アミガサタケは人工物がお好き?

アミガサタケ

アミガサタケである。
意外なところから出ている、という話をよく聞くが、僕自身もそんなアミガサタケをよく見ます。

例えば上の写真のアミガサタケ。
このアミガサタケは道路と土を隔てるコンクリートの隙間からニョッコリと出ている。
たぶん柄の付け根はこのコンクリート壁が腐蝕して穴が開いた奥のところにあるはずだ。

なんでそんなところから?という疑問がでて当然ですよね。
なぜなら、それは我々人間としては「如何にも出にくく」そして「如何にも狭苦しい」場所だからである。

でもね、人間と同じと考えてはいけないのです。
彼らは「真菌」なのです。人智を超えた繁殖力と生命力を兼ね合わせているわけです。
なので、この場所は彼らにとってもっとも「出るのに適した」場所といっていいかもしれません。

このアミガサタケの上には確かに桜の木(ヤマザクラ)がある。
桜の木の下にアミガサタケが出る、と言うのは僕達キノコ愛好家にとっては既に常識となっている。
ただし、桜の木だけじゃなく、イチョウ、カツラ、紫陽花の下などにも出るので、ハルシメジのように「バラ科の植物に限定」というような特徴は持っていないようです。
また前にも書きましたが、アミガサタケは腐生菌の性質も菌根菌の性質も持っているらしいので、そう言う意味でも謎の生態を持つキノコ、、なのでしょうね。

なので、どこから現れるか、、ってのは我々には掴むことができない、、のか?

ってことで何故アミガサタケはこんなトコから出てくるのか、いくつか仮説を立ててみる。

仮説その1 水分がたまりやすい

このアミガサタケも1枚目の写真とほぼ同じ場所から出ています。
わかりにくいですけど、このアミガサタケの右側にもコンクリート壁があります。

このコンクリートはあらゆるものを「堰き止めて」くれます。

恐らく「水分」も。

もちろんコンクリートですから、土に比べて水は浸透しにくく、水分も留まりやすく、周りに比べて水分保有量は多いハズ。
キノコというもの、水分がないと子実体は大きくなれないので、水分保有量の多いコンクリート壁の周りは恰好の「出場所」といっても良いのは確かな様です。

仮説その2 木の葉がたまりやすい

この写真は厚木のある公園で撮ったものです。
イエローモレルですが、やはり同じようにコンクリート壁のすぐ近くから出ておりました。

ここは公園の中で、遊歩道があり、歩道とそうでないところを隔てるためにコンクリートの仕切りがあり、その仕切のすぐ脇から出ていました。あと2本ほどまったく同じようにして出ていましたが、それ以外の場所(例えば木の下とかね)ではまったく見られませんでした。

で、このアミガサタケの回りをよく見てください。木の葉が溜まっているのがわかります。
ここは歩道ですのでその中心はまったく落ち葉がなく、隅っこに押しやられるようにこのコンクリート壁で止まっておりました。つまりコンクリート壁があると落ち葉はそこで堰き止められ「溜まる」のですね。

もしアミガサタケが腐生菌の性質を持つのならば、その落ち葉を分解するためにそこに菌糸もとどまり、そして自身を張り巡らしているのではないかと、思われますね。

仮説その3 コンクリートでアルカリ土壌へ

これがアミガサタケの出ていた厚木のとある公園です。
この歩道のコンクリート脇に出ていたのですが、「なんでここからだけ?」という様な場所ですよね。
この公園ではここからしか出てないのです。

この道の脇にはイチョウの木がその双方にありますが、イチョウの木ノ下とかには出ずに、このコンクリート壁の脇にだけ出ているとはなんとも不思議な光景でした。

よくアミガサタケは「アルカリ土壌を好む」と言われています。
もしかして、このコンクリートから石灰岩の成分が溶けて、その周りにある土壌をアルカリ性化させているのでしょうか?

しかし、こんなページを見つけました。コンクリート協会のものです。

Q.コンクリートの中性化とはどんなものでしょうか?
A.コンクリートは、セメントの水和によって水酸化カルシウム(Ca(OH)2)が生成され、pHが12~13の強アルカリ性を示します。しかし、空気中の二酸化炭素(CO2)による化学反応から、水酸化カルシウムが炭酸カルシウム(CaCO3)に変化し、コンクリートからアルカリ性を失っていきます。これを中性化といっています。
http://www.jcassoc.or.jp/cement/1jpn/jy_21.html

たぶんこの公園も作られて何十年も経っていることでしょう。
このコンクリートで作られた仕切りも決して新しいものではありません。
なので土壌は既に中性化されて、ここから滲み出てくる石灰成分が土壌をアルカリ性にしている可能性はさほど多いとは思えませんが、果たしてどうなのでしょう?

仮説その4 菌糸の身になって考えた

さて、上記3つの仮説を立てて、アミガサタケが好む条件を考えてみました。
この3つとも正しいかもしれませんし、3つとも間違っているかもしれません。
しかし、アミガサタケが

「何故こういう場所から出てるくのか?」

少なくともこの場所に菌糸があるから、に違いないことは確かです。
そして菌糸は自分自身の繁殖を続けていくために、その「糸」を延ばそうとするはずです。
しかしそれを延ばせなくなる環境がある時、菌糸はそこで子実体を作るのではないでしょうか?

その様子をイラストにしてみました。

どうでしょう?
菌糸の気持ちに少しでも近づけたでしょうか?(笑)

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