「かながわ発きのこの新種展」に行ってきた

4月の頭、ちょうど厚木で仕事をしていたので、その帰り小田原まで出てもう一泊した。
目的は「生命の星・地球博物館」に行くためである。
生命の星・地球博物館では3月23日(火曜)から 2021年5月9日(日曜)までの間、企画展として

「かながわ発きのこの新種展」

が開かれているのでした。


唐突ですが「八重山諸島のきのこ」というサイトをご存じだろうか?
高橋春樹さんが作られているWEBサイトで、タイトルは「八重山諸島」となっているので、八重山諸島のキノコだけが載っているものと思いきや、、、高橋さんが石垣島に移住する前は神奈川県に住んでおられたこともあり、関東で見られる(関西でも見ることが出来る)キノコもたくさん掲載されているのです。

このサイトの中でも高橋春樹により記載されたハラタケ目菌類」というタイトルが付けられたページは僕が最も良く訪れるぺージで、図鑑には載っておらず「はて?これ何だろう??」というキノコを見つけた場合には必ずチェックしにいくという無くてはならないサイトである。
例えばこのキノコ

2020.06.20 神戸

とっても可愛いでしょ?
これは「キクモンクヌギタケ」というきのこであります。
2000年に高橋さんより新種記載されたきのこで、ホロタイプは生命の星・地球博物館に保存されています。

実はこのきのこ、どの図鑑を見ても載っていない。
形態的には「クヌギタケ属」だというのが分かるが、それ以上のことはどの図鑑を見てもわからず、ネットで検索してもなかなかヒットせず、絵合わせしようにも出てこないのです。
そんな時に検索するのが先ほど紹介した高橋春樹により記載されたハラタケ目菌類」というページなのです。もっともこのきのこの時は「なんだろう?」とTwitterにアップしたものを高橋さんが発見し、キクモンクヌギタケに近いと思います、、と教えてもらったのですが (;^_^A


また、今回の「かながわ発きのこの新種展」では僕がWEBサイトのページに穴が開くんじゃないかと思われるぐらい見てきた高橋さんのページのキノコたちの紹介が数多くされています。
例えばこのキノコ。

ヤミイロクヌギタケ

模型まで作られて特別に展示してありますが、これなどは「激レア」と右上のホロタイプのところにポップで書かれているように特に珍しく、姿かたちもとっても魅力的なキノコなのですね。

いつかは見たいキノコの一つで、高橋さんのページを眺めては「カッコえぇなぁ、、」と思っていたのですが、そのキノコが標本となって目の前にある、というのはなかなか感動ものでありますな。ただ、自分で実際にこいつを見つけたとしても「これはヤミイロクヌギタケだ!!」と判断できるかどうかは微妙なのですが(おーい w)。


また「かながわ発きのこの新種展」という名前のごとく

「神奈川県で採取されたキノコをタイプ標本として新種記載された」

キノコたちが沢山紹介されている。

新種きのこギャラリー


ここにはとっても重要な意味が込められている。

この生命の星・地球博物館を中心として「菌類ボランティア活動」がされており、月例調査としてこの博物館を中心とした周辺地域(小田原市入生田)でさまざまな菌類の収集し、調査・研究がおこなわれているそうです。
その様な活発な活動に支えられて、新種の研究、発表がなされている、ということなのです。
つまりは多くのアマチュアきのこ愛好家たちの足跡を集めて初めてできた功績だともいえるのですね。


そして今回の展示の目玉はまさしく「新種のきのこ」をまとめて紹介する、ということにあります。

「神奈川県ってそんなに新種が多いのかぁ・・・」

とこれを見た方は思われるかもしれません。

新種きのこ達


確かに特殊な環境や生態系を持った場所もあるかもしれませんが、ほとんどの新種たちはもしかしてあなたが良く訪れる場所にもあるかもしれません。

先に紹介したキクモンクヌギタケなどは神戸の公園で見つけたものです。
最近になって新しく発生したきのこでは無いでしょう。昔からそこで発生したごくごくありふれた種だった可能性が高い。そんな普通のきのこが2000年まで新種記載されていなかった、、という事実に注目してください。だとしたら、昨日見つけた「普通っぽい」きのこは新種かもしれない、という事なのですね。

つまり新種はここにも、あそこにも、そしてどこにでもある、、、という事。

ただし「新種」と認められるまでの道のりはそんな近くはありません。
「きのこの新種が発表されるまで」
というパネルには以下の様なステップが書かれています。

  1. 標本をなるべくたくさん集める
  2. 形態を観察し、DNA塩基配列を比較解析する
  3. 文献や標本の調査
  4. 記載文の作成・タイプ標本の指定
  5. 論文などで出版する

このステップは全て大変な作業なのですが、その中でも1の工程には多くの人の力が必要になってきます。
そこで活躍するのが「菌類ボランティア活動」なのですね。
これに参加され、活動されている方たちは「新種の発見」という遥か遠く、そして高くにあった夢の様な出来事を間近で体験することが出来るという幸運を得ている人たちといえるでしょうね、、僕も大阪から参加したいぐらいです。

そして、こういう取り組みは参加した人たちの意識を変えることでしょう。
きのこに対する姿勢や考え方が変わるだけではなく、きのこを通して知ることができる、植物の事や自然環境の事、そしてそれらが互いに助け合いながら生きているという自然のライフサイクルなどなど、、、

今回はページの制限もありますし、実物も観て頂きたいので、撮影した写真を数枚しか掲載できませんでしましたが、これだけではなくもっともっと沢山の新種のきのこたちが展示されています。
それぞれに発見時の「物語」があり、きちんとした「解説」が用意されています。
もちろん貴重な標本もです。

まだまだ新型コロナの感染者数がおさまってはおりませんが、、館内は入場制限をかけるために予約が無いと入館することも出来ない様になっておりますので、密になることはありませんので安心して観覧することが出来ます。
是非この機会に訪れてみてはいかがでしょう。


「生命の星・地球博物館」
WEBサイト: https://nh.kanagawa-museum.jp/
開催期間:2021年3月23日(火曜)から5月9日(日曜)
※観覧するには予約が必要ですので忘れずに!!

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