春のムラサキフウセンタケは黒いのか?
3週間ほど前に大阪自然史博物館の佐久間さんの元を訪ねたときの話。
何がきっかけだったかは失念したのだが、ムラサキフウセンタケの話になった。
佐久間さんによると
「春に出るムラサキフウセンタケって秋のものとは違う気がする?」
という話であった。
そこで思い出したのが、僕が今年の5月に大阪の箕面に案内してもらったときに見せてもらったムラサキフウセンタケである。
この写真がその時のムラサキフウセンタケなのであるが、どう見ても黒っぽい。
「そう言えば今年、春に見たものは黒かったです」
僕がそう言うと、「そうなんだよねぇ、、」という返事が返ってきたので、きっと佐久間さんが見たものも黒かったのだろう。
この写真では、柄の基部辺りを見ると菌糸がここまでびっしり付いているのかムラサキ色のものが足元を覆っているのが観察できる。
しかし特に傘の部分などは「紫色」と表現するにはあまりにも濃い色でぱっと見は黒にしか見えない。
その時も「ムラサキフウセンタケがありましたよ」と指さしながら教えられて、そしてよく見て初めてムラサキフウセンタケだと認識できるレベルで、最初からこれをムラサキフウセンタケと判別するのは難しいんじゃないかと思う。
ムラサキフウセンタケの肉は白いのだ(笑)
ヒダの色もかなり濃い色をしている。
またフウセンタケの特徴でもある成菌から老菌になってくると、ヒダの部分が錆色になってくるというのがこの写真を見てわかってもらえるかな?
柄の部分もかなり黒っぽい。
ここから傘だけじゃなく、柄も黒いんですよね。しかもこの子実体だけがこんなに黒いんじゃなく、他のものも黒い。
はて?
黒いムラサキフウセンタケの謎
黒いムラサキフウセンタケが存在するのはどういうわけか?
ちょっと考えてみた。
1.地域差?
最初見た時は「個体差」なんだろう思っていました。
こんな「黒っぽい」ムラサキフウセンタケもあるんだなぁ、、ぐらいに。
僕が今まで見たことがあるのが主に神戸。
そんなに見た回数は多くないのだが、そのどれもが綺麗な紫色をしていた。
柄もそうだけど、傘もしっかり紫色をしている。
ひと目で「ムラサキフウセンタケやな」と分かるような色、そして傘の形態をしている。
こちらは滋賀県で見たムラサキフウセンタケ三兄弟。
やはり傘の色などはどこから見ても紫色をしている。
これら神戸や滋賀のムラサキフウセンタケを見たあとに、最初の箕面のムラサキフウセンタケを見たらきっと誰しも違和感を抱くはずだよね?
しかし、これを「個体差の範囲」と言い切れる自信はないし、「個体差の範囲じゃない」と言い切る自信もない。
2.出る季節の違い?
春と秋ではもちろん日照時間とかも少し違ってくるし、気温の違いもある。そして木々に葉がついてるとか、ついてないとかなどの違いもある。
カンゾウタケの様に春に出るキノコが秋にも出ることもあるし、逆に初秋に出るタマゴタケは初夏にでたりもする。
つまり春に出るものは秋にも出る、というのはキノコ達の世界ではそんなに不思議な事ではない。主に気温がキノコの発生条件と合致して、そこに一雨降って地面がいい具合に湿ればキノコ達はここぞとばかりにニョキニョキと出現してくるのに違いない。
そしてこのムラサキフウセンタケも例外ではない。基本は秋であるが、たまに春に出てくることもある、ということを僕が知ったのは今年のこと。
箕面にキノコ観察に行ったときにYさんに「ムラサキフウセンタケも出てるよ」と案内してもらったのだった。
では春に出るものは秋にも出るのか?またはその逆はどうか?と考えるともちろん出ないものもある。アミガサタケなどは秋に出た、というのは聞いたことがない。もしかしてアミガサタケなどは気温、湿度など以外にも出る条件が別にあるのかもしれないですねぇ、、、謎だ。
ただ、出る季節によって同じ種でも形態が多少変わるのかもしれない、なんて考えている。このムラサキフウセンタケの色の違いみたく。
3.実は別種なのか?
佐久間さんがチラッと言うてたのが「もしかして種類が違うのではないか?」ということ。
まぁあくまでも一つの仮説に過ぎないのだが、そう言うことも考えられなくはないぐらいの色の違いだ。
もしまったく同じ場所で春と秋に出るのであれば、それは「同種」の可能性が高いし、出ないのであれば別種の可能性がある(あくまで可能性として)。
ただ、別種かどうかを判別するのはきのこびとの領域を超えるので、この辺りにしておきましょう。
この写真を美菌倶楽部にアップしたところ、I上さんが興味深い写真をアップしてくれた。神戸で春に撮ったムラサキフウセンタケの写真だそうな。
これ、、黒いよね?
ちょっと光の加減でわかりにくいが(黒っぽい写真を撮るの難しいのです、、)、かなり黒っぽいんですよね~
この写真一枚だけで「春に出るムラサキフウセンタケは黒い」とは言い切れないが、これはいろんなサンプルを取って調査する必要があるのではないか?
と思った次第で、この記事を書いてみました。
【追伸】
箕面のYさんが春のムラサキフウセンタケと秋のムラサキフウセンタケの写真をまとめてくれました。
こうやって見るとやはり春のほうが黒っぽくて、秋のほうが紫色をしている感じがしますね。
ただ、Yさん曰く、ここで出るムラサキフウセンタケは普通より黒いそうです(笑)