発見!!光るガーネットオチバタケ

2020.06.10 岩間杏美 発見&撮影(福岡)

6月11日何気なくTwitterを眺めていたらこんなツイートが流れてきた。

きのこびと副代表の岩間杏美ちゃんが、この6月10日に福岡でガーネットオチバタケ近縁種を発見した。ガーネットオチバタケとは2016年に高橋春樹さんらによって新種記載された、新種ほやほやのキノコである。
実はこのガーネットオチバタケ発生件数はそんなに多いものではありません。また発生する地域も限られておりまして、現在ネットで検索したところ関東では富士山周辺、東京都、そしてぽーんと離れて山形県などで見つかっており、九州では佐賀県、鹿児島県、大分県、宮崎県、そして八重山諸島含む沖縄県で見つかっております。つまりいま発見されているのは関東の一部地域と山形、そして九州の一部地域のみ。

そして、そんな九州地域の欠けたピースを埋めるべく福岡でこのガーネットオチバタケが発見されたのでした。

2020.06.10 岩間杏美 発見&撮影(福岡)

杏美ちゃんにインタビューしたところ、標高2~300mのちょっとした山を歩いていた時にふと見ると道の脇にこの深紅のきのこ達が群生していたとのこと。見てすぐに「わっ、ガーネットオチバタケやけん!!」と思ったそうである。そしてスケッチをするためにその一部を採取し家に持って帰ったそうな。

持って帰ってはみたものの、少しあるところに違和感を感じたらしい。
そのあるところ、というのは「葉っぱ」である。
何の葉っぱかはわかりませんが、広葉樹の少し大きめの葉っぱであることには間違いないのですが、「そんな葉っぱ」は以前も見たことがあるなぁ、、、と思ったそうです。

2020.06.10 岩間杏美 発見&撮影(福岡)

「そんな葉っぱ」というのは、、、ずばり!

もしかしてこれ光る葉っぱかも?

こういう時の岩間杏美の嗅覚ほど鋭いものはない。
何回かキノコ散策を共にしたので、僕にはそれが良く分かっているし、一回でも一緒に行った人なら間違いなく彼女の凄さを実感するだろう。

だって、10m移動するのに1時間かかることだってザラにあるからだ(笑)

何かを「見つける」能力というのも桁外れに優れているが、あるヒントから「類推する」力もただものではない。
以前、光る葉っぱを見つけたときなども「もしかしてこれは!」と思って持って帰り、暗いところでじっとそれを観察したら、案の定光ったのだそうな。
そして今回も同じく「これもしかして光る葉っぱじゃないかな?」と睨んで、暗いところで目を凝らしているとぼんやり光った、ということでした。

2020.06.10 岩間杏美 発見&撮影(福岡)

そしてカメラでの撮影。
Canon Powershot G7 は光るキノコを撮るために大枚をはたいて買ったコンデジだ。
露出は約4分。 ISO感度3200。これは以前ヒメヒカリタケ近縁種を撮影した時の設定と同じ。
それでじっくりと撮った後の写真を見ると

「え?ガーネットオチバタケも光っとる!(@_@;)」

まさか真っ赤なきのこであるガーネットオチバタケが光る、などとは思ってもなく、想像だにしていなかったのであるが、カメラにはしっかりとその傘も柄も光っているのが映し出されている。
そしてカメラから目を放し、真っ暗なところに行って肉眼で確認しても、ほんのかすかにボーッと光っているのが確認出来た。

2020.06.10 岩間杏美 発見&撮影(福岡)

もちろん「ガーネットオチバタケが光る」というのは、新種記載を行った高橋春樹さんでさえ耳を疑ったほどでした。
それぐらいこの発見は意外なことで、福岡でガーネットオチバタケが見つかったのも大発見ですが、そのガーネットオチバタケが光るのを発見したのはその何百倍もの大発見ではないでしょうか?

我々の間でも白くって小さいきのこを見たら「これ光るんじゃね?」と冗談とも、本気とも取れるような戯言を言ってみたりするのですが、それは「光るキノコ」には白くて小さいものが多いからなのです。しかし「赤くて光る」というのは今まで例がないので、そう言う点でもこの発見は「光るキノコの発見」を大きく前進させる一歩ではないかと思うのである。

ガーネットオチバタケとは

さて、最後にせっかくなのでガーネットオチバタケについて説明してみます。
まずは高橋春樹さんのこのTwitter画像を見てください。

このホロタイプ標本は石垣島で採取されたもので、傘と柄に粘性がないものだそうです。
(※ちなみに奄美大島産サンプルは傘が乾性で柄に粘性があるタイプのようです。)

属名を意味する「血に染まった」色は、人の心を掴んで離さない色だと思いませんか?

現段階でこのガーネットオチバタケ及びその近縁種は九州と関東、そして山形でしか見つかっておりません。
しかもその3つの地域で見つかったガーネットオチバタケには明らかな形態的な違いがあります。
それは傘の表面に粘性があるか、ないか。

では富士山山麓で見つかったガーネットオチバタケを見てください。
これはFacebook友達の井出香野さんがタイムラインにアップした際に僕の目が釘付けになったものである。

2019.8.23 富士山山麓 撮影:井出香野さん

もしかして雨上がりの後かもしれませんが、それでも傘に粘性があるのがわかります。
上の高橋さんの写真と見比べてもそれは明らかに違いますし、杏美ちゃんのものとも異なります。

ただし現在のところ、九州産のものと関東産のものとの異同については不明だそうです。

ではガーネットオチバタケとはどういうものか?高橋さんに解説を頂きましたので引用させてもらいます。

ガーネットオチバタケ属 (Cruentomycena)の特徴:
子実体は小形のクヌギタケ型~シロホウライタケ型で, 深紅色~血赤色を帯びる。
傘は通常中央部が臍状に凹み, 湿時粘性または乾性。
ヒダは疎, 垂生, 縁取りがある。
柄は湿時粘性または乾性。
傘表皮組織を構成する菌糸は匍匐性, ゼラチン質または非ゼラチン質, 平滑。
傘実質は偽アミロイド, 偽柔組織状。
胞子はアミロイド, 長楕円形~種子形。
側シスチジアはない。
クランプを有する。
葉上性。
——-
Petersen博士ら(2008)によるITS並びにnrLSUの領域を用いた分子系統解析の結果では, ガーネットオチバタケ属はクヌギタケ属(Mycena)よりもザラメタケ属(Resinomycena) およびヒラタケ型で管孔を持つスズメタケなどの発光菌を含むワサビタケ属分岐群 (panelloid clade) に系統が近いとされています。
ガーネットオチバタケ属の仲間は、当初オーストラレーシアとロシアに隔離分布する分類群と言われていましたが、最近になって東南アジア(タイ)および日本各地(石垣島、奄美大島、本州、九州)に広く分布することが次第に明らかになってきました。

文献:Petersen RH, Hughes KW, Lickey EB, Kovalenko AE, Morozova OV, Psurtseva NV. 2008. A new genus, Cruentomycena, with Mycena viscidocruenta as type species. Mycotaxon 105: 119–136. https://researchgate.net/publication/266394266_A_new_genus_Cruentomycena_with_Mycena_viscidocruenta_as_type_species…

さて、ご覧の通りこの記述の中には「発光性がある」という記述はありません。
つまりどれだけガーネットオチバタケが光った、という事実が大発見だったのか、ということがおわかり頂けましたでしょうか?

最後に高橋さんのメッセージに次の様な一文が書かれておりました。

今回の杏美ちゃんの発見は分類学的にも非常に重要な意味を持つため、実は南西日本菌類誌の追加知見として研究者専用のSNS「ResearchGate」に投稿を検討していたところです。

恐らくこの発見は「発光するキノコ」についての進路を開く大きな分岐点になるのではないか、と考えております。もしかして身近にある何気ないキノコも暗い中で目を凝らしていると、ぼーっと光っているのが確認できるかも、、、と、そんな夢を抱かせてくれる発見なのです。

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