ニセ乳疑惑

2025.5.22 撮影:Oさん

「2025年の初乳🍼出ました〜😍

という書き出しの文章がFacebookのきのこグループに投稿された。
投稿主はOさん。
今年初のチチタケの仲間を見つけた「喜び」がこの一文でわかりますよね。

チチタケの仲間はこの様にヒダの一部を傷つけたらそこから白や黄色、あとは透明や紫色など様々な色の乳液が滲み出てきます。
このチチタケの仲間も例外ではなく、白く美しい乳液がヒダの縁部から出ておりますね~

で、傘はどんな感じなのでしょう?

2025.5.22 撮影:Oさん

「ん?」(*’ω’*)

多くの人がこの写真を見てそんな顔をするでしょう。
だってこれ、オオホウライタケにそっくりなのですもん。

オオホウライタケ学名は Marasmius maximus
チチタケ属の学名は Lactarius(ラクタリウス) または Lactifluus(ラクチフルウス)
MarasmiusLactarius(Lactifluus 違うのものですよね?(笑)

僕の知る限り Marasmius から乳液が出るというのを聞いたこともありません。

だとしたらこれはチチタケの仲間の何か?なのでしょうか?
興味深かったのでTwitterの方に投稿してみました。

ヒダだけ見ているとチチタケ属にも見えるかもしれませんが、柄を見る限りチチタケ属の典型的なものは、もう少し太く、短いものが多いのでこれをは異なる様に見えます。とは言え、チチタケ属にもアシボソチチタケなど柄が細いものもあるので僕が知らないチチタケの仲間がいるのかもしれない。

そんな思いで投稿してみたのでした。

例えばガガンボさんがコメントをしてくれたウスズミヒロハチチタケなどは候補に入れたもののやはり柄の雰囲気がかなり異なりますので除外しました。

ヒロハウスズミチチタケ 2025.06.15 滋賀

その他、もろもろ意見を頂きましたが、その中で ତ.Fungi.ତ 氏から

「これは乳液なのでしょうか?綿状あるいは瘤のようにも見えますよね。」

との意見が!
なるほど、乳液だとばかり思っていたのですが、まさかの乳液ではないとの選択肢があったとは。
しかし、Oさんは採取していなかったので、もう一度発見した場所に行ってもらい、この「乳液的なもの」が何かを確かめてもらうことにしました。

そしてそれはチチタケではなかった

2025.5.25 大阪

Oさんの投稿があった週末、僕は良く行く某公園にキノコ散策に出かけた。
アスファルトで舗装された道から少し山道に入ったところは落ち葉が沢山堆積しており、いつも頭を悩ます小型の落ち葉分解菌が出ているのだが、この時見つけたのはなんとオオホウライタケであった。

え?何この縁?オオホウライタケに呼ばれた?(笑)

そう思った。
でもまさか乳液は出てないよなぁ、、と思って裏返してみた。
それがこの写真。

2025.5.25 大阪

何か白いものが付いてる!!(@_@)

ヒダの縁にはこの様に何か白い物質が付いているのが何本かありました。

これもしかしてOさんと同じ白いものか??

やはりオオホウライタケに呼ばれたのだとこの時確信しました(笑)。
そして「これは乳液じゃない」とも。

じゃあこれは何なのでしょうか?
家に持って帰ってライトを当ててTG-6を押し付けて撮影してみました。

2025.5.25 大阪

なんでしょうか?
白い繊維状の塊のようなものが付着していますね。
これは遠目には「乳液」に見えていたのでしょうね、、ダメですねぇローガンズは(笑)
しかしこの繊維は何で出来ているのでしょうか?もしかして何かウネウネした美しい細胞が見えてくるのでしょうか?

2025.5.25 大阪

白い繊維だけをスライドグラスの上に載せ、カバーガラスで挟みもせずに検証したものです。
何かカビ的なものであれば分生子柄とか分生子などが見れるかなぁ、、と思っていたのですが、この段階ではただの糸状のものしか見えませんでした。

そこで水封しフロキシンで染色してみました。

2025.5.25 大阪

うーむ、これは菌糸ですな!!

もしかしてこれはオオホウライタケ自身が菌糸を使って作り出した繊維状の物質なのでしょうか?
それとも他の菌類がオオホウライタケのヒダに感染したものでしょうか?

僕の予想ではカビが感染したのもだと思っていたので、この菌糸の姿には少し驚きでした。

実はその晩、OさんがFacebookに見に行ってくれた結果を投稿しておりました。
やはり僕と同じように繊維質状の物質だったという事。

しかしほぼ同時期にまったく違う場所(Oさんは関東で僕は大阪)でオオホウライタケのヒダに白い繊維状の物質が付着している、という事実は変わることはありません。
つまりそれは環境によって変わるものではなく、オオホウライタケの特徴として有するもので、オオホウライタケ自身が作り出したものか、それともオオホウライタケに特異的に感染するものが存在するのか、のどちらかだと考えられます。

確かにこれは「ニセ乳」ではありますが、オオホウライタケが有する新たな知見かもしれませんので、オオホウライタケを発見し、ヒダにこの様な白い繊維状のものを見つけられた方は情報をお寄せください。
また、オオホウライタケにはこんな特徴が知られているという情報もありましたら是非是非教えてくださいませ。

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