きのこ豆知識 きのこの暮らし
はじめに
「きのこ豆知識」では、主にきのこちゃんの活動拠点でもある福岡市の「油山」で見られるきのこを中心に記事を書いています。しかし、きのこを含めた「菌類」という分野は発生場所や環境により姿かたちが違う場合もありますので、様々な場所のきのこを比較するため、このブログでは「油山」以外で撮影したきのこ写真も載せていますのであらかじめご了承ください。
「きのこ豆知識」は図鑑ではありません。ブログを書いているきのこちゃんは「きのこという生きものについて知るきっかけの手助けをしたい!」をモットーに、きのこ愛を盛り込んで書いているブログです。掲載内容によってはきのこ食毒について書いたり、きのこちゃんが経験した感想など書く場合もありますが、この情報はあくまでも参考程度にご覧いただくようにお願いします。種の同定、食毒などについては自己責任でお願いいたします。また、無断で「きのこ豆知識」に掲載されている写真やイラストを使用することもやめてください。
きのこの暮らし
きのこってどんなところに生えるの?
「きのこ」や「かび」を含む菌類のグループは私たちの生活に関わっている身近な生きものでもあり、その生活場所は菌類によって様々です。今回のブログでは実際にきのこを探すうえでどういう場所を探せば見つかるのかを書いていきたいと思います。
きのこ探しをする時、または自分が見つけたきのこを調べる時に大事なことは「そのきのこがどんな環境に生えていたか」ということを知る必要があります。きのこも生きもの…その辺に好き勝手に生えているわけではありません。私たちにも住みやすい環境があるように、きのこたちにとっても住みやすい環境というものがあります。
クロマツ林・アカマツ林に生えるきのこ
日本を代表する植物の一つ「マツ」の木。クロマツは主に海岸沿いに生えていることが多く海岸防風林として潮風や飛砂などが住環境に直接あたるのを防いでいます。一方アカマツは山の尾根付近または内陸沿いの里山(管理されている山など)に多く生えています。「マツ」の木で思い浮かぶきのこといえば「マツタケ」「ショウロ」などの日頃では見られない高級なきのこをイメージすることも多いと思いますが、その他にも松林特有のきのこは存在しています。
このイラストは季節関係なく、松林に生えるきのこを描いてみました。「マツ」は菌根菌が多く、地面に降り積もった松葉を栄養分にしている腐生菌も多く観察することができます。
※菌根菌・腐生菌・寄生菌については次回紹介予定
スギ・ヒノキの人工林に生えるきのこ
スギやヒノキの林では、直線的な木が並んでいる風景が多いこともあり遠くまで見渡すことができる場所でもあります。しかし、きのこの種類は他の森に比べると少なく、そのほとんどは腐生菌になります。
スギの枝を分解する「スギエダタケ」や倒木に生える「スギヒラタケ」、ヒノキの枯れ枝に生える「ヒノキオチバタケ」、これらのきのこは名前に「スギ」や「ヒノキ」が付いているように、スギやヒノキの林で多く見ることができる腐生性のきのこになります。
シイ・カシが優先とする常緑広葉樹林に生えるきのこ
常緑広葉樹林では、一年を通して緑を茂らせている森で林内は昼間でも薄暗い風景がつづいています。スダジイ、マテバシイ、アラカシ、アカガシなどのブナ科(どんぐりがなる木)の樹木、クスノキ、タブノキなどのクスノキ科やヤブツバキ、ヒサカキなどの樹木が生い茂る森の中では様々なきのこたちを観察することができます。
シイ・カシが優先とする森の中では、菌根菌・腐生菌が多く観察されます。福岡県では6月~7月、9月~10月にきのこがよく出ているようです。
ブナ・ミズナラなどの落葉広葉樹林に生えるきのこ
春は新芽がかわいらしく、夏には山全体が緑色に覆われ、秋になると山の木々は黄色や赤色に色づき、冬は葉を落として樹木全体のシルエットが映し出されます…一年を通して四季を感じられる森です。
落葉広葉樹林では、ナメコ、ブナシメジ、マイタケといった私たちの食卓にもなじみのあるきのこたちが多く観察できます。
里山林に生えるきのこ
里山では木材を利用するために人の手が加わっていることが多く木々のすき間から木漏れ日が差し込んでいてとても明るい風景です。昔は木材を薪や炭として利用していたため、樹木が株立ちになっている森は「薪炭林(しんたんりん)」と呼ばれています。
このような森の中ではテングタケの仲間やイグチの仲間、ベニタケの仲間などが多く観察できます。
針葉樹林と広葉樹林の混生林
モミ・ツガ・アカマツなどの針葉樹とブナ・コナラ・シイなどの広葉樹が一緒に生えている林内では、コウタケやサクラシメジ、チチタケやホンシメジなど、様々な種類のきのこを観察することができます。
カバノキ林に生えるきのこ
本州中部以北で見られるシラカバ林。雑貨品のモチーフとして知られている「ベニテングタケ」というきのこは、シラカバ林でも観察することができ、その姿は本当に美しいものです。
草原・公園・畑などで見られるきのこ
草原や公園、日の当たりも良く植物が多い環境ではきのこが少ないように思いますが、このような場所でも様々なきのこを観察することができます。シバフタケやハラタケなどのきのこたちは、時にフェアリーリング(菌輪)を作ることでも知られています。
砂浜で見られるきのこ
海風を感じられる、白い砂浜…日の当たりも強く、潮風も吹く乾燥必死な場所でもきのこは住んでいるのです。(写真はアバタケシボウズタケというきのこ)
竹林に生えるきのこ
毎年春になるとタケノコが採取できる竹林ですが、このような竹林でもきのこは観察することができます。きのこの女王様といわれているキヌガサタケはこのような場所で観察することができます。
さいごに
きのこは必ずしも森だけにすんでいるわけではありません。海を眺めながらきれいな貝殻を拾い集める砂浜…そんな乾燥必死の場所でも力強く生きているきのこもいれば、人通りも車も行きかうような街の中にだってきのこは住んでいます。「菌類」という生きものはそれぞれ自分の居心地がいい場所にたどり着き、住まいとし、そして旅に出る。そんな生き物なのです。
【参考書・文献】
楽しい自然観察 きのこ博士入門
小学館NEO きのこ
イラスト・写真:岩間杏美