ハナヨメタケを分解する

2022.07.10 大阪

このキノコを「ハナヨメタケ」と教えてもらったのは高橋春樹さんからであった。

何という麗しく、そして初々しい名前なのだろう、、、

この白いいで立ちに白無垢を着た花嫁姿を想像した名づけ親(今井三子博士)の想像力に感心するばかり。

それまでは「白いウラベニガサ」、「ウラベニガサのアルビノ」とか呼んでいたのに・・・(笑)
実は、この写真をTwitterにアップする何日か前、Facebookに「白いウラベニガサ」として投稿している人がいて、「あぁ、そんなものがあるんだぁ、、」「一度見てみたいなぁ、、」なんて漠然と思っていた。

その週の日曜、滋賀行きの予定が流れたので、近場の山に行くことにした。
大きなキノコはあまり多くはないが、小さなキノコの種類は豊富で、小型菌を探すのならココ、と言うのがセオリーになっている。
そんなセオリーに抗うこともなく、この白い花嫁は僕をずっと待ってくれていたのであった。

あぁ、麗しのハナヨメ~💛

白いウラベニガサの発見

山頂まで登って、今日は別のコースを降りていこうと思い、いつもは左へ曲がる道を右へ降りて行った。この道はいつもの道よりも早く駅まで行ける分、かなりの急坂となる。当然膝にも刺激があるので十分に気を付けて降りていたら、大きな木の根元に何か白いキノコを発見した。

2022.07.10 大阪

「こ、これはもしや!!FBでアップされたいた白いウラベニガサではないか!!」

傘の裏を見るまでもなく、このキノコはウラベニガサの仲間である、ということはほぼ推測できた。

  1. 朽木などの材から発生していること
  2. 傘と柄のバランス
  3. 傘の大きさ、形、条線の長さ
  4. 柄の太さ、質感、ねじれ具合、中空であること

などなどウラベニガサの仲間だと考えられる要素が分かってもらえるだろうか。
では順次細かい部分を写真で検証してみる。

2022.07.10 大阪

傘の表面は白色で、少し粉状になっております、、、さすが花嫁(笑)

形は饅頭型で、頂部は少し突出しているのがわかります。

2022.07.10 大阪

さて、これは花嫁をひっくり返したところです(かなり悪い男に聞こえますわ)。
ヒダはやや蜜で色は傘と同色に見えます。ところどころに小ヒダがあります。そしてもっとも特徴的なのが、ヒダが完全に離生していることですね!!

2022.07.10 大阪

そしてこの柄を見てください。このやや太めの白い柄はこれも花嫁を想像させるのではないでしょうか?(笑)
色は白色、太さは5mmほどで長さは5cmほど。
柄の表面がやや繊維質で少しねじれた感がありますね。
これはまさしくウラベニガサの仲間と言っていいでしょう。

肉眼的データ

大分類 小分類 内容
発生 環境 大阪、標高200m、広葉樹の根から発生
4~5cm
  白色
  半球型~饅頭型、中央少し突出
  表面 粘性なし、やや粉状
  条線 周辺に細かい条線あり
ヒダ 白色~ピンク色
  疎密 やや密
  柄に対して 離生する
大きさ 5mm x 5cm、上下同径
  白色
  表面 繊維状、少しねじれている
  密・中空 中空

謎のハナヨメタケとは何なのか?

さて、ここまで「ハナヨメタケ」としれっと書いてきました。

しかし、図鑑を探してもほぼ「ハナヨメタケ」は見つからないでしょう。

何故か?

高橋春樹さんに解説していただく事にしましょう(メッセージを転載させてもらっています (#^.^#))。

ハナヨメタケは今井三子先生が北海道産の標本を基にPluteus pellitus (Pers.) P. Kumm.の学名を当て、「日本菌類誌 (1938)」において日本で最初に報告されました。
しかしその後、詳細なデータを伴う正式な報告はなされておらず、原色日本菌類図鑑にも和名と学名しか掲載されておりません。
今井先生の記載は顕微鏡的データが不完全で、知名度も低いため、白いウラベニガサとか、アルビノとして時たまネット上に写真が出ることがありますが、私が知る範囲では図鑑に写真が掲載された例はまだないようです(地方の図鑑には出ているかもしれませんが)。
欧州産Pluteus pellitusとの異同については分布域が離れているため、日本産類似菌は将来的に地理的種として新種記載されるであろうと推測しております。
ハナヨメタケ類似菌が新分類群として記載される際は、今井先生の北海道産標本に関する詳細なデータが乏しいため、別種の可能性もあるとして新たな和名が提唱されることも考えられます。
また今井先生が新種として記載されたシロベニヒダタケPluteus macrosporus S. Imai についても胞子以外の詳細な顕微鏡的特徴が不明で、標本の状態も悪いため近縁種との正確な比較ができません。

高橋春樹さんから頂いたメッセージ
https://twitter.com/har_takah

確かにネットで検索しても「ハナヨメタケ」として掲載されているのは以下の2つのサイトだけですね。

ドキッときのこ「ハナヨメタケ」
http://yuyukinoko.sakura.ne.jp/dokito/database/D-hanayometake.html

悠々キノコ「ハナヨメタケ」
http://yuyukinoko.sakura.ne.jp/arubamu/06ha/01ha/hanayometake01.html

ではどこかに詳しいデータが無いか?というと1冊だけあるのです。
それは

「日本きのこ図版」(日本きのこ同好会)

通称「青木図版」と呼ばれるものでそこには検鏡図など細かいデータと共に描かれているのです。

この中で青木氏が記述している内容を引用しておきますと

中型のキノコで全体白色、側シスチジアはウラベニガサ(シカタケ)と同様のカギ状突起があり、同定はやさしい。近縁のものにシロベニヒダタケ(今井)があるが、これは胞子が大型(14~18.5 x 8~10μ)とのことである。

分布:北海道(今井)、東京(青木)
検索:ウラベニガサ節(側シスチジアは厚膜でカギ状突起がある)
ハナヨメタケ亜節(禁止にクランプがある)

胞子サイズ:6.5~8 x 5~6.5μm
縁シスチジアサイズ:30~150 x 7~9μm
側シスチジアサイズ:70~110 x 20~30(50) μm

「日本きのこ図版」(日本きのこ同好会)no.358

それでは青木図版のデータと比較して検鏡写真と検鏡データを見ていきましょう。

検鏡してみる

ハナヨメタケの胞子 400倍

胞子の形:やや楕円形
胞子サイズ:6.15 ~ 7.04 x 4.53 ~ 5.94 μm

Max 7.04 5.94
Min 6.15 4.53
Ave 6.6 5.33
StdDev 0.25 0.44

担子器(x400)

縁シスチジア(x400)

側シスチジア(矢印)カギ状突起が確認できます

側シスチジア(矢印)カギ状突起が確認できます

ヒダの断面(x100)

傘表皮の細胞(x100)


まとめ

さて、いかがでしたでしょうか?
「ハナヨメタケ」とっても覚えやすい名前なので、きっと一発で覚えられたことでしょう。

ただし、見つけるのはなかなか困難。
近縁のウラベニガサはどこ探してもいるのですが、それの白バージョンはなかなか、、、それこそ「花嫁」を探すよりも難しいかもしれません。

今年は天候が不順で、キノコの発生もかなり乱れております。
そういう乱れた年だからこそ、こういう日頃見られないキノコが出てくる、、という話もちらほら。
ウラベニガサの仲間は年中発生しているのを良く見ます。

またウラベニガサかぁ、、、なんてため息する人もいたりして。

でもそのウラベニガサ、実は花嫁だったりしませんか?
花嫁は夜汽車に乗って来るだけではありません(笑)貴方の歩く足元で、こっそりあなたが通るのを待っているかもしれませんよ (#^.^#)

Facebook コメント

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。