2018年中国で新種記載されたテングタケ属の紹介(1)
今年は「テングタケの年」であった、と自分なりに思っている。
ある研究者さんのお手伝いをしてテングタケを見つけては標本を送ったりしていたら、いつもは「あぁこれテングタケだな」と思って、綺麗でなければ写真すら撮らなかったものをちゃんと写真を撮り、標本として採取し、仮の名前を付け、その日か翌朝に冷蔵便として送るということを毎週していたからだ。
そんな生活をテングタケ属が発生しだしてから半年ぐらい(5月から10月)続けているとテングタケ属へのアンテナが異常に発達し、まるでテングタケから「ここにおるよ❤」と呼ばれているのではないか?と思えるほど多くのテングタケ達に出会う事が出来ました。
それらの結果はまた後日発表できるかと思っているのですが、今回紹介したいのは2018年に中国から発表された論文についてです。
ResearchGateからダウンロードすれば全文読めるので、興味ある人は読んでみて下さい。
内容はというと、主に中国で採取することが出来たテングタケ科(Amanitaceae)のキノコを包括的に分子系統解析して、判明した内容を整理して掲載したものですね。
この論文の中では中国産のテングタケ科のキノコが162種も掲載されています。
まるで図鑑ですな(笑)。
この162種の中には既知種も含まれているのですが、驚くことに50種の新種も含まれています。それらは写真なども貼り付けられておりますので、日本の既知種などと比較して
「もしかしてこの不明種はこいつではないか?」
とか
「この種だと思っていたんだけど、もしかしてこちらでは?」
などを考えたり、わいわい討論するきっかけになれば良いのでは?と思っています。
それでは新種記載(またはそれに準ずる)キノコたちの紹介をしたいと思います。
※ちなみにここで貼り付けている写真は全て論文からの引用となります。
テングタケ節とタマゴタケ節のキノコ達

Fresh basidiomata of novel species in Amanita sect. Amanita and A. sect. Caesareae.
- a–b A. flavopantherina (TYPE, HKAS 82613);
- c–d A. griseopantherina (TYPE, HKAS 83560);
- e A.pseudopantherina (HKAS 83636);
- f–g A. alboumbelliformis (TYPE,HKAS 83448);
- h A. fuscoflava (TYPE, HKAS 59800);
- i A. ochracea (HKAS 48548);
- j A. pseudoprinceps (TYPE, HKAS 97523);
- k–l A.rubroflava (TYPE, HKAS 83089);
- m–n A. squarrosipes (TYPE,HKAS 76359);
- o A. subhemibapha (TYPE, HKAS 96847).
それでは1つずつ見ていきましょう。
Amanita flavopantherina Yang-Yang Cui, Qing Cai & Zhu L. Yang, sp. nov.
テングタケやイボテングタケに似ていますね。
テングタケの学名が A. pantherina で flavoは「黄色の」という意味なので、黄色いテングタケと言う感じでしょうか?
「識別形質」
- 傘:褐色〜暗褐色、黄色の錐体状〜亜いぼ状のつぼ残存物、縁部に短い条線
- 肉:白色〜黄色
- 柄:白色〜黄色、襟状で短い縁取りのつぼ、下部に複数の環状帯を形成することが多い
- つば:亜頂生〜中位、黄色、明瞭な褐色の縁を持つことが多い
- 担子胞子:広楕円形〜楕円形(10.0–12.0 × 8.0–10.0 µm)
- クランプ:存在
- 生育環境:PiceaとAbiesが優占する亜高山帯林
Amanita griseopantherina Yang-Yang Cui, Qing Cai & Zhu L. Yang, sp. nov.
これもテングタケやイボテングタケに似ている種ですね。
テングタケの学名が A. pantherina で griseoは「灰色(やや青みを帯びる)」という意味なので、灰色のテングタケと言う感じになりますが、灰色か?という思いはありますな(笑)
論文では「円錐状の白色から汚白色のイボ」と書かれているので「汚白色」がgriseoということになるのかもしれません。
これもトウヒやモミなどがある亜高山帯に発生するとのこと。
「識別形質」
- 傘:黄褐色〜褐色、白色〜汚白色の錐体状・いぼ状〜円錐状のつぼ残存物、縁部に短い条線
- 肉:白色
- 柄:白色〜汚白色、襟状または短い縁取りのつぼ
- つば:頂生〜亜頂生、白色〜淡褐色
- 担子胞子:広楕円形(9.5–12 × 8–10 µm)
- クランプ:一般的に存在
- 生育環境:PiceaとAbiesを伴う亜高山帯林で優占
Amanita pseudopantherina Zhu L. Yang ex Yang-Yang Cui, Qing Cai & Zhu L. Yang, sp. nov.
これもテングタケやイボテングタケに似ている種ですね。
この種は1997年に新種記載されたものですが、2018年に改めて正式に記載されたものとなります。
同じくテングタケの学名が A. pantherina で pseudo は「偽りの」という意味ですので和名で言うと「ニセ~」「~モドキ」「~ダマシ」という感じになると思います。
この種はかなりA. pantherina つまりテングタケとかなり近縁であるらしく、A. pantherinaの方がより頑丈な子実体で、より細い担子胞子を持つことで区別できるとのこと。
「識別形質」
- 傘:褐色、白色の錐体状つぼ残存物で密に覆われる
- 柄基部:球形〜亜球形、襟状で縁取りのあるつぼ残存物
- 担子胞子:広楕円形(9.5–12.0 × 8.0–10.0 µm)
Amanita alboumbelliformis Yang Cui, Qing Cai & Zhu L. Yang, sp. nov.
似ているものとしてはその色とツボの大きさからハマクサギタマゴタケに似ている様に思います。
alboは「白の」。umbelliは「傘」。formisは「形の」となります。
ちなみに類似種は
A. chepangiana、A. caesarea f. alba、A. egregiaとA. looseiなど。
A. caesarea f. albaはタマゴタケの白色バージョンですね。
「識別形質」
- 子実体:白色、傘の中央部とつばはクリーム色〜黄色
- 傘縁部:長い条線
- 担子胞子:球形〜亜球形(9–11 × 9–11 µm)
- クランプ:存在
- 生育環境:亜熱帯林の混交林または広葉樹林
Amanita fuscoflava Zhu L. Yang, Yang-Yang Cui & Qing Cai, sp. nov.
とっても微妙な色合いですが、これもタマゴタケの近縁でしょうか?
fuscoは「暗褐色」で flavaは「黄色の」となります。
写真だけ見ていると高橋春樹さんが記載されたフチドリタマゴタケの様な色合いをしていますね。
やはり特徴は暗褐色の傘中央部と黄色の縁部と長い条線とのこと。
熱帯地域に分布するということですので、やはりフチドリタマゴタケと類似かと思いきやA. subhemibaphaと近縁だそうな。
「識別形質」
- 傘:長い条線、暗褐色の中央部、黄色の縁部
- 担子胞子:楕円形
- クランプ:一般的に存在
- 分布:熱帯
Amanita ochracea Yang-Yang Cui, Qing Cai & Zhu L. Yang, comb. & stat. nov.
柄に赤いダンダラがくっきりと見えますね。これもタマゴタケ(特にサトタマゴタケ)によく似ている気がします。
ochraceaは「黄土色」となりますが、この写真では黄土色的な印象は受けません。
特徴を読むと元々は Amanita hemibaphaの変種(A. hemibapha var. ochracea)として記載され、その後の系統解析により別種の方がよかろうということになり A. ochiraceaとして独立したとの事。
傘の中央が褐色で突出しているのが特徴(確かこの特徴は A. hemibapha と共通したもののはず)。
Amanita pseudoprinceps Yang-Yang Cui, Qing Cai & Zhu L. Yang, sp. nov.
傘の色がこれこそ黄土色で、日本ではあまり見たことが無いキノコに見えますね。
Amanita princeps というこれも日本では報告がないキノコの「pseudo」なので「偽りの」となりますので、モドキ的な種なのでしょう。
「識別形質」
- 傘:黄褐色〜褐色、短い条線(0.2–0.3 R)
- つば:頂生
- 担子胞子:亜球形〜広楕円形(10–12 × 8.5–10.5 µm)
- クランプ:一般的に存在
Amanita rubroflava Yang-Yang Cui, Qing Cai & Zhu L. Yang, sp. nov.
これはタマゴタケ(A. caesareoides)の方によく似ています。
傘中央が赤く、縁に行くに従い黄色味が強くなっている様に見えます。
学名の rubroが「赤味」でflavaが「黄色」ですから、学名は傘の色を元に付けられているのですね。
やはり系統的には A. aff. caesaroides と近縁とのことです。
ただし、中国においては A. hemibaphaと混同されていると書かれていますが、日本には A. hemibaphaは存在しないそうなのでこの辺りは事情が異なりそうです。
A. caesareoides との比較では A. caesareoidesの方がより赤色から橙赤色の傘をもち、温帯東アジアで優占するらしい。
「識別形質」
- 傘:こぶ状、中央部が赤色〜橙赤色、縁部が黄色で長い条線
- 担子胞子:亜球形〜広楕円形(8.0–10.0 × 6.5–8.5 µm)
- クランプ:一般的に存在
Amanita squarrosipes Zhu L. Yang, Yang-Yang Cui & Qing Cai, sp. nov.
傘の色を見るとミヤマタマゴタケに似ていますが、柄のダンダラ?ササクレ?的なものは異なる様に思います。
学名の squarrosipes は「鱗片状の」という意味の様ですので、この柄の鱗片はかなり特徴的なものなのでしょう。
調べてみるとやはり系統的にミヤマタマゴタケ(Amanita imazekii)と姉妹群であり、かつ形態的にも類似しているとの事。
ミヤマタマゴタケの方が子実体が大きく、白色から灰色の小鱗片で覆われた柄を持つことから区別できるそうな。
やはりこの特徴のある柄は A. squarrosipes の大きな特徴なのでしょう。
「識別形質」
- 傘:淡灰色
- 柄:白色、灰色〜暗灰色の小鱗片で密に覆われる
- 担子胞子:球形〜亜球形(9.0–11.0 × 8.5–10.5 µm)
- クランプ:一般的に存在
- 分布:亜高山帯林
Amanita subhemibapha Zhu L. Yang, Yang-Yang Cui & Qing Cai, sp. nov.
この写真を見るとどうしても「これセイヨウタマゴタケじゃない?」と突っ込みたくなりますが、どうも別種の様ですね。
しかもその名前が示す通りセイヨウタマゴタケとはかなり形態が異なるのでは、と思われます。
学名の 「hemibapha」は以前タマゴタケに充てられていた学名で、東南アジアのタマゴタケの近縁種をタイプとする学名でした。
つまり 「subhemibapha」はsub=ニセまたはモドキのhemibaphaとなりますね。
「識別形質」
傘:こぶなし、橙色
ひだ:白色〜クリーム色、黄色の縁
柄:黄色〜橙色
担子胞子:広楕円形〜楕円形(8.0–11.0 × 6.0–8.0 µm)
クランプ:一般的に存在
「参考」
The family Amanitaceae: molecular phylogeny, higher-rank taxonomy and the species in China


