もう、アメリカとは書きません

2020.08.09 兵庫

キノコ観察会の帰り道、いつも寄る公園に行ってみた。
梅雨も2週間前に終わりを告げ、空からは容赦ない熱気を帯びた光線が地面を照らしていた。
キノコなんて出るはずがないと思っていたのだが、観察会では思いもよらず沢山の種類のキノコを見ることが出きたので、この公園にもある程度でているのではないか?

そんなうっすらした期待があった。

しかし、期待は外れて、乾燥して干からびたキノコの残骸らしきものは目にするものの、元気なキノコは落ち葉が捨てられているところから発生するツブカラカサタケぐらいであった。
そんな乾燥地帯を歩いていると、人間も乾燥してくるので、時々コーラで口を潤しながらキノコの姿を探していると、柿の木の下で何やらキノコらしいものの頭が見えた。

柿の残骸?

そこには確かに中身がすっかり溶け出して皮だけになった柿の残骸があった。
しかし、柿の残骸じゃないものも生えていた。

うほっ、キノコやん!!
それはこの公園でよく見るキノコで、一ヶ月ぐらい前、既に最盛期を迎えていたそのキノコを「まだ出ているんだなぁ、、」と懐かしげに眺めた。そのキノコの宿主(共生している木)はどれなのか?一番近いのは柿の木であるが、まさか柿の木と共生しているとは考え難く、そこから8mほど離れたクヌギの木がここまで根を延ばしているのだろう、、僕はそう推測した。

まずは正面からキノコの写真を撮り、念の為に抜いてみる。
思った通り傘の裏は赤く、図鑑などで表現される「血紅」ほどではないにしても、孔口の部分はかなり赤く、管孔は柄に対して窪んでおり、見事に離生している。そして柄の部分を観察すると、そのキノコの特徴を示す「赤い細粒点」がきれいに並んでいるのが確認できた。
ふむふむ。僕はここまで確認できれば、、と納得し、ちかくにあった枝の切れ端を手にしてこんな文字を書いた。

「アメリカ」

ふふふ、我ながら上手く書けた。
その文字達は予想通り青黒く変色していく。アメリカウラベニイロガワリにふさわしい変色具合である。

僕はその時、このキノコをアメリカウラベニイロガワリと信じて疑わなかったのであった。

Twitterへの投稿

このアメリカウラベニイロガワリを見た3日後、僕は自分のTwitterに以下のような投稿を行った。

実はアメリカウラベニイロガワリとは思っていたのだが、もし何か違っていた場合のコトも考えて

「アメリカウラベニイロガワリ近縁種」

としておいた(笑)。
ただ、その際にはもう一度「原色日本新菌類図鑑」を読み直し、確認してからアップしたのはいうまでもない。

ここに引用させてもらいます

アメリカウラベニイロガワリ(新称、本郷) Boletus subveutipes Peck
傘は径5~13.5cm、まんじゅう形。表面は初め微毛を密生し、ビロードのち無毛平滑。 湿ると多少粘性をおびる。色は変化にとみ、褐色、帯赤褐色、帯黄褐色、または暗褐色で、 強くこすると暗青色に変わる。肉は黄色、空気に触れるとすぐに濃い青色に変わる。管孔は上生~離生し、黄色のち帯緑黄色。孔口は血紅~帯褐赤色(傘縁では淡色)、小形。 管孔および孔口は傷つくと暗青色に変わる。柄は5~14x1~2cm、 上方に向かってやや細まるかほぼ同幅、基部は黄色の菌糸におおわれる。表面は黄色の地に暗赤~帯褐赤色の細点を密布し、ときに頂部に細かい網目模様を表す。傷つくと暗青色に変わり、その部分はのちに黒ずむ。

「原色日本新菌類図鑑」(保育社)

うん、間違いない。特徴はほぼほぼ合ってるではないか、、「近縁種」などつけなくてもよいのでは?
なんて思っていた。
ところがである (@_@;)
投稿してしばらくすると天からの声が聞こえてきた(笑)
それがこのコメントである。

「柄の点状物」と言うのは僕が書いた細粒点のことである。
その点々がバラけて散在する感じが

ウラベニヤマイグチ

っぽいとのこと。

え?まさか、、、、、

と思ったので、もう一度細粒点を拡大してよーーーーく見てみた。

2020.08.09 兵庫

これ、どうでしょう?
細粒点と思いこんでいたのですが、高橋春樹さんの言う「点状物」という方が近いということに気づきました。
思い込みというのは、とっても怖いもので、最初に「これだ!」と思ってしまったらもう思考のベクトルが一定の向きを指したままずっと方向を転換すること無く突っ走っていってしまうものだ。

そしてこういう間違いを起こす。

ただ僕もウラベニヤマイグチの存在を知らなかったわけではない。
そしてウラベニヤマイグチは高橋春樹さんによって新種記載されたことも知っていた。
しかし、高橋さんのページに載っているものと比べ、色味が違っていたので、最初から候補として外していたのだ。

では、高橋さんにサイトからの文章の引用、写真の拝借の許可も頂いてますので、改めてウラベニヤマイグチとはどんなものか?を紹介したいと思う。

ウラベニヤマイグチとは?

まずは高橋さんのサイトから引用させてもらいます。

肉眼的特徴: 
傘は径 40-70 mm, 最初半球形, のち饅頭形, 表面は乾性, 密綿毛状~ほぼ平滑, 赤褐色~暗赤褐色. 
肉は厚さ 10 mm 以下 (傘中央部), 堅く, 類白色~淡黄色, 空気に触れると徐々に青変し, 特別な味や臭いはない.
柄は 30-60×10-20 mm, ほぼ上下同大または下方に向かってやや太くなり, 中心生, 中実, 表面は乾性, 類白色の地に暗紫褐色を帯びた粒状の細鱗片に密に被われ, 網目を欠き, 根元の菌糸体は類白色. 
管孔は深さ 12 mm以下, 柄の周囲において深く嵌入し (離生), 黄色, 空気に触れると徐々に青変する; 孔口は小型 (2-3 per mm), 最初管孔と同色であるがまもなく赤色~橙赤色になる. 

http://www7a.biglobe.ne.jp/~har-takah/Urabeniyamaiguchi.html

コメント:   
傘は赤褐色~暗赤褐色、柄は全体に暗紫褐色を帯びた粒状細鱗片に密に被われ, 孔口は赤色~橙赤色, 傘の表皮は柵状毛状被からなる. 石垣島バンナ岳のスダジイ,オキナワウラジロガシ林内および兵庫県のアカマツが混在した広葉樹林内地上に発生.
孔口が管孔の色と異なり, 赤色を帯びる点は Leccinum 属として異質であるが, その他の形態学的基本性質 (暗色の粒状細鱗片に被われた柄, および紡錘状円柱形 [長さ 15 μm以上]で褐色の担子胞子) はイグチ属ウラベニイロガワリ節 (Boletus Sect. Luridi ) よりもLeccinum 属に近縁であることを示唆している.
また最近オーストラリア北部の熱帯地域から本種に近縁と思われる管孔と色の異なる孔口を有する Leccinum 所属菌が報告されており, 将来的に新亜属の設立を含めた Leccinum 属の分類概念の修正も視野に入れて, 本種をLeccinum 属の仲間として扱うことにした.
熱帯オーストラリア産 Leccinum australiense Bougher & Thiers (Bougher and Thiers 1991)は, 管孔と色の異なる孔口, 傘と柄の類型と色合い, 柵状毛状被を形成する傘の上表皮層の特徴において本種と共通性が認められるが, 肉は空気に触れると灰色に変色し, 管孔は変色せず, 孔口は暗赤褐色を帯び, ユーカリ属の樹下に発生する.
イグチ属ウラベニイロガワリ節 (Boletus Sect. Luridi ) に置かれている北米産 Boletus morrisii Peck (Bessette et al. 2000; Singer 1947) は柄の表皮に赤色~帯褐赤色の明瞭な粒状細鱗片を有するが, 肉に赤変性があり, 柄の鱗片は暗色にならず, 担子胞子は黄色を帯びる.

【入佐注記】
ここではLeccinum (ヤマイグチ属)となっていますが、現在はLeccinellum(クロヤマイグチ属)であります。

http://www7a.biglobe.ne.jp/~har-takah/Urabeniyamaiguchi.html

上でも書いたようにこの高橋さんの写真と僕の写真では色味が違っているので、同じもの、という風にはまったく思わなかった。
ただ、いくつか他のサイトを見ていくと似たようなものがあったので、いくつかその画像と比較したいと思う。

まずは「今日もきのこ 観察日記」のこの画像
https://blog.goo.ne.jp/cortinarius55814/e/553668f948743563804e0a1867a3d830

この画像を見る限りかなり高橋さんの画像に近いことがわかる。

  • 傘はビロード状
  • 茶褐色
  • 管孔は黄色
  • 孔口は赤
  • こすると強く青変する
  • 柄の地色は白
  • 濃い紫色の細粒点が上から下まで付着

次に「油山周辺の山野草木・野鳥・昆虫」に載ってるのを見てみましょう
http://oota824.blog18.fc2.com/blog-entry-2061.html

こちらは、僕の画像と似ています。

  • 傘はビロード状
  • 茶褐色
  • 管孔は黄色
  • 孔口は赤
  • こすると強く青変する
  • 柄の地色は淡黄色
  • 赤い細粒点が薄っすらと付着

吉敷川だよりさんの「きのこ図鑑」です。
http://yoshiki-yk.sakura.ne.jp/urabeniyamaiguchi1.htm

こちらは高橋さんのものに似いてます。

  • 傘はビロード状
  • 茶褐色
  • 管孔は黄色?(Other photo)
  • 孔口は赤
  • こすると強く青変する?(これは未確認)
  • 柄の地色は白
  • 濃い紫色の細粒点が上から下まで付着
  • 切断しても肉の青変は少ない(こちらで確認

そして最後に「きのこのしるべ」のサイトでの検証PDFです
http://koubekinoko.chicappa.jp/kinokosaisyuroku/kisai/0001_0100/0015.pdf

  • 傘はビロード状
  • 茶褐色
  • 管孔は黄色
  • 孔口は赤
  • こすると強く青変する?(これは未確認)
  • 柄の地色は白
  • 濃い紫色の細粒点が上から下まで付着
  • 切断しても肉の青変は少ない(傘が少し青変、柄はほとんど無し)

実は最後の「きのこしるべ」でのカット写真を見て「あれ?」と思った。
僕がカットした写真と見比べて欲しい。

2020.08.09 兵庫

切断面全体が青変しています。
特に下部がめちゃくちゃ青変しておりますね。
しかし「きのこしるべ」の方は傘の一部が少し変色しているのみで肉の部分はほとんど変色していません。

果たしてこの青変の違いは個体差なのでしょうか、それとも種の違いなのでしょうか?

以前牛研さんに「同じ種類で青変の仕方が変わることってありますか?」という事を聞いたことがある。
その時には「同じ種類なら青変の仕方もほぼ同じです」という答えを頂いた。
とすると、「きのこしるべ」でカットされたイグチと、僕のこのイグチは違う種類ということになる。

はて、、どうなんだろう????

大阪のアメリカウラベニイロガワリを見てみる

話を戻そう。
最初に僕がTwitterに投稿したツイートにこんなことを書いた。

「ほぼ大阪のものと同じ様な感じですね」

という記述。その「大阪のもの」というのはこの投稿のアメリカウラベニイロガワリ近縁種(一応近縁種とつけておく w)なのでした。
この大阪のものと兵庫のものは「同じ」だと思っていたわけです。

この「ほぼ大阪と同じ」ツイートでもうお一人反応してくれた方がおられました。
そのコメントがこれ。

高橋さんと牛研さんのタブルツッコミだ!!(ヤバい 笑)
しかしこの段階で青変が強いのが気になる、という風におっしゃっていますが、やはり

「ウラベニヤマイグチに近いやつ」

とのこと、、ふむふむ。
そこで僕はこの「大阪のアメリカウラベニイロガワリ」をアップしてこんな感じで聞いてみました。

さて、この時点での僕の愚かな判定方法を整理しておく。

  • 傘の雰囲気
  • 色味
  • 管孔の色
  • 孔口の色
  • 離生した管孔
  • 柄の赤い細粒点
  • 肉の青変性

これらのポイントを持って「大阪とほぼ同じ」と認識していました。
ところがです。天に住んでおられるお二人から、ほぼ同時にこんなツッコミが来たのです (*^^*)

鱗片が兵庫のものとは異なる、、、と。
僕が「同じ」と認識していたものが「違う」ということなんですね、、、さすが見る人が見ると違うのですね、、、

そして牛研さんからのツッコミは

柄の地の色が違うと。
そうそう、これはまったく無視していた箇所でした。
原色日本新菌類図鑑にもこう書いてありました。

「柄の表面は黄色の地に暗赤~帯褐赤色の細点を密布

あと牛研さんのコメントに「基部に淡黄色の円錐形で毛羽立ったBasal tomentumが認められますが」とあります。
この「Basal tomentum」というのは「柄の基部の菌糸体」のことだそうです。
※「牛肝菌研究所」メダイヨンクランプ
http://boletus.sakura.ne.jp/oboe/332.html


で、大阪のものと兵庫のものの違いを整理すると

  1. 柄の地の色が違う(黄色と白)
  2. 細粒点の形態が違う(ヤマイグチ型とそうでないもの)
  3. 柄の基部の菌糸体が違う(淡黄色の円錐形と綿毛状の類白色)

そこでもう一度柄の部分の写真を並べてみましょう。

全然ちゃうやん?(笑)

もうね、ビックリするぐらいちゃいますな、、比べてみるとよーくわかりました!!

では兵庫のものはウラベニヤマイグチなのか?

再度おさらいで兵庫のウラベニヤマイグチ疑いのキノコの写真を貼っておきます。

さて、、、このキノコはウラベニヤマイグチなのでしょうか?

確かにこの点状物はヤマイグチのそれを彷彿とさせます。
しかし、僕自身何点かウラベニヤマイグチとの比較においてどうしても違和感が拭えない点があるのです。
ではそのポイントを上げておきます。

  1. 傘がビロード状ではない
  2. 柄の点状物の量が少ない
  3. 柄の最上部が黄色味を帯びている
  4. 肉の変色性が全体的にある

これらの疑問は高橋さんと牛研さんにもぶつけてお返事を頂いているので、それらも交えて検討してみたいと思います。

1.傘がビロード状ではない

というのは成長過程によって異なることがしばしばあり(高橋さん)、また、雨に打たれたりして平滑気味になることはよくあることで(牛研さん)、これは種を区別するほどのものではないそうな。

2.柄の点状物の量が少ない

これも成長過程によって異なることがあるので(高橋さん)、それほどシビアに考えるほどではないようです。

3.柄の最上部が黄色味を帯びている

これについては環境要因による一時変異なのか、それとも遺伝的に安定した形質なのか、複数の異なるサンプルの比較並びに分子系統解析による支持データの比較を行ってみないと何とも言えません(高橋さん)、とのこと。

4.肉の変色性が全体的にある

については、高橋さんは3と同じですが、牛研さんは「青変が強すぎるのが気になる」とのことでした。

僕としてはあと、全体的な色合いの違いなども気になりますが、やはり4の青変性の違いはどうしても気になってしまいますが、なのでウラベニヤマイグチに限りなく近い、ということは言いにくいところがあるのです。
では、このキノコについて高橋さんのコメントを引用させていただきます。

入佐さんのサンプルは散在した粗いフケ状の鱗片を柄表皮に形成する点においてウラベニヤマイグチと共通しています。しかし柄の頂部が黄色を帯びており、傘も沖縄産ウラベニヤマイグチと比べて色が薄く、部分的に黄色がかった感じに見えます。また肉の青変性が強く、傘と柄の肉全体に渡って変色しています。これらの特徴は通常ウラベニヤマイグチには見られない性質で、少なくとも典型的なウラベニヤマイグチではないと思います。

典型的なウラベニヤマイグチではない、というのは間違いないと思います。
ただし、ウラベニヤマイグチではない、という確証もありません、、、がしかし、属としては「クロヤマイグチ属 (Leccinellum)」に属するキノコではないか、、と考えられます。

ここではまた、高橋さんから教えていただいた「クロヤマイグチ属」の特徴を引用させてもらいます。

ウラベニヤマイグチが所属するクロヤマイグチ属 (Leccinellum)の特徴は以下の通りです。

ア) 柄はスレンダー逆棍棒形もしくはほぼ上下同大で、通常根元が著しく膨大することはなく表面は暗色を帯びた粗いフケ状鱗片に被われる(ヌメリイグチ属の腺状の細粒点とは異なる)。
柄の点状物しばしばオオウラベニイロガワリ近縁群の仲間と混同されますが、ヤマイグチ属の粗い鱗片状と異なりオオウラベニイロガワリはより繊細で密集した粉状に近い形状を成します

イ) 胞子は長い紡錘状円柱形 (長さ 15 μm以上) で褐色~帯紫褐色を呈し、一般に広義のイグチ属の仲間のようにオリーブ褐色を帯びない。

ウ) 子実層托は柄の周囲において深く嵌入し、管孔と肉の厚さはほぼ同等に近く管孔の断面は黄色を呈する。イグチ類の管孔の嵌入状態と傘肉に対する相対的な幅は相関関係にあり、嵌入が浅くなる(垂生に近づく)に従いニセアシベニイグチのように管孔の幅は短くなり、嵌入状態を見れば管孔の厚さがある程度推測できます。

エ) 傘表皮組織は柵状毛状被を形成する。柵状被は毛状被のように錯綜せず、子実層のように規則的に配列した構造です。

オ) 低地の広葉樹林内に発生する。石垣島に分布する基準種は亜熱帯性常緑広葉樹林内に発生しますが、本州に分布するウラベニヤマイグチ近縁群は恐らくシラカシ, アカガシなどの常緑樹と関係していると思われます。

『注意1』
高橋さんより追記
「管孔の嵌入状態と傘肉に対する相対的な幅は相関関係にある」というのも必ずしも当てはまるとは限らないので、一般にそういう傾向がある、という程度でご理解ください

『注意2』
高橋さんより追記
また、ウラベニヤマイグチの所属についても、ウラグロニガイグチを基準種とするSutorius属に近縁という説もあり、まだ疑問点が残されています。

種を判断するにこの「属」の見極めはもっとも大切で、今回のものはBoletus(ヤマドリタケ属)ではなく、Leccinellum(クロヤマイグチ属)ではないか?という観点で高橋さんもこのキノコに対してウラベニヤマイグチに近い、、、とおっしゃったのだと思われます。

そこでクロヤマイグチ属の特徴を見ていくと確かに合致しているところが多いが(緑の下線で引かれているところ)、異なっている特徴(赤の下線で引いているところ)もあるのは確か。
特に僕が注目したのは

「管孔と肉の厚さはほぼ同等に近く」という特徴。
「きのこしるべ」の資料ではまさにこの特徴がそのまま出ているのであるのが、僕のほうではやはり傘の肉と管孔の厚みは異なるとしか言えないのです。
これを重要視するのか、しないのか、、、この辺りはもうワタクシの様な末端のキノコ廃人の出番では無いと思われます(笑)。

ってことで、このキノコは

ウラベニヤマイグチでは無いが、クロヤマイグチ属の仲間「Leccinellum sp.」

ってことで、締めくくりたいと思います。

そして最後にこの記事のタイトルでもある「もう、アメリカとは書きません」を反省の言葉として再度述べさせてもらいます。が、しかし、

じゃあこれから我々は傘の裏には何を書けばよいのか?

という最大の問題が出てきます。
観察会などでの解説している場面を想像してみてください。
目の前には「どう見ても青変する管孔の赤いイグチ」があります。
多くのギャラリーが見つめる中、あなたの一挙手一投足に注目が注がれるのです。
右手には細長く尖った枝を持ち、左手はそのイグチを裏返しで押さえている。

その時にあなたはどんな文字を書くのか?

そこにあなたの技量が問われるのです。
そしてもう今まで嬉しげに書いてきた「アメリカ」は書けなくなりました。
さぁ、一体あなたはなんて書くのですか?
僕ならこう書こうと思います。

「ウラベニ」

どう?結構イケてるでしょ?(笑)

追記 ‘20.08.24(検鏡結果)

さて8月9日に見たウラベニヤマイグチ似のイグチは、てっきりアメリカウラベニイロガワリと思っていたものですから、カットした後、元にあったところに放置しておりました(笑)。
しかし今回

「あれはアメリカウラベニイロガワリでは無いぞなもし」

ということになりまして、5日後、慌ててその放置されていたものを回収してもらったのでありました (*^^*)

確保されたウラベニヤマイグチ疑いのイグチ 2020.08.14


ただし5日間雨が降ってなかったのは幸いなのかどうなのか、、しかも灼熱の暑さが良かったのかどうなのか、、、なかなか担子器を見つけることが出来なかったのですが、何時間もかかった苦労の末、やっと1個だけ見つけることが出来ました。

では、検鏡した写真をアップすることにします。
ウラベニヤマイグチとの比較は、「きのこしるべ」さんのサイトのデータと比較してみます。
http://koubekinoko.chicappa.jp/kinokosaisyuroku/kisai/0001_0100/0015.pdf

胞子

胞子のサイズ: 約12μm x 5μm
胞子の形:長楕円形

一方「きのこしるべ」の方は

胞子のサイズ: 約13.5μm x 17.0μm
胞子の形:長紡錘形~類紡錘形

ちなみに他の胞子サイズも計測してみたが、約10~12μm x 4~5μm でした。
ですので、少なくとも胞子を見る限り形、サイズ、どちらを取ってもウラベニヤマイグチではなさそうです。

胞子:メルツアーで染めてみました

胞子のサイズ: 約10μm x 4μm
胞子の形:長楕円形

なのと、きのこしるべでは「偽アミロイド」という記述があります。
これはメルツアー試薬で染めると、赤くなる現象ということですが、これは赤くなっていないので「胞子は偽アミロイドではない」ということになります。
「偽アミロイド」
http://boletus.sakura.ne.jp/oboe/187.html

担子器

やっと、やっと、やっとのことで見つけた担子器です (*^^*)

大きさ:約30μm(どこからどこまでを測って良いのかわからないのですが)

「きのこしるべ」では

大きさ:25-27×7.5-10μm、棍棒形,2~4胞子性

管孔部分から採取した細胞

管孔部分から採取した細胞。

傘の表面から採取した細胞

「きのこしるべ」ではウラベニヤマイグチの傘の表面細胞は「柵状毛状被」となっているそうなのですが、これは違っておりますね。

ですので、やはりこのキノコはウラベニヤマイグチではない、と思われます。

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