キノコ写真の撮り方を考えてみる(その2)

僕は現在神戸キノコ観察会に所属している。
月に一度の観察会では全員で同じ場所を回ってそれぞれが見つけたキノコのサンプルを少しだけ採取し、その採取したものを同定会の机の上に広げて、あぁでもない、こうでもないと図鑑を観ながら一つ一つ名前を付けていくのが観察会の流れ、となっている。

ところが最近は写真撮影に時間がかかるグループが出てきた。

でも、それは決して悪いことではない。

正直言うと、キノコ撮影には時間がかかるものである。
出来れば僕ももし良い被写体があれば30分ぐらい時間をかけて撮りたいという気持ちも無いわけではない。
ただし、そんな被写体は「まれ」である。
なので、構図を決めて3回ほどシャッターを切ったら、次のキノコを探しに行く、という感じになる。

しかしそのグループ(と言っても主にM崎さんだが)はちと違っている。

どこが違うのかというと、、、

ピント合わせにやたら時間がかかる

のであった(笑)
笑い事ではない。
いや、横にいたら笑ってしまうのだが、、、なんせ時間がかかる。

僕なんかオートフォーカスで、ちょちょっとピントを合わせて、ぱぱっと撮ってしまうのだが、M崎さんは違うのだ。
当然マニュアルフォーカスだし、しかもカメラがNIKONのD5500なのでバリアングル液晶を覗きながら、被写体の細部を拡大させて思っているところにフォーカスし、よしピントがあったぞ、、という段階で液晶の画面をそっとタッチすることによりシャッターが切れる、というワケだ。

まさに「ピント命」って感じ。

そんなピント命なM崎さんに以前、こんな事を言ったことがある

「ねぇM崎さん、写真ってさぁ、ピントだけじゃなく、絞りも大切やからね、、」

という質問に、M崎さんの返事がその性格を物語っている。

「え?絞りって、、なに??」

はい、でたでた(笑)




この記事はそんなM崎さんに捧ぐ。

絞りとはなんぞや?

 
まず下の写真を見て下さい。
このカメラはNIKONのD5300でM崎さんのものよりはちょっと劣りますが機能的には似たような感じであります。

 
で、このカメラには撮影モードを指定するダイヤルがついております。
この「M」「A」「S」「P」とかいうやつですよね。

コンデジでも普通のヤツはついてるかな?

それ以外にもあるのですが、主に使うのはこれだと思いますので、この簡単な説明をします。

「M」:マニュアルモード
絞り、シャッタースピードを自分で変更して露出を決定します。

「A」:絞り優先モード
絞りを自分で変更し、シャッタースピードは露出に合わせて自動で変更されます。
※適正な露出(被写体の明るさ)はカメラが自動で判断してくれます。

「S」:シャッタースピード優先モード
シャッタースピードを自分で変更し、絞りを露出に合わせて自動で変更されます。
※適正な露出(被写体の明るさ)はカメラが自動で判断してくれます。

「P」:プログラマブルオート
露出が適正になるように、シャッタスピードと絞りをカメラが自動的に変更します。
ただし、シャッタースピードと絞りは適宜変更することも可能。
※適正な露出(被写体の明るさ)はカメラが自動で判断してくれます。

つまりは「M」以外は露出(被写体の明るさ)はカメラ側で判断するので、それを調整するために「露出調整」という機能がついておるのですね(「+/-」というボタンね)。

さて、この4つのモードの中で、キノコを撮るのに使うモードとは、、、なんじゃらほい?

本当は「M」マニュアルが良いのかもしれませんが、、もっとも楽に撮るには「A」絞り優先が良いかと思います。

絞り優先なら、絞りのみに注視することができます。
露出はカメラ側でシャッタースピードと兼ね合いをみて自動で調整してくれるので、もし明るすぎたら暗めに調整をすべきだし、もし暗すぎたら明るくするために露出調整する必要がある。

※また被写体が暗すぎたらレフ板を使うなどの工夫をして、暗すぎるところを明るくしたり、もしくは立体感を出すようなことも必要となる。

ではダイヤルを「A」にして、実際に絞りを変えるには右側の背面のダイヤルを回す必要がある。

じゃあクルクル回してみると液晶の「Fxx」という文字が変わるのがわかりますよね?

この液晶の真中に書いてある「F」とその横の数字です。
その数字が大きくなればなるほど絞り(被写界深度)を「絞る」ことになり、ピントがあう範囲が広がります。また数字を小さくすれば、絞り(被写界深度)を「開く」ことになりピントがあう範囲が狭くなります。

つまり「絞り」とは、、、

ピントが合う距離(範囲)を変更する機能のことなんですね。

絞りを変化させた写真を撮ってみる

さてさて、これでもまだイメージが掴めないアナタ!
ほれほれ、そこのアナタです!!

そんなアナタのために絞りが違う写真を撮ってみますね。

ではまずF値が「F11」のものを見て下さい。

f/11 SS:1/60 ISO280 40mm Macro

ベニタケの傘全体にピントが当たっているのがわかりますか?
それと前にあるコケとすぐ後ろのどんぐりの帽子にもまだピント当たっています。

しかしどんぐりの帽子以降はどんどんボケが濃くなっています。

この絞り値は僕が好きな絞り値なんです。

では次F値が「F6.3」のものです。

f/6.3 SS:1/60 ISO100 40mm Macro

先ほどの写真よりもピントが合っている範囲が狭くなった、と思いませんか?
F値を11から6.3に「開けた」ことによりボケの範囲が広がった、ということになります。

ではもう少し絞りを開いてみますね。

F値は「F3.5」になりました。

f/3.5 SS:1/200 ISO100 40mm Macro

F6.3との差は分かりにくいかもしれませんが、明らかにピントが合っている範囲が狭くなってますよね?傘全体にはピントは当たってません。中心以降よりもうボケが始まっている感じです。



さて分かってもらえたでしょうか?

F値を小さくすればするほどピントが当たる範囲が狭くなります。

で、もう一つ重要なことがあります。
写真の下にその時のデータを書いておきましたが、注目してほしいのが「SS」(シャッタースピード)という値と「ISO」(ISO感度)の値です。

この値は手動ではさわっていません。

つまりはこの値が変わったのは「自動」です。つまりカメラ側が適正な「露出」を行うため(つまり適正な明るさにするために)値を自動で変更した、というわけなのです。

これが「A(絞り優先)モード」なのです。

※ISO感度に関しては「自動で調整」するようにしている時のみ

キノコ写真に適した絞り値は?

「絞り」を変えると、ピントがあう範囲が変わる、というのが分かりました。

では、いったいどの絞り値でキノコ写真を撮るのが一番いいのでしょうか?

僕は以前、3つの絞り値の写真をFacebookにアップして、どれが「好きか?」というアンケートを行ったことがある。
それが以下の3枚の写真です。

「写真1」

f/1.8 1/160 ISO-200 35mm


 
「写真2」

f/3.5 1/160 ISO-800 35mm


 
「写真3」

f/9 1/160 ISO-5600 35mm


 
さてこの中で「これが一番好き」という意見が多かった写真はどれでしょうか?

そしてあなたはどれが一番好きな写真ですか?



一番好きという答えが多かったのは「写真1」なのです。

実は僕自身、この答えにはちょっと戸惑いました。
何故なら「僕が目指している写真ではない」からです。

好きとか嫌いとかではなく、「目指している」ものが違うのです。


話は変わりますが、ヤマケイ図鑑「日本のきのこ」はご存知かと思います。
この図鑑の写真はほとんど伊沢正名さんの写真なのですが、ここに写っているキノコたちは非常に美しく撮られているだけでなく、その背景までバシッと撮られております。

これだけ背景までちゃんとピントが合った写真を撮ろうとすると、相当絞る必要があることは前の写真と比較してわかってもらえると思います。
写真によっては絞り値なども書いてあるので、チェックしてもらえればいいかと思いますが、書いてあるのを見ると「F22」とかになっていますよね?

僕はほとんど「F22」などで撮ることはありません。何故かというとそんなに絞って撮るのは「めちゃくちゃ大変」だからなのです。

なぜそんなに大変なのか?

一つにはそれだけ絞ってしまうとシャッタースピードもその分遅くなり、手ぶれの原因になるからです。では三脚を使えばいいじゃないか、という話になるのですが、いつも持っていく小さな三脚ではきっとそんな遅いシャッタースピードには耐えられず、結局その遅いシャッタースピードに耐えれるだけの「重量」を持ったとっても重たい三脚が必要になるからです。

それともう一つはキノコ周りのお掃除の問題ですね。
キノコが出ている場所というのは決して綺麗なところばかりとは限りません。葉っぱが散乱していたり、木が邪魔をしていたりと背景に「絵にならない」ものが映り込んでいることが多いのです。「F22」で撮るということは、そんな背景まできっちりと映り込むため、キノコだけに関わらず背景もお掃除してあげることが大切なのです。

そこで改めて「日本のきのこ」の写真を一枚一枚見て下さい。伊沢さんがどれだけ一枚の写真に気を使っているか?が見えてくるはずです。

「図鑑の写真」特にキノコ図鑑の写真はキノコ自身だけでなく、どういった環境に発生しているのか?という事で周りに写っている木や葉っぱ、草や木の実、暗いところなのか、明るいとこなのか、じめじめしているところなのか、それとも乾燥しているとこなのか、そんな風景が一枚の写真に映り込んでいる必要があるのです。そこにキノコ写真の難しさ、があるのですね。

さて、ここで話を戻します。

僕が「目指している写真」についてです。

伊沢さんの様な「図鑑的な写真」はあきらめているのですが、かといって絞りをかなり開いた写真はファンタジックではあるものの、キノコ自身の全貌が見えないので、それもまた本意ではないのです。
なので、F9~15(35mm、40mmレンズ)あたりでキノコの全貌とその周りの状況がわかり、かつ背景はボケている、という写真を目指しているのです。

しかしですね、、最近菌友のK山さんに

「最近のあんたの写真はI上さんに似てきたなぁ~影響受け取るんとちゃうか?」

と言われた。うん、確かに。
I上さんの写真はどちらかというとかなり絞りを開いて撮る女性らしいファンタジックな写真。とってもふんわりして、明るく、背景も綺麗にボケていて色目が美しい。
I上さんの写真を意識しているわけではないが、意識していないわけでもない(笑)。

つまり「そういう写真『も』撮ろう」と思って撮っているのです。

それにはワケがありまして、2年ほど前からキノコカレンダーを作っておりまして、最初はいわゆる「目指している写真」を載せていたのですが、どうもカレンダー向きじゃないのですね。カレンダーとしては無粋すぎる。図鑑写真とまでは言わないけど、カレンダーにするのならファンタジックの方が良いのではないか?と思ったワケなのです。

なので、一つのキノコ(被写体)に対する写真でもできるだけ絞りやアングルを変化させて撮るのが今の撮り方というわけです。言わばカレンダー用と記録用ですね。

まとめると?

キノコ写真に適した「絞り」というのはありません。
それは「どんな写真を撮りたいか?」ということで、絞りを適宜変えていく必要があるからです。

逆説的に聞こえてしまうかもしれないが、

キノコ写真に適した絞りは無いが、絞りを意識しないキノコ写真は「まぐれ写真」であります(笑)

やはり絞りは意識して欲しいですよね。

ここで僕なりの目安を言うと

1.ファンタジック写真

35mm標準レンズでF1.8(開放)~F6ぐらい

2.ブログ用証拠写真

35mm標準レンズでF6~F14ぐらい

3.図鑑用写真

35mm標準レンズでF15~F22(パンフォーカス)ぐらい

とこんな感じですかね?

どうでしょう、、参考になりましたか、M崎さん?(笑)

 

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