石垣島のキノコたち(その1)
4月19日から23日まで石垣島に旅行に行っていた。
ずっとうちの奥さんと一緒だったのだけど、キノコ散策には行きたかったので奥さんには1日早く帰ってもらって、一人になった1日を使ってキノコ散策に没頭させてもらった。
まずはリサーチ。
僕が勝手に「光る夫婦」と呼んでいる波多野さんに
「キノコ散策に行きたいんですけど、どの辺りがいいですかね?」
と聞いたところ「ここに行きなさい」と教えてもらった場所は、事前にアミちゃんにも聞いていた場所と同じであった。
なので、もう「きっとそこにあるはずだ!」とまだ見ぬその場所に大きな期待を抱きながら11時前にホテルを出発し、そこに向かった。
まず最初に見つけたのが、なんと粘菌であった。
ツノホコリの仲間?
ツノホコリの仲間であろうか?
ただ、今まで見たことのあるツノホコリの仲間よりも、少し細くてサンゴ状広がっている感じがする。
次に傘が感じがアセタケの仲間の様な感じがするものを発見。
アセタケの仲間?
どうもアセタケに関しては深く突っ込もうという気が起こらないのは何故だろう、、、(笑)
そしてついに見つけたこれ!!
モリノアヤシビ?
波多野さんに教えてもらったところによると「モリノアヤシビ」というキノコらしい。
そう、教えてもらって初めてわかったのですが、このキノコ光るんですよね!!
光るとわかっていたら、夜にでも見に来たのに・・・・なんて思いつつ。
この「モリノアヤシビ」というキノコを新種記載したのが、以前「謎の青いキノコ」でお世話になった高橋春樹さんなのですね。そこでずうずうしくも、このモリノアヤシビというきのこについていろいろ質問させてもらいました。
高橋春樹さんにいろいろ聞いてみた
まずはこの「モリノアヤシビ」という名前が出てくると必ず「アミヒカリタケ」という良く似たキノコの名前が出てきます。ネット上で「アミヒカリタケ」で検索してみると確かにこの「モリノアヤシビ」にそっくりのキノコが現れてきます。
これらの同一のものなのでしょうか?
アミヒカリタケとモリノアヤシビの関係はしばしば誤解されがちですが、「モリノアヤシビ」は石垣島に分布する種に対してMycena flammifera Har. Takah. & Taneyamaの学名で種山さんと共著で提唱した和名で、正式な標準和名として既に多くの文献や図鑑で採用されている本土に分布する「アミヒカリタケ」とは別種として記載されたものです。
By 高橋春樹さん
なるほどなるほど、、見た目はなかなか区別はつかないのですが、別種なのですね。
アミヒカリタケの学名として採用されているMycena manipularisは、最初スリランカから報告され、熱帯~亜熱帯に渡って広い分布域を持つとされている種類ですが、地域によって形態的に微妙な差異が認められるものの、一時的な変異と見なされる場合が多く、今のところ同一種と見なす見解が優勢です。モリノアヤシビにつきましては、発生地が地域的に隔絶されていること、そしてより長いステリグマ(担子器の突起)を形成し、稀に側シスチジアを有する点でタイプロカリティのスリランカ産M. manipularisと異なるものと思われます。しかしながら上記の形態的特徴は分類学的にはあまり重視されないマイナーな形質であることから、研究者の多くはモリノアヤシビとM. manipularisを同一種と考えているようです。 形態学的にはほとんど分化していなくても、もともと菌類の子実体は形態構造が動植物に比べてシンプルなため、視覚認識による区別は難しく、形態以外の生理や生態などの性質において遺伝的に何らかの形で分化の過程にある種の方が多いのではないかと推測しております。ガラパゴス諸島の生物のように生物群は隔絶された環境に合わせて進化していくものなので、本種に限らず従来汎存種として扱われてきた広い分布域を有する種の多くは今後研究手法の進歩や研究目的によって地理的種または隠蔽種として細分化されていくものと考えています。
By 高橋春樹さん
うむむ、、、研究者の多くはモリノアヤシビとアミヒカリタケは同一のものと見ているというのは少し意外でした。
つまりは「分類学的にはあまり重視されないマイナーな形質 」であるならそれは「同一」とみなされる、という分類学の曖昧な考え方は僕たち分類について詳しくわからないものにとっても「え?そんな曖昧でいいの?」と思ってしまうところなのですが、実際にはそうなのでしょう。
またちょっと検索してみるとアミヒカリタケは本州の例えば千葉とかでも出ているようです。
としたら、この写真のものはもしかしてアミヒカリタケ、という可能性があるのではないだろうか?
タイプロカリティの石垣島でご覧になられたとのことですので、モリノアヤシビに限りなく近いと思います。
By 高橋春樹さん
なるほどです。
石垣島という限定されたエリアでアミヒカリタケに似たキノコを見つけたら、それは限りなくモリノアヤシビに近い、ということですね。
そして高橋さんからはモリノアヤシビが発光している写真も送っていただき、掲載許可も得られましたで、貼っておきますね。
モリノアヤシビ発光写真
このきのこ(モリノアヤシビ)の光る特徴というのは傘もコンディションが良い時は光るけど、基本的には「柄が光る」のだそうな。
そう言えば、大場さんも言うてましたが、光るキノコの中には「菌糸だけが光る」ものもあるそうな。
単に「光るキノコ」とすべてを一緒くたにしがちだが、光る量、光る部位などがそれぞれのキノコによって異なっているのが実に興味深い。
また、モリノアヤシビについてはずうずうしくも高橋さんに質問をぶつけて、そしてとっても丁寧に教えていだきとっても感謝しております。
ほんとはね、高橋さんも著作者として名を連ねている「南西日本菌類誌」を買ってから記事を書かないとダメなのですが、今回はダイレクトにお聞きしてしまいました m(_ _)m
興味のある方は是非「南西日本菌類誌」 をご購入下さい!!
つづく、、、、