「奥入瀬渓流 きのこ ハンドブック」
奥入瀬渓流というと思い出すのは20年ほど前。
どういうきっかけで奥入瀬に決まったのかはすっかり忘れてしまったのだが、子供たちがまだ小さい頃(恐らく下の子が保育園)、「まだ飛行機は無料だから、、」っていう何とも単純な理由でもって子供たちを引き連れて行った事がありました。
大館能代空港に降りて、そこからレンタカーで十和田湖方面へ。
途中で縄文好きの聖地、大湯ストーンサークルへ立ち寄り、その後、日本のピラミッドと称せられる黒又山(通称クロマンタ)を横目に見ながら「おぉ、、あれがピラミッドかぁ、、」とまったく興味の無い家人たちをよそに一人興奮するワタクシ。
そして十和田湖を通り過ぎ、奥入瀬渓流への入り口に入った時に初めて「奥入瀬渓流というのは、十和田湖から流れ出る川によって作られているのか」と気づく。
渓流に沿うようにして作られた道路を取り囲むように、大木たちが道の脇にひしめき、これが晩秋なら余ほど美しい紅葉が見られるのだろうなぁ、、、と思いつつまだ星野リゾートになる前の奥入瀬渓流ホテルへと車ごと吸い込まれていった。
20年前の思い出。
今から考えれば奥入瀬渓流と言う場所は「いかにもキノコが沢山発生しそうな場所」なのだろうと思ったりする。川が流れ、湿り気に富み、適度に開けていて、そして木々が上手く新陳代謝を繰り返しているところ。そんな場所ではきっとキノコたちが生き生きと落葉した葉っぱたちや、朽ちかけた倒木をせっせ、せっせと分解している姿が目に浮かんでくる。
そんな奥入瀬渓流から本が届いた。
まずは表紙。多くの色鮮やかなキノコが敷き詰められ、この表紙だけでキノコの造詣がいかに複雑なのかがわかりますね。そしてふんわり浮かんでいるのはもしかして胞子でしょうか?鮮やかな色彩の中から、透明感ある新たな魂が生まれる瞬間を見るように思えてきます。
著者は河井大輔氏。
図鑑独特の難しい表現はほとんど使われておらず、キノコの発生時期やキノコの特徴をキノコ本を初めて読む人でも分かりやすく解説してくれているのが良くわかる。
また解説の文章自体がとっても素敵なエッセイ風になっており、読み物としても清涼感があり、まさに奥入瀬渓流そのものの様な内容に仕上がっているのですね。
例えばナヨタケ属のきのこでは、、
撮影は5月9日の午前11時29分。 その日は朝からずっと曇空。遊歩道の路傍でこのきのこを見つけ、ちょうどカメラを向けた時、雲間から陽が差し込んできたのでした。やわらかい光を受けて、ふんわりと輝いたベージュ色の傘の色が、 とても上品に見えました。
ナヨタケ属
とっても素敵な情景が目に浮かびますよね。
渓流に沿ってずっと続く遊歩道。新緑に包まれた木々の間から漏れてくる光。流れる川の音をバックグラウンドにしてその道を歩いているとふと見かける小さなキノコ。そんなキノコを見かけるとふとカメラを向けたくなる。傘に焦点をあてて初めてその繊細な造形に気づき、そしてときめく。
こんな瞬間に立ち会いたいと思いませんか? (#^.^#)
旅行のガイドブックが美味しいお店や泊まりたくなるホテルを紹介するように、この本も奥入瀬渓流の魅力がたっぷり詰まったガイドブックと言えるでしょう。
最後に20年前の写真も載せときましょう、、、
今よりももっと縄文人顔をしているのに今更ながらに気づきました (笑)