタケは実際食べたことあるという人もいるらしいが、間違いなく毒キノコであり、美味くも無いし、中毒事件も少なく無いのでわざわざ食べるというのは「暴挙」と言わざるを得ない。
しかし、、、
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調理してそれを食レポし、Twitterにて拡散するというのはフォロワー数を増やしたい、という動機にしては「悪質」という言葉で批判されるべきものだと思います。
またこれに対し、6万もの「いいね」がついており、また9000以上リツイートされている現状をみて、
「流石にこれはあかんやろ」
と何人かのキノコクラスターが「引用リツイート」で猛反論していた。
今回は緊急で「オオワライタケを食べるのが何故いけないのか?」を書いてみたい。
それは本当にオオワライタケなの?
オオワライタケはヒメノガステル科チャツムタケ属のキノコである。
この属のキノコはなかなか判別が難しい種類のキノコが沢山あり「本当にそれがオオワライタケなの?」かどうかは最初の乾燥した状態では判別は不可能である。
たぶんこの方は
「頂いた方はきのこ名人なので大丈夫」
などと思っているかもしれないが、世の中で「キノコ名人」と呼ばれる人ほどキノコの事を分かってない人が多いのも事実なのですよね。
「キノコ名人」と呼ばれている人の中でどれだけ図鑑でちゃんと調べている人がいるか?
はなはだ疑わしい。
ナラタケの事を「ボリ」、ハナイグチの事を「ジゴボウ」とか言う人には気を付けた方がいい(笑)。
この様な人に限っていう事は「俺が食べているから大丈夫」という「オレオレ図鑑」を必ず持っていて、全ての中心に「オレ」がいるのでまずはこう聞いてみてはどうだろうか?
「それってオレオレ図鑑じゃないですよね?」
こう聞いて目が泳いだなら貰ったキノコは食べるべきではない。
きのこ食中毒のニュースの多くは「人に貰ったもの」
自分で見つけたものは食べないが何故か人に貰ったものは信用して食べてしまう、、という心理が働くようなのだ。
何故だろうか?
精神分析をしている人に論文を書いてもらいたいぐらいであるが、きのこ食中毒のニュースが年間多く流れてくるが、その中のかなりのパーセンテージが
「人に貰ったキノコを食べて食中毒」
という事になっている。
そこで疑問が出てくる
「じゃあ上げた人は食中毒になっていないのか?」
あげた人は貰った人が食べた様子を見て自分も食べてみる、、、なんてことはないと思うのだが、ニュースの記事になっているのを読む限りではあげた人の事は何も書いていないので恐らく食中毒にはなっていないのだろう。
人に貰ったキノコほど怪しいものはない、と戒めるべし。
そもそもオオワライタケはもうオオワライタケではない?
さてここからが最重要ポイントである。
この論文の読んでもらいたい。
「日本産オオワライタケ類の分類学的再検討」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/msj7abst/66/0/66_52_1/_article/-char/ja/
ここに書かれている事を要約すると
- 日本のオオワライタケは2種類あった
- 今回それらに加え新たに3系統(3種類)が国内に存在する
- つまり日本のオオワライタケは5種類に分かれる
- そして日本には真のGymnopilus junonius(いわゆるオオワライタケ)が分布しない可能性が高い
とのこと。
この論文にずらりと並んでいる記載者の名前は日本を代表する分類学者さんたちである。
「オオワライタケ」が5種類に分かれたというのは一般の方はあまり理解しづらいかもしれないが、これは分かりやすく言うと
「今まで『イヌ』と呼ばれていたものが『ジャッカル』と『コヨーテ』と『オオカミ』に分かれた」
っていう感じですかね。
「分かれた」というのは「まったく別の種になった」ということなのです。
なのでここで強調しておきたいのは
- オオワライタケは死亡する毒は持っていない
- しかし、オオワライタケではないかもしれない
- なので、どんな毒成分が含まれているかもわからない
という事だ。
わかりますかね?これを食べた方はそんな未知種の得体の知れないものを食べているのです。
それは今は症状は出ないかもしれないが、
何時間後、何日か後に症状が出るかもしれない。
もしかして蓄積毒があって将来肝臓に障害が出るかもしれない。
そんなリスクを抱えているのです。
さあ、あなたはそんなキノコを食べますか?