アミガサタケ栽培最前線

「アミガサタケを栽培できる」という話を聞いたのはもう何年前だろうか・・・

その頃には怪しい話が飛び交っていて、、チエちゃんがこんな記事を書いたのは2017年の7月の事ですな。
題して

「アミガサタケ栽培キットの怪」
https://kinokobito.com/archives/1362

はい、名前からして怪しい。
もちろん、この栽培キットでは成功しなかったようです。

また、もうお一方(名前は言えません w)が同じ様に海外(たぶんアメリカ)からの栽培キットを購入し、同じ様に栽培に挑戦したという話を聞きましたが、その方も成功しなかったようです。

その方がこんなYoutubeの動画を教えてくれました。

この「Grow Morels!」というタイトルで既にわかってもらえると思いますが、アミガサタケを栽培し、そして販売しているサイトでありますな。
興味のある方は一度通しで観てみてください。

この中の重要な部分をNatに書き出してもらって翻訳&箇条書きにして要点をまとめてもらいました(一部入佐手直し)。

All right, so we’ve added some flour to the morels, and now some wood chips. Now we’re going to blend it up and make a green shake! No, seriously, we’re going to lightly blend up a few of these fresh morels, then pour the slurry and billions of spores all over the yard, especially in shaded areas that will retain moisture longer. But first, we’re going to brew this slurry in a five-gallon bucket with some filtered water and two tablespoons of unsulfured molasses and a tablespoon of salt. And let this brew with an air stone for 24 to 48 hours. The molasses serves as early food for the mycelium to begin to grow. Sometimes we add a little seaweed fertilizer. The salt serves to slow down bacteria growth. The air stone keeps the brew from going anerobic. Sometimes we add some rye grains, because we want that mycelium to find a happy home within the moist grain in case of an early dry spell before it has the chance the enter the soil. After this brew is ready, billions of spores have begun to grow. Then we dilute the batch over 20 more buckets, that we will add additional ingredients to before adding it to the soil. “Even if we diluted this over 20 buckets, there’d still be a billion spores in every bucket. We used to spray this onto areas, and we had much better results by diluting it over buckets, because that extra water will take it down into the cracks and crevices, down to the soil where it won’t dry out.” I’m going to add a few extra ingredients this year. We’re going to add a tablespoon of wood ash that hasn’t been rained on. And that’s the key; if it’s been rained on, most of the ingredients that you need have been leeched out. So you want to get it fresh out of the stove; you don’t want to go to your ash pile. This will simulate a forest fire. You know morels spring up after forest fires; it’s one of the best places to find them. This wood ash will bring the pH up and bring the acidity down and make those morels come out of the ground. Then just add some wood mulch. Here we’ve got billions of morel spores in this bucket, and we’ve got 20 other buckets just like it. We’re just soaking these wood chips that we’ve getting ready to spread over next to our perennials.

  1. ミキサーを使って新鮮なアミガサタケ、小麦粉、おがくず、水を混ぜる
  2. 20Lのバケツに入れて水でいっぱいにする
  3. 硫黄が入っていない糖蜜を大さじ2杯入れる(これは、成長し始めている菌糸の食料になります)
  4. 塩を大さじ1杯入れる(これは、バクテリアの成長を遅らせるため)
  5. ライ麦を少し入れる(これは、菌糸が土、マルチングに侵入していく前の食料になります)
  6. 海藻肥料を少し入れる
  7. エアストーン(石灰岩からできている石)もバケツに入れる(これは、嫌気性になることを防ぐため)
  8. 24、48時間ほっておく
  9. 綺麗な水を使って20個のバケツに入るように希釈する
  10. 各バケツに、薪ストーブからの灰を大さじ1杯入れる(これは、pHを上げてアミガサタケが大好きな山火事後の土と同じぐらいになるために)
  11. マルチングの上に撒いてアミガサタケが出るのを待つ

こんな感じである。

この要領でアミガサタケを栽培してみたい人!いるかなー??(笑)

ここに書いてあることは、実に真っ当なようなことに感じますけど、どうなのでしょう?
重要なポイントは2点

アミガサタケの餌となるものを入れる
アミガサタケの住みやすい環境を整える

なのですが、この配合とか割合、そして撒く時期などがとっても重要なんでしょうね。

中国のアミガサタケ栽培

またアメリカ以外では、特に中国では栽培が成功した、という話を何回か聞いたことがあって、ほんまかいな、、と思っていたのだが、Youtubeで検索してみたら「How to grow morel mushroom」と題してこんな動画があったので貼っておきます。

ここで画面で説明されている順序と補足説明を加えるとこんな感じ

  1. アミガサタケの栽培用の種の原料を生産(木を粉砕しているがその後は不明)
  2. その種の原料をパッキング&荷積みした後に
  3. 工場に持っていって水をかけて混ぜます
  4. 小袋に分けて入れて殺菌
  5. 菌を培養します
  6. その菌を整地された畑に撒いてマルチをかけておく
  7. 菌糸がその下で生長し、アミガサタケが発生する

大雑把な感じの動画ではありますが、こちらはアメリカのものよりも大量に、しかも確実に栽培できるように見えます。
しかし肝心の種の中身がわかりませんね、、、困った(笑)

日本でもアミガサタケ人工栽培が成功!?

この記事の準備をしている真っ只中にこんなニュースが飛び込んできた。

なんと!日本でもアミガサタケの人工栽培に成功したと!!

どこかと思えば、成功したのはキヌガサタケの人工栽培も成功させた岐阜県にある「ハルカインターナショナル」ですね、、素晴らしい!!

正直に言うと、アミガサタケも徐々にキノコマニアの間に浸透してきて、この時期になると乱獲がひどくって、もしかしてしまいに根絶やしになってしまうのではないか、、、という気すらする昨今。
こう言う栽培モノが出だすことによって商売でアミガサタケを採取する人たちが一人でも少なくなってくれることを期待するのだが・・・

それはないか?(苦笑)

「天然物」とか言って重宝がられて、余計に高値で取引される可能性があるなぁ、、、動物のオシッコがかかってる可能性が高いのに(笑)

アミガサタケ栽培の論文

今年の1月に千葉菌類談話会のスライド会がありまして、その際にチエちゃんがこんな発表をしたそうです。

「モレル栽培最前線」

と称してアミガサタケ人工栽培の論文を読み解いて、それをスライド会の時に発表したらしいのです。

その時の資料を貰いましたので順を追って見てみます。

ちなみに実際の論文のタイトルはこれ

「Multi-omic analyses of exogenous nutrient bag decomposition by the black morel Morchella importuna reveal sustained carbon acquisition and transferring」

訳すと

ブラックモレル(Morchella importuna)による栄養バッグでの栄養分解における炭素取得とその構造解明

という感じだそうな。

ちなみにこの論文はネット上から現在ダウンロード出来るようになっていますので、興味のある方は是非ダウンロードして読んでみてください、、英語ですけど。
https://www.researchgate.net/publication/334526961_Multi-omic_analyses_of_exogenous_nutrient_bag_decomposition_by_the_black_morel_Morchella_importuna_reveal_sustained_carbon_acquisition_and_transferring

ただ、タイトルを見たところこの論文の主旨は

「 アミガサタケはどうやって栄養バッグから炭素を取得するのか?」

であって、アミガサタケ栽培のノウハウを解説してくれる論文じゃなさそうなのだが、どうなんだろうか?(^_^;)

まぁそれでもいいや(笑)
スライド会での発表内容を交えて進めていきましょう。

実は、ずいぶん前より、モレルの人工栽培は成功した、という噂はありました。
でも、たくさんの菌株を集めて、その中で一つだけ、成功した、つまりホンシメジと同じやり方ですね。
それだけでなく、一度だけしか成功しなかった、再現性がないなど、いろいろな情報が飛び交っていました。
ところが、去年、発表された論文には、もうすでに、その技術は確立しているということがわかりました。
なんと、乾燥モレルの輸出はこの人工栽培技術の成功により、 2011年から2015年の間に180トンから900トンに増大した、とあります。
100年近く、いろいろな研究者が試みて、なかなか成功しなかったといわれる、モレルの人工栽培ですが、成功の鍵はなんだったのでしょうか。

少なくとも「どのアミガサタケでも可能か?」と問われるとその答えは「ノー」なのでしょう。
アミガサタケは腐生菌であり、また菌根菌でもある、と言われています。
共生する樹木がないところでは腐生菌の性質を使って栄養を得ようとするし、樹木があるところでは菌根菌の性質を使って木との共生を図ろうとするようです。

ご存知の通り、菌根菌の栽培は非常に難しく、赤松などと共生する菌根菌の代表マツタケの人工栽培はいまだ成功した試しがありません(※松きのこは椎茸です、はい)。

ホンシメジも菌根菌なのですが、菌根菌といえどもほんの少しは腐生菌の性質をもっているものもあるらしく、そのほんの少しの性質を最大限に利用して人工栽培に成功したとのことです。
なので、アミガサタケにもいろんな種類がありますが、人工栽培に適したアミガサタケというのは限られた種なのでありましょう。

では発表に戻ります。
次の写真はENBという栄養バッグの説明であります。

ダウンロード先: https://www.researchgate.net/figure/A-Exogenous-nutrient-bag-ENB-for-morel-cultivation-B-Large-scale-morel-cultivation_fig14_334526961

これは、論文の中にある図です、このENBと呼ばれる栄養バックを、畑の畝に配置するのが、ミソのようです。
この栄養バックの中身は、小麦と米殻を詰めたものを、高圧滅菌したものだそうです。
土壌と接する面に穴をあけ、このように間隔をあけて置いてあります。

ヒラタケがおがくずや米ぬかを混ぜた菌床から栄養を摂るように、アミガサタケもこのENBと呼ばれる栄養バッグから栄養を摂りつつ生長していくそうな、、、

ダウンロード先: https://www.researchgate.net/figure/A-Exogenous-nutrient-bag-ENB-for-morel-cultivation-B-Large-scale-morel-cultivation_fig14_334526961

思いっきしピンぼけですが・・・(笑)
畑の畦の様なところに栄養バッグが置かれて、その間に発生したアミガサタケが所狭しと出てきているのがわかりますでしょうか?

畝の土壌には、アミガサタケの菌糸を敷きこんであります。
たくさんのモレルが出ているのがお分かりになるでしょうか? このモレルは、ブラックモレルと呼ばれる仲間である、Morchella importuna という種です。
日本では報告がありませんが、ちゃんと調べれば、もしかしたら、日本でも発見することが出来るかもしれません。

Morchella importuna という学名でGoogle検索してみました。

日本のトガリアミガサタケと似ていますね。
Wikipedia にはこんな感じで書かれています。

カリフォルニア州北部やアメリカ・カナダの太平洋岸北西部地域の庭園やウッドチップベッドなどの都市部に生息しています。また、トルコ、スペイン、フランス、スイス、カナダ、中国からも報告されているが、これが在来種だったかどうかは不明である。優れた食用キノコとされています。

https://en.wikipedia.org/wiki/Morchella_importuna

ということで、元々は北アメリカ都市部の庭やウッドチップ上にでるアミガサタケ、だそうな。

ってことはかなり腐生性の性格が強いアミガサタケの種類だと言えますね。


ダウンロード先:
https://www.researchgate.net/figure/A-Exogenous-nutrient-bag-ENB-for-morel-cultivation-B-Large-scale-morel-cultivation_fig14_334526961

この栄養バックの中の栄養がどう利用されているのかも、分析して報告しています。
この図は、栄養バッグの中の栄養素が、どのように移動していっているのかを表しています。
モレルの菌糸が蔓延している土壌に、この栄養バックを置いたところです。
この栄養バックの炭素源は、でんぷんです。でも、そのでんぷんを分解する酵素をモレルは持っていません。
土壌中から、窒素をたくさん運んできて、でんぷんを作る酵素が大量に発現させます。
次に、その酵素によって、利用できるまで分解した炭素源は、土壌中のモレルの菌糸によって運ばれていきます。
ちなみに、脂肪から炭素を作り出すことも考えられますが、あまり利用されていなかったようです。
最後に、このモレルは、栄養バックの栄養分を利用して、たくさんの子実体を形成させることができた、とあります。
お渡しした資料にも書いてありますが、Morchella importuna は、腐生性が強いけれど、樹木があるところでは、菌根のような振る舞いをする、と言われています。
そのような生態をもつこのモレルも、栄養バックを使うことでその生活環をうまく巡回させることが出来る、それが成功の鍵だ、というようなことが、論文には書いてありました。

まとめます、栄養様式は、炭水化物と窒素だけでなく、脂質分解、リグニン分解にまで及んでいますが、ここでは、炭水化物と窒素だけとりあげました。
つまりは、土壌中の細菌または真菌とのコミュニティが、M. importuna の生息には必須であり、その生態系に大きく関与している。
と、ひとつの結論を導き出しています。

まとめにも書いてありますが、 Morchella importuna は他の細菌と連携しつつ、この栄養バッグ(ENB)と呼ばれているものの中の栄養を自分のエサとして取り込むことが出来る、ことがわかりました。
しかし、中国のアミガサタケ栽培のYoutubeには、このENBらしきものは写っていません。
他の動画を観ても映ってなかったので、もしかしてENBとは別の方法でアミガサタケを栽培しているのかも知れませんし、撮影の時はENBを隠しているのかもしれません(笑)。

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