きのこはどうやって胞子を遠くに飛ばすのか?(13)

Twitterにて役に立たないきのこ氏「(流体力学的)きのこの仮説」というコラムを書いた、というTweetが流れてきた。
実はこれ、以前から気になっていたのですが、まったく手を付けられずにいました。そんな僕にとって「我が意を得たり」と思い読み進めて行った記事は、僕の想像の遥か3000m以上上空を飛んでおりました (@_@;)
この記事は役に立たないきのこ氏から許可を得て、画像、文章を転載させていただくことになったものです。また転載の際には僕なりの批評も付けてね、と言われちゃいましたので最後にちょこっと感想も付け加えておりますので、最後までお読みください。


究極の胞子噴射装置

【注意】
この話は科学に無知な筆者が付け焼き刃の知識を基に書いた、いわゆるエセ科学と同等の記事で、内容的な正確性は未検証です。

数あるきのこの中には胞子の詰まった袋状の器官を持ち、そこから胞子を空中に吹き出す方法を採るものがいます。これらの多くは袋に落下する雨粒の衝撃を利用するものですが、直接風を利用しないきのこにも流体力学は使用されているのでしょうか。

Fig.10-1

この手のきのこにはいくつかのグループがあり、大きく分けるとホコリタケやエリマキツチグリの仲間が属するハラタケ目、ツチグリの属するイグチ目に分かれますが、いずれもその手法は雨粒のぶつかる衝撃(運動エネルギー)を利用する点で共通です。[Fig.10-1]

そこでまずエネルギーの基本的な特性を振り返ってみましょう。エネルギーにはその形態を変えても総量が変化しないという「エネルギー保存の法則」があります。これを袋状のきのこにおける雨粒の落下から胞子吹き出しに当てはめてみると次のようなことが言えるでしょう。

Fig.10-2

この過程で起きるエネルギー形態の変化は、位置エネルギー→運動エネルギー→位置エネルギーとなります。仮にエネルギーの全量が無駄なく変換された場合、雨粒落下前の位置エネルギーと等しい位置エネルギー(高さ)を胞子が得ることになります。しかし途中で摩擦抵抗等を受けると、その一部は熱エネルギーなどに置き換わってしまい、最終的に胞子が得る位置エネルギーは減少してしまうのです。[Fig.10-2]

Fig.10-3

きのことしてはできるだけ遠くに胞子をばら撒きたいわけですから、可能な限り無駄なく運動エネルギーを胞子の吹き出しに利用できるのが理想です。そこで今度は胞子の吹き出しまでの間にどんな「無駄」が生じるのかを考えてみましょう。

雨粒の衝突によって発生した衝撃は閉じた袋の中で圧力を上昇させ、流体となって唯一の逃げ口である袋の穴を通過します。この時、袋の中と穴の間には大きな径の差ができるのですが、流体においては流路の径に急激な変化が起きると、流れにはく離が発生し、運動エネルギーの損失が発生します。これは圧力損失と呼ばれ、穴に入る部分で発生するものを入口損失、反対に外に出て径が急に大きくなった場合に起きるものを出口損失と言います。[Fig.10-3]

Fig.10-4

運動エネルギーの損失はすなわち胞子を高く吹き上げられなくなることにつながるので、可能な限り抑えたいのですが、その方法としてよく用いられるのが径の変化を緩やかにすることではく離の発生を防ぐことです。具体的にはラッパの口のような形状にすることで、できる限り口の部分を長く取って径の変化する角度を小さくすることで、出口損失を減少させることができるのです。[Fig.10-4]

理屈が長くなってしまいましたが、ここで実際のきのこを見てみましょう。袋状のきのこの穴部分を見るとその形状は様々ですが、袋状きのこの最大勢力であるヒメツチグリ科のきのこでは冒頭の写真のエリマキツチグリにあるように、穴の部分がはっきりと尖っているのがわかります。

Fig.10-5

同じヒメツチグリ科のコフキクロツチガキになると、さらに尖り方が極端になっており、明らかに出口損失を抑えようとする方向に進化していることがわかります。[Fig.10-5]

ちなみにこのように穴に向かって径が細くなって来ると、そこに流れ込む気流にはさらに別の効果が働きます。もう何度も取り上げているので図までは載せませんが、流速が上がって反対に圧力が下がるというお馴染みベルヌーイの定理です。圧力が下がることで袋の中に詰まった胞子が吸い出されるわけですから、実によく計算された仕組みであると言えるでしょう。

これが流体力学的きのこの第10仮説、袋状になったきのこの一部は、口の部分を尖らせることで雨粒の落下による運動エネルギーを無駄なく利用し、より高く胞子を吹き上げることが可能になっているというものです。いかがでしょうか。


【この仮説における問題点】

  • 袋状のきのこの中には、口の部分が尖っていないものも多く、尖っていることの優位性が立証しにくい
  • コフキクロツキガキでは確かに口部分が極端に尖っているが、袋との境界部分では逆に角度変化が急になっており、この考察に従うと大きな出口損失を生じ、胞子散布には不利になる可能性がある

編集後記

さて、今回のコラムはいかがでしたでしょうか?
ツチグリの仲間は雨粒を利用して胞子を拡散する、というのは良く知られている話ですが、何故雨粒を利用しているのか?という根本的な疑問が残りますし、それがどのような経緯で拡散に寄与しているかも知りませんでした。確かにあの小さな穴が、小さいが故の利点を生かして胞子を放出しているのだ、というのがこのコラムをもって「あぁ、こうなっているんだ」と想像することができますね。もちろん別の説もあるかもしれませんが、とっても有力な説だと思いますね。


【参考文献】(敬称略)

『流れのふしぎ』遊んでわかる流体力学のABC
日本機械学会編 石綿良三・根本光正著(講談社ブルーバックス)

『鳩ぽっぽ』初心者のための航空力学講座
Oki (https://pigeon-poppo.com)

『機械設計エンジニアの基礎知識』流体力学の基礎を学ぶ
MONOWEB (https://d-engineer.com/monoweb.html)

『楽しい流れの実験教室』
日本機械学会 流体工学部門 (https://www.jsme-fed.org/experiment/index.html)

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