フクロツルタケの源流を巡る
フクロツルタケ(Amanita volvata)
その名前の由来はこの頑丈そうなツボが袋状になっているから、、というわかりやすく覚えやすいネーミング。これは僕たち名前がなかなか出てこない人間にとってはとても優しいキノコであるとも言える(笑)。
また、そのごつごつした力強いスタイルが、キノコフェチたちの愛菌心をくすぐるのだ(きのこは可愛いだけが良いんじゃないの w)。
そのフクロツルタケの地位が揺らいだ。
僕がキノコを始めた頃にちょうど「日本のきのこ」(ヤマケイ増補改訂新版)が発売された。
ちなみに僕は本とKindle版両方持ってるぞ(すごいだろ w)
この改訂された「日本のきのこ」をペラペラめくっていくと、科や属が大きく変わっている上、旧版のものとは名前が変わっているキノコがあった。
その中の代表格がフクロツルタケである。
「日本のきのこ」ではこう表記されていました。
シロウロコツルタケ(フクロツルタケ)
さて、これをどう解釈すればよいのでしょうか?考えられるパターンは3つ
- フクロツルタケからシロウロコツルタケに名前が変わった
- この写真のものはフクロツルタケではなく、シロウロコツルタケだった
- フクロツルタケとシロウロコツルタケは同一のものであった
残念ながら「日本のきのこ」にはこれを解説するようなコメントは載っていなかったので、僕のキノコ観察会の人たちからは
1.フクロツルタケからシロウロコツルタケに名前が変わった
と解釈されたし、僕もそう思った。
ただ、「仮称」が正式に名前が変わってシロウロコツルタケという和名が付けられた、というのだったらそれは納得できる。「ヒスイガサ」と仮称で呼ばれていたキノコが「フカミドリヤマタケ」という正式な和名になる例は当たり前の様にある。
しかしフクロツルタケ自体は仮称ではないので、ヒスイガサの様に「名前が変わる」っていうことはないだろう。
ならば、、、答えは2か3か、、、はて、、、
こういう時には、っと、「北陸のきのこ図鑑」を見るのがいい。
こちらはイラストで載ってはいるものの、掲載数としてはピカイチですからね。
これのKindle版でないかなぁ、、、
さて「北陸のきのこ図鑑」を見てみると、索引の「フクロツルタケ」の名前の字が薄い (◎_◎;)
これは北陸のきのこ図鑑に独立して載っているのではなく、別の種の説明の中にちょこっと名前が出てくるときの印である。
ぎょえっ、と思いそのページをめくってみるとそこにはこういう風な表記があった。
シロウロコツルタケ(旧名 フクロツルタケ)
ん?これは!!!
「旧名」ということはフクロツルタケという名前がシロウロコツルタケという「新称」になった。という解釈になりますが、間違っていませんよね?
ちなみに「北陸のきのこ図鑑」にもその辺りの経緯は記載されておりません、、、がしかし、名前が変わったというのがこの時点(出版された)での事実と捉えていいのでしょう。
で、あれば事の真相を確かめるべく最新のきのこ図鑑である「青森県産きのこ図鑑」を見てみましょう。
この図鑑にはもっとも新しい情報が詰まっています(ただし、字がちっちゃいの ( ;∀;)
さて、ここでもすでに「フクロツルタケ」での独立した説明はありません。
こんな感じで出てきます。
シロウロコツルタケ(フクロツルタケ)
「日本のきのこ」(改訂新版)と同じですね。
ただ、「青森県産キノコ図鑑」では以下の様な重要なコメントがありました。
日本で従来 A. volvataの学名を与えられていた菌(フクロツルタケ)は、近年、形態およびDNA解析結果から北アメリカから知られている同種と異なりシロウロコツルタケ A. cralisquamosaの可能性あるとされている。本菌は傘の鱗片の状態や変色性などの特徴において変異が大きく、これらが同一種か今後の詳細な研究が必要である。
青森県産キノコ図鑑
整理してみると、、、
- フクロツルタケはAmanita volvataという北アメリカの種と同一だとして記載されていた
- シロウロコツルタケはAmanita cralisquamosa という学名が付けられていた
- ところがフクロツルタケはAmanita cralisquamosaと同一である可能性がある
という話になる。
つまりフクロツルタケは完全に消えたわけではないが、もしかしてシロウロコツルタケと同一種かもしれない、ということになる。
これが正しければ、事実上「和名フクロツルタケ」はこの世から存在しなくなるのだ。
そもそもシロウロコツルタケとはどんなきのこか?
キノコ観察会でフクロツルタケの仲間を見つけたとしても未だに「フクロツルタケ」と呼ばれている。誰も「シロウロコツルタケ」とは呼ばない。
長年親しんできた「フクロツルタケ」という愛すべき名前をそうやすやすと捨てる気にならないからだ。
ちなみに「シロウロコツルタケ」というのはもともと存在していて、原色日本新菌類図鑑(保育社)ではフクロツルタケの項でこの様な記載がある。
北海道から記載されたシロウロコツルタケ(Amanita cralisquamosa Imai)およびアクイロウロコツルタケ(Amanita avellaneosquamosa Imai)はともにフクロツルタケの変異型の様に思われる。
原色日本新菌類図鑑(保育社)
ちなみに「北海道から記載された」というのは、今井三子博士によって記載されたものだと思われる。
さて、では詳しい記載をまとめてみます。
参考にしたのは、ちえちゃんに送ってもらった日本菌類誌です。
大分類 | 小分類 | 内容 |
生態 | 発生 | 孤生または散生 |
傘 | 径 | 4-6cm |
形 | 半球形 ~丸山形 | |
表面 | 乾燥 | |
色 | 純白色、帯黄色、 淡肉桂色あるいは汚濃桃色 | |
状態 | 絹糸状繊維ありて中央平坦、周辺白色わずかに細線条あり | |
鱗片 | 桃色あるいは赤褐色の繊維鱗片を被むる | |
肉 | 色 | 帯白あるいは帯桃色 |
肉質 | 味及臭なし | |
ヒダ | 形態 | 離生、密、広幅、後方円く前方広し |
色 | 白色 | |
柄 | 大きさ | 6-10 × 0.8-1.2 cm |
形 | 上方に僅か漸細 | |
色 | 帯白あるいは帯褐色 | |
表面 | 壺より上部は粉末綿毛状鱗片あるいは尨毛(むくげ)に被われ、鱗片は淡紅色あるいは赤桃色 | |
中実 | 充塞あるいは中実 | |
ツボ | 質感 | 膜質、大形、緊緻或は柔軟 |
大きさ | 4.5×2.5 cm に及ぶ | |
形 | 柄の基部を包み、約3/4 は柄より遊離し、先端は裂片となる | |
色 | 帯褐色あるいは帯白色、永存性 | |
胞子 | 形 | 楕円状 |
少し古い記載方法で書かれているので読みにくいかもしれませんが、恐らくこの記載が元になって他の「シロウロコツルタケ」の図鑑の解説がされていると思うのですが、この中で重要なポイントが1つ抜けています。
それは
柄を傷つけると赤変する
という部分。
例えば「青森県産キノコ図鑑」では
肉:白色、傷つくとしだいに帯紅色になる。
とあるし、「日本のきのこ」でもまったく同様の記載がある。
しかし、日本菌類誌にはこの記載がなく、フクロツルタケの方に
傷時、淡紅色となる
という記載があるので、当時はこのポイントをもってフクロツルタケとシロウロコツルタケの区別が行われていたのかもしれませんね。
しかし、最近の図鑑ではシロウロコツルタケの方も「肉を傷つけると赤くなっていく」と記載されているということは、フクロツルタケとシロウロコツルタケにおいては、その点で差はないということになりますね。
じゃあやっぱりフクロツルタケは無くなっていく運命にあるのでしょうか、、、
復活したフクロツルタケ
将棋の世界で例えると、相手に「王手」を連発され、窮地に追い込まれて「あわわわ、、わぁ、、」という状態になっているフクロツルタケ。
「君はもうね、フクロツルタケと名乗っちゃいけないんだよ」
と湯ばーばから言われてもおかしくない状態だよなぁ、、、なんて考えていたらこんな文章をTwitterで発見しました。
水凪唯維さんとは、キノコ界のトップアスリートのあのお方ですから、2018年のこのTweetはとっても重要なものであります。
そこには、なんと「本物のフクロツルタケ」と書いてあります。
本物のフクロツルタケというのは、いわゆるフクロツルタケ(狭義)のことですな。
回りくどいですが正しく言えば、「Amanita volvata」という北アメリカの種に、日本で発見された「Amanita volvataと同種だと思われるきのこ」につけた和名「フクロツルタケ」、のことであります。
そしてこの水凪さんのTweetには肉眼での見分けポイントが2つ書かれています。
- 柄にはほとんど粉状鱗片を帯びない
- 傘の縁に条線(条溝)を生じない
この写真をよく見てください。
傘の周辺に条線がほぼ無いのが良くわかります。
そして、柄の部分には少しササクレの様なものはありますが、シロウロコツルタケの特徴で記されていた「粉末綿毛状鱗片」とはかなり異なっている様に見えます。これは1の「粉状鱗片を帯びない」と言うのでよろしいかと思います。
そこで、初心に立ち返り「日本のきのこ」を見てください。
シロウロコツルタケ(フクロツルタケ)のページ(P.161)をご覧ください。
3枚のシロウロコツルタケの写真がありますね。
その中で1枚目と2,3枚目の違いに注目してみてください。
1枚目・・・傘に大きな鱗片があり、条線は傘の周辺が内巻きになっているので確認はできず、柄の表面に粉状鱗片がおびただしく付着している。
2,3枚目・・・傘の鱗片はまばらに薄っすら存在し、条線はない。また柄の表面にはササクレがある。
説明では両写真共にシロウロコツルタケと書かれているが、水凪さんの解説を元にすると、1枚目はシロウロコツルタケ、2,3枚目はフクロツルタケに見えますね、、、
では、フクロツルタケ、シロウロコツルタケ、そしてアクイロウロコツルタケとはどのような特徴をもっているのでしょうか?
日本の図鑑ではそこまで詳しく書いてないので、海外のサイトで検証してみましょう。
海外のサイトを探ってみる
まずは MushroomExpert.comの「Amanita volvata」(フクロツルタケ)の記載を調べてみます
https://www.mushroomexpert.com/amanita_volvata.html
生態:広葉樹や針葉樹に共生し、通常は単独または散在して生育し、夏から秋にかけて、北米東部に広く分布する。
https://www.mushroomexpert.com/amanita_volvata.html
傘:3.5〜6cm;凸状、平面状または平板状;乾燥しており、中心部は白っぽく、またはやや褐色っぽく、白っぽく柔らかい斑点が不規則に分布し、わずかに褐色に変色することがある;縁には条線がないか、またはわずかに条線がある。
ヒダ:柄から離れているか、または柄にわずかに付着している;密集しているか、または密集している;白色からクリーム色;短い鰓蓋が頻繁にある。
柄:長さ4-9cm、厚さ0.5-1cm、上部に向かってわずかに先細り、白っぽく、取り扱いや経年変化で場所によっては茶色くなる、やや繊維状で、ツバはない、基部は厚くて白い袋状のツボに包まれているが、経年変化で茶色く変色することが多い。
肉:白;露出しても変色しない。
海外サイトを調べて驚かされることがいつもある。
日本の図鑑に書かれている特徴と、海外サイトのそれでは時々肝心な部分が異なっていたりするのだ。
このMushroomExpert.comのAmanita volvataを読んでも意外なことが書かれている。
それは「not staining on exposure」で「空気などに触れても変色しない」という意味。
つまりは日本の図鑑にある「傷つけたら淡紅色に変色する」という説明とはまったく異なる。
しかし、傘の周辺部には条線が無いか、もしくは少しだけある、というのはフクロツルタケ(狭義)の特徴と合致し、柄の小鱗片などの特徴はまったく記載されておりません (@_@;)
ではシロウロコツルタケ(A. clarisquamosa)の方を調べてみましょう。
http://www.amanitaceae.org/?Amanita%20clarisquamosa
生態:子実体は通常中型から大型である。
http://www.amanitaceae.org/?Amanita%20clarisquamosa
傘:幅40〜100 mm、凸状〜披針形、汚白色〜黄褐色〜茶褐色、縁はフリル状で短い条線があり、褐色〜灰褐色のパッチ状の斑点状の斑点に覆われている
ヒダ:離生、密、白色からクリーム色をしているが、乾燥すると灰色がかった、灰色がかった茶色からチョコレート色になる。
柄:60~130×10~20mmで、円柱状から上向きに細くなり、表面は白~汚れた白色で、灰褐色の細粒状からフランネル状(密に綿毛のある)の小鱗片で覆われています。ツボの残骸は柄の基部に嚢を形成し、嚢の外側は白色からダーティホワイト、内側はダーティホワイトである。
ツバは柄の上部にあり早落性。
肉:白色で、変化しないか、ほとんど変化しない。
とくに重要なポイントを太い赤字にしてみました。
これを見る限り水凪さんの書かれていることとほぼ一致しますね。
そしてアクイロウロコツルタケ(Amanita avellaneosquamosa)も翻訳してみます。
子実体は小型から中型。
傘:幅40~80mm、凸状~平凸になります。 白色で、白っぽいものから汚れたような白色をしています。 縁は放射状に条線があり(先端半径の15〜30%の範囲に条線がある)、特に若い時期にはフリル状になる。 傘のツボの残骸は褐色から褐色で、パッチ状からフェルト状で、厚さは2mmにもなる。
ヒダ:本種のヒダは離生、密、若い頃は白色からクリーム色だが、乾燥すると灰褐色、灰褐色、茶褐色、またはチョコレート色になることが多い。 短いヒダは四角く切れているか、ほぼそうです。
柄:長さ70~120mmで、円柱状か、やや上向きに先細りしていて、柄の上部はわずかに膨らんでいます。 柄の幅は、最上部で8mm、基部付近で20mmです。 白色から白っぽく、白色の粉状の鱗片があります。 肉質は白色で不変です。 柄は基部の球根はありません。 ツバはもろく、柄の上部には粉っぽい小鱗片として見える。ツボ:粘板状で、膜状で、やや硬く、自由肢の高さは20〜40cm。 ツボの外側は汚れた白色で、内側は白色です。 肉質はもろく、割れやすい。
http://www.amanitaceae.org/?Amanita%20avellaneosquamosa
肉:白色で、色は変化しない。
臭気・味 臭気は不明瞭。
胞子:ZLYの胞子測定データでは、(8.0~)9.0~11.0(-12.0)×5.5~6.5(-7.0)μm。 胞子は大部分が楕円形から細長い(一部は広楕円形または円筒形)で、アミロイド状である。 担子の基部にはクランプは見られない。
さぁ、あなたはだんだん分からなくなってきたはず、、、どれがフクロツルタケで、どれがシロウロコツルタケで、そしてどれがアクイロウロコツルタケなのか、、、
ここでもう一度、違う部分だけを抜き出して比べてみたい
フクロツルタケ (Amanita volvata) |
シロウロコツルタケ (Amanita clarisquamosa) |
アクイロウロコツルタケ (Amanita avellaneosquamosa) |
|
傘の条線 | 縁には条線がないか、またはわずかに条線がある | 縁は短い条線 | 縁は放射状に条線があり 先端半径の15〜30%範囲 |
傘の縁のフリル | ない | フリル状 | 若い時期にはフリル状 |
傘の鱗片 | 白っぽく柔らかい斑点 | 褐色〜灰褐色のパッチ状の斑点状の斑点 | パッチ状からフェルト状で、厚さは2mm |
柄の形 | 上部に向かってわずかに先細り | 円柱状から上向きに細くなり | 円柱状か、やや上向きに先細り |
柄の上部 | 記述なし | 記述なし | わずかに膨らんでいます |
柄の鱗片 | やや繊維状 | 灰褐色の細粒状からフランネル状(密に綿毛のある)の小鱗片で覆わる | 白色から白っぽく、白色の粉状の鱗片があります |
ツバ | ない | 柄の上部にあり早落性 | もろく、粉状の小鱗片の様に見える |
こうやって比較するとなかなか分かりやすくなってきました。
では、僕の写真と他の方にお借りした何枚かの写真で検証してみましょう。
これはとても分かりやすい子実体で、傘の周辺に条線がほとんど確認できません。
そして柄の方もササクレ状の細かい鱗片があるだけで、粉状鱗片と呼べるものではありません。
なので、これは狭義のフクロツルタケに近いものだと思われます。
まるめいさんのこの写真も傘の周辺には条線がありそうで、なさそうな感じですが、僕の目には見えます(笑)
そして傘の鱗片は少し大きく、綺麗にうろこ状になっていますし、傘の縁には少しフリルがあります。
そして柄の方はまだ未成長ではあるものの、粉状鱗片ではなさそうですがどうでしょう?
こちら感じ的にはシロウロコツルタケ>アクイロウロコツルタケ>フクロツルタケですかね、、、
こちらもまるめいさんの写真をお借りしましたが、傘の縁にフリルの様に外皮膜の名残がぶら下がっているのが特徴的ですが、周辺には条溝らしきものは確認できません。そして同じく柄にはササクレ状の小鱗片はありますが、粉状ではありません。
やはりこれもシロウロコツルタケ>アクイロウロコツルタケ>フクロツルタケ、だと思われます。
このもりうぴさんのものは、全体に褐色を帯びており、傘の鱗片がとても大きく綺麗なうろこ状になっておりますね。
そてし少しフリル状にもなっています(特に小さいものは顕著)。
ただし、これも傘の周辺には条線(条溝)は確認できません。
そして柄の部分にも粉状鱗片は無さそうです。
さてこれは何が一番近いのでしょうか?
順位をつけるとしたら微妙ですがフクロツルタケ>シロウロコツルタケ>アクイロウロコツルタケかなぁ、、と思います。
神戸でのキノコ観察の際に採取されたものです。
同じく傘の周辺にほんのわずかに条線はあります、しかし柄にも粉状鱗片はありませんので、こちらもフクロツルタケに近いものだと思われます。
さて、難しいのが出てきました(笑)
普通、傘の地色は白っぽいのですが、これはまるでテングタケやガンタケの様な茶褐色をしています。
パッと見の印象はフクロツルタケでしたが、見れば見るほど分からなくなる。
そこで、専門家の方に聞いたところ「フクロツルタケ(広義)」でいいのではないか、というお話でした。
先ほどのフクロツルタケ(広義)を上から見たもの。
確かに色は茶褐色で若干違和感はありますが、上記の記載では傘の色の中に「肉桂色」というのもありますから、あながちこれが異端児とかではなさそうです(後日、栃木で同様の色のフクロツルタケを見ました)。
で、この傘の縁を見てください。
ここにも条線らしきものはありませんが、フリルのようなものは若干ですがあるように見えます。
この柄に注目してください。
柄の表皮らしきものが凄い勢いでめくれあがっていますね。これは粉状鱗片と表現するのも無理があるし、ササクレ小鱗片と表現することもできません。
さて、これは何に一番近いのでしょうか?
あえて順位をいうのなら シロウロコツルタケ>フクロツルタケ>アクイロウロコツルタケでしょうか?
実は最初の1枚以外は「これ」となかなか言えないものばかり。
それほど、この3つを区別するのは難しいのかもしれません。
そしてフクロツルタケの類似種は6種類も存在する
まったく知らなかったのですが、フクロツルタケについて調べていたら2019年にこの様な論文が発表されていました。
「フクロツルタケAmanita volvata とその類似テングタケ属菌の分類学的再検討」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/msj7abst/63/0/63_77a/_pdf/-char/ja
フクロツルタケとその属菌について詳しく調べ、再度分類上の検討を加えたものであります。
この中で重要なポイントを挙げてみると
- フクロツルタケとその類似菌は6つの単系統群からなる集団を形成
- そのうちの1つの集団はフクロツルタケそのもの
- それ以外の5集団はフクロツルタケと形態的に類似している
- その5集団は日本の既知種シロウロコツルタケ、アクイロウロコツルタケとも異なる
- フクロツルタケ含む5集団は形態的は特徴により分類が可能
- フクロツルタケ以外の4集団は新種の可能性がある
この論文は2019年の5月に開催された日本菌学会第63回大会で発表されたものであるから、恐らくこれが最新の情報であることは間違いない。
※第64回の日本菌学会(大阪)が開催されなかったことが本当に残念だった、、、(今言うか? w)
さて、この中でもっとも重要なのは2の「1つの集団はフクロツルタケそのもの」という箇所だろう。
これはすなわち
「フクロツルタケは学名に当てられた Amanita volvata として日本に存在している」
ということ。
水凪さんの書いてある通り、フクロツルタケ(狭義)は確かに日本に存在しており、しかもそれにそっくりの類似種は5つもあること。
ではどれが真のフクロツルタケで、どれが真のフクロツルタケではないのか・・・?
また沼が目の前に立ちはだかった心境だ (苦笑)