謎イグチ図鑑 その6

2021.7.10 大阪

3,4年前から気になっているイグチがいた。
出るときには一斉に、しかも大量に発生するイグチである。
恐らくコナラやクヌギ、そしてシイやカシなどブナ科の植物と共生していると思われますし、時期的にもヤマドリタケモドキなどと同じ時期に発生するので、もしかして「あ、ヤマドリタケモドキや~ん❤」と誤認し、間違って食べている人もいるのではないでしょうか?

僕は食べてませんぜ、親分(笑)

・一時期に大量に発生する
・毎年同じような場所で発生する
・ネットでも「これ何ですか?」って感じで良くアップされる

などのことから

「このイグチにはきっと名前が付いてはずだ、、、」

なんて考える方、きっと多いと思います。
僕もそうでした。
しかし、以前牛研さんに聞いたところ、どうもこのキノコは未だに不明種らしいのです!!L(・o・)」 オーマイガ
なので、「良く見るし、ありふれているきのこでも名前がないキノコはあるのだ」ということを覚えておきましょう、試験に出ます w

ではこやつの傘の裏を眺めてみましょう。

2021.7.10 大阪

ふむふむ、、この管孔の感じ、、、
この傘の裏を見てキノコ廃人達はこうつぶやくのです。

「あぁ、、ニガイグチの仲間ね o(`*ω*´)」

若いうちの管孔は白いのですが、成熟してくると薄っすらピンク色になってくる、、、、
ツワモノ達にはその微妙なを、この管孔を見て読み取ることが出来るのです(まさに未来が分かる予報士みたいな w)。

もちろんこの傘を一つまみして口に入れると物凄い苦みが口の中に広がります。
(著者注:この苦みが何とも快感なんですよねぇ、、、、)
ちなみに和名に「ニガイグチ」と付くものでも苦くないニガイグチも何種類かある。
キニガイグチやミドリニガイグチなどはその一例である。

では一体「ニガイグチ(Tylopilus )」と付くものの定義って何だろう、、、と思いますよね?

高橋春樹さんがその辺りをまとめておられますので、許可を得て引用させてもらいます。

ニガイグチ属 (広義) の概念
傘の表面は一般にほぼ平滑~密綿毛状で, 通常著しい粘性はない。
傘の上表皮層は一般に円柱形の菌糸からなる毛状被を形成し, ゼラチン化しない。 
管孔は一般に最初類白色のち肉色を帯び, 成熟時すると通常柄の周囲で陥入する
孔口は一般に小型 (5 mm以下)で, 管孔断面と同色, しばしば傷を受けると変色する。
胞子紋は一般に帯紅色でオリ-ブ色を帯びない。
担子胞子は通常長形 (類紡錘形), 平滑, 薄壁, 一般に長さ15μm以下。
子実層のシスチジアは通常よく発達し, 内容物は無色あるいは有色, 時に偽アミロイドに染まる。
柄の表面は無毛平滑, あるいは毛または皮嚢体が柵状に配列し, しばしば網目模様において偽担子器型細胞と柄担子器 (caulobasidia) が子実層状被を形成する。
肉は一般に白色~類白色, 変色性はないかまたは空気に触れたとき灰色, ピンク色, ライラック色, 褐色, 黒色に変わり, しばしば苦みがある
林内地上生, 稀に腐朽材上生, 外生菌根性。
分布及び既知種: 温帯および熱帯~亜熱帯に広く分布する.

http://www7a.biglobe.ne.jp/~har-takah/page080.html

どうでしょう?
顕微鏡で見なければ分からない記述などもありますが、この文章を読むだけで大まかにニガイグチの仲間とはこんなものなのだ、というのが分かるかと思います。
ツワモノ達は恐らく、特に赤い太字の部分の特徴を相対的に捉えて、パッと見ただけで「あぁ、ニガイグチの仲間やな」と判断しているのだと思われます。

そして肝心の苦みについてはこう書かれています。

「しばしば苦みがある」

つまり、ニガイグチ属だと言っても苦みがないものだってあるのですよ、、ってことです。
「ニガイグチ」というものは39氏によると極めて稀なキノコだそうで、僕も今まで見たこと無いし、もし仮に見たとしてもニガイグチと認識することが出来る自信はない、そんなキノコなのですね。

このニガイグチ属のキノコは何者なのだろう?

2021.7.10 大阪

このキノコ、ニガイグチ属に属しそうだ、、、、というのは高橋さんの解説から想像できます。
しかし、いつもの事ながらこのキノコはどの図鑑を探してもそれらしいものは載っていない(少なくとも僕の持っている図鑑には)。
ただ似ているのはある。
「北陸のきのこ図鑑」のイラストを眺めていると何種類かの似ているキノコが載っている。

  1. フモトニガイグチ(Tylopilus aulataceoumbrinus Hongo)
  2. クリイロニガイグチ(Tylopilus castanoides)
  3. クロアミアシニガイグチ(Tylopilus sp.)
  4. ニセチャニガイグチ(仮)(Tylopilus sp.)
  5. ブドウニガイグチモドキ(Tylopilus sp.)

これらの似たものたちと比較する前にまずは写真から読み取れる特徴を列挙しておこう

大分類 中分類 特徴
大きさ 径5cm~15cm
  赤褐色~茶褐色
  形態 ややビロード(密綿毛)状、粘性はない
管孔 白色~乳白色
  形態 傷つけても変化なし、柄に直生
太さ 成熟時2cm~4cm
  赤褐色
  形態 上部に網目あり
その他 かなり苦い
  中実、青変なし、白色

ざっと観察する限りはこの様な感じである。
これを元に上記ニガイグチ属のものたちとの違いを見ていきたい。

1.フモトニガイグチ(Tylopilus aulataceoumbrinus Hongo)

・柄は傘の表面と同色で細かい縦しわが密に覆っている
・網目をなさずに基部白色
・肉はほぼ白色で傷口は徐々に淡紅褐色になる

などの点で異なります(参考:北陸のきのこ図鑑)

2.クリイロニガイグチ(Tylopilus castanoides)

・肉、不変色または空気に触れると次第に淡い赤褐色を帯びる
・上部は表面と同色の微細な小鱗片に被われ, 下部は密綿毛状
・網目を欠く
・色目的にはかなり良く似ているが、大きさ、太さなどが異なる

参考:八重山諸島のきのこ
http://www7a.biglobe.ne.jp/~har-takah/page053.html

3.クロアミアシニガイグチ(Tylopilus sp.)

・亜高山帯に発生
・傘の色が煤黄褐色、ビロード状ではない
・肉を傷つけると徐々に黒ずむ
・基部に土砂を菌糸で団結したような塊を付着

参考:北陸のきのこ図鑑

4.ニセチャニガイグチ(仮)(Tylopilus sp.)

・傘は黄土色地に暗褐色細鱗片密生し、中央暗褐色
・管孔は淡黄土色~淡褐色
・肉の切断面が徐々に褐色化
・肉の柄部は暗褐色

参考:北陸のきのこ図鑑

5.ブドウニガイグチモドキ(Tylopilus sp.)

・傘の径4cm~6cm、帯紫褐色、ブドウのデラウェア種の果皮色
・柄は網、溝線などは無し
・管孔は類白色=>淡黄色

参考:北陸のきのこ図鑑


いかがでしょうか?
これらの種とはかなり似てはいるものの、どうしても違いがありますね。

さらに詳しく検証してみる

2020.7.11 大阪

こうやって見ると孔口はかなり小さく円形だということがわかる。
また柄に対してほんの少しだけ離生している。

2020.7.11 大阪

柄の上部には細かい網目があり、下部に向かうにしたがって網目が縦長になりやがて無くなってくのがわかる。
柄の地色は白で全体は赤褐色で覆われている。
また、柄の下部に行くに従い太くなっているのが分かる(逆棍棒状)。

2020.7.11 大阪


肉は傘、柄ともに白く、変色はしない。
そして肉を少し齧ると猛烈な苦さがある。

2021.7.10

胞子のサイズは10μm前後、紡錘形で、まさにイグチらしい胞子の形をしている。


と検証を進めて行ってるときにふと牛研さんのサイトを見るとこんなイグチがいた

アカチャアシニガイグチ(仮称)Tylopilus sp.
http://boletus.sakura.ne.jp/labo/kisai/tps002a.html

なになに、、、なんか名前からしたらそれっぽいなぁ、、、
特徴を追っていくとかなり似ているが、柄の部分にほんの少しだけ違いが見える

アカチャアシニガイグチの方は、「隆起した条線と粒点で覆われる」と記載されている。
しかしこちらの謎イグチの上部には明らかに網目がある。ただ、この隆起した条線と、こちらの網目が単に個体差レベル(網目の深さなどからそういう子実体も発生する)ならば、この二つのものは同じではないか?と言えるのだが・・・。

さて、真相はどうなのだろうか、、、??

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