毒キノコ事件簿 その8
まさかとは思いましたが、その「まさか」という事件が起きました。
タマゴタケと間違って「タマゴタケモドキ」を食べた、のだそうな (@_@)
そう言えばまだ今年はタマゴタケに会っていない。
7月。
何回か「あるかな?」という時期に行ってはみたものの、残念ながらその赤い姿を見つけることはできませんでした。
今年はタマゴタケの出そうな時期に雨が降っていなかったり、逆に台風がやってきたりして行く手を阻まれたりしたりして結局出会いが叶わず(涙)
しかし、、
タマゴタケ前線が今また近づいて来ている、とアンテナがビンビンしている。
まずは北海道の方で、ハナイグチ(北海道ではラクヨウと呼ばれている)などとともに「狩り」の対象となっていて、山盛りのタマゴタケの写真がFacebookにアップされているのを目にすると、その赤いターゲットは東北へ移り、そして北関東や信州、そして中部地方のちょっと標高が高いところまでやってきている。
そわそわそわ、、、
そろそろ関西にもその波がやってくるではないか、、、と気が気ではない。
だって食べ菌さんたちにさっと採られちゃうんだもん(涙)
でもね、僕的にはそんなに美味しいとは思わないのよね、、ぶっちゃけた話。
なので、食べないんだけど、、ちょうどこの前キノコ好きの集まりがあって良く食べているらじかる君に聞いてみたのさ。
「結局タマゴタケって美味しいの?」
「いや、美味くない(きっぱり!)」
「お!まじ?」
「あれはダシを取るだけやな、、身はまったく美味くないね」
あぁ良かった。
Facebook上ではあれだけ「美味い、美味い」って食ってる写真があるもんだから、
「もしかしてオレの味覚って変なん?」
と思っていたのだが、まぁそんなにも間違っていなかったわけだな(笑)
毒キノコ事件簿 in 山梨県
8月28日、60歳代の女性がタマゴタケモドキを食べて食中毒を起こして病院に担ぎ込まれた、という。
「毒キノコ「タマゴタケモドキ」で食中毒 山梨で60代女性、肝障害も」
https://www.sankei.com/life/news/180828/lif1808280035-n1.html
記事は消えてしまうので内容を引用させてもらいます。
患者は食用の「タマゴタケ」に似た毒キノコ「タマゴタケモドキ」とみられるものを食べたとされ、今も入院中という。タマゴタケモドキによる食中毒は県内で初めてとしている。
同課によると、患者は富士・東部地域に住む60代女性。23日の正午ごろ、家族が採取した野生のキノコを炒めて食べ、同夜に嘔吐(おうと)や下痢などを発症。救急搬送され地元の入院した。他の家族はキノコを食べなかった。
25日にタマゴタケモドキが引き起こすとされる肝障害など症状が悪化し、中北保健所管内の病院に転院した。
ポイントを整理すると以下のとおり
- タマゴタケだと思って家族が採取してきた
- キノコを炒めて食べた
- 食べたのは60歳代の女性のみ、家族は食べず
- 夜中に嘔吐や下痢で救急搬送
- 肝障害など症状が悪化する
かなりひどい症状だと言うことがわかります。
タマゴタケモドキというの下手したら死につながるキノコです。
しかもタチが悪いのは「キノコを少し知っている」人達がこの様なことになる、という事です。
ほんとにキノコを知らない人は「タマゴタケ」すら知らないはず。
僕も知らない頃はそうでしたが、「赤いキノコ」なんていうのはもう「毒」「危険」の象徴でしかないはずなのですね。
また以前も書きましたが、タマゴタケを教えた友人が
「タマゴタケあったよーー!」
と言うので見に行くとそこには見事なベニタケ(たぶんヤブレベニタケ)がどーーんとあったのを見て、
「みんなそんな感じなのね」
と下手に知識を持つとそうなるんだなぁ、、と思ったものでした。
タマゴタケモドキとは?
ではタマゴタケモドキってどんな感じのものなの?
ということで写真を39さんからお借りしました。
まぁタマゴタケと似てると言えば似てるかなぁ、、でも似てないよな(笑)
というのが正直な感想です。
ではいくつか特徴をピックアップしてみましょう。
※重要なポイントは太字にしてあります。
- 傘の径は3~7cm
- 表面は汚橙黄色~黄土色
- 周辺は黄色
- ヒダは白
- 柄は淡黄色繊維状の斑紋
- 白色硬質のツバ
- 袋状のツボ
言うまでもありませんが、まず傘の色がまったく違いますね。
タマゴタケは毒々しい赤い色をしており、タマゴタケモドキはどちらかと言うと黄色ですね。
この時点で「タマゴタケではない!」とわかるのだが、なぜ食べた人(またはその家族)はタマゴタケと思ったのか、、それが僕にとっては最大の謎なのです。
上の方でも書いておりますが、キノコに詳しくない人がまずキノコを判別するための一番の手がかりとなるのが「色」だと思うんですよね。
色が同じなら「同じキノコだ」と思うのは仕方がない。
だが今回は違うのよね、、、色が、、、まったく、、、(@_@;)
じゃあキタマゴタケはどうなの?
さてさて、、確かにタマゴタケとタマゴタケモドキは「色」が違います。
しかし!!!
タマゴタケの親戚にキタマゴタケなるものがいるのはご存知か?
僕もかつて一度だけその姿を見たことがある。
これです。
チャタマゴタケの黄色バージョンじゃない?という噂もありますが、この際気にしない(汗)
これ、とあるところの崖のところに群生して出ておりましたな。
まずこの傘に注目してください。
特徴を拾っていくと、、
- 中央が濃いオリーブ色
- 周辺に向かって黄色に近づく
- 条線が明確
- 中央がやや尖っている
これぐらいの特徴がありますね。
これだけ見てもタマゴタケモドキとの違いは判定できると思いますが、、、
しかしもし仮に山梨の中毒した人が「タマゴタケモドキとキタマゴタケを間違えた」のならわかります。
黄色いテングタケ科のキノコ、というだけでみんな連想するのが「キタマゴタケ」だからです。
なので基本的には
「黄色いテングタケの仲間は食べるべきではない」
と僕は力説したいのですね。
やっぱ人間の目というのは食べ物を前にしたら曇っちゃいますからね(笑)
それでもやっぱり食べたい?
そうか、そうかぁ、、食べたいかぁ、、、
これをキタマゴタケとして食べられるのかい?
さて、これをキタマゴタケと100%言えるのか?
傘の特徴はいい感じです。
またヒダに関しても「黄色く、そして密である」こと
ここまではよい
問題はここからである
「日本のきのこ」には
柄は黄色の地にオレンジ色のだんだら模様がある
と書いてある。
だんだら模様に関しては、以前の記事「されどタマゴタケ」で僕的には個体差、または環境の差だと思っている。
さすれば問題は「黄色の地」である。
この写真はそのあたりが微妙で、どちらかと言うと「白の地」に近く、だんだら模様も無い。
特徴としてはタマゴタケモドキの「柄は淡黄色繊維状の斑紋」と言えなくもない。
困った、、、なかなかキタマゴタケとは断定しにくいよね?
なので、こういうのは「食べない!」のが潔い選択だと思われますな。
よく言う
「死を賭してまで食べる美味しいキノコなど無い!」
のであるから、そんな冒険をする必要などまったくありゃしません。
だってキタマゴタケもそんなに美味しくないもんね(あ、言っちゃった w)
ではではもっと紛らわしい写真をお見せしましょう。
黄色い幼菌たち
これからお見せするなかで「キタマゴタケ」と判るもの、あるかな??
成菌だとまだ特徴がでているのでよく分かるが、幼菌だとほんとに判らない。
これのうちのどれかを
「あ!キタマゴタケだ!!美味しいそう!」
などと言って食べちゃうかもしれない。
それが実はタマゴタケモドキだとしても・・・・
危ない危ない、こんな時にもう一度あの呪文を心に刻もう。
「死を賭してまで食べる美味しいキノコなど無い!」
そしてこれももう一回言うとこ。
「黄色いテングタケの仲間は食べるべきではない」
もしあなたがキタマゴタケの料理をアップしたとする。
それを見たあわてもののキノコ人が黄色いテングタケを見つけて、
「あ、これってこの前◯◯さんがアップしていたキタマゴタケやん♡」
と早合点して食べちゃう可能性は高い。
なので「野生のキノコを食べる」というのは余程慎重にしなくてはならないのです。
自分は大丈夫でも、他の人にどれだけ影響を与えていることを考える必要がある時代になって来ている。
たとえ食べるのは「自己責任」だとしても。