ガンタケとキノコちゃん

先日の観察会。
きのこはとっても少なかったが、それでも10人あまりの目があれば、そこそこきのこは見つかるものです。
特に「こどもの目」はすごい。
まるでキノコの声が聞こえるかの様に、大人たちには見えないキノコを見つけることができる。
この日来ていたのはOさん一家(男の子2人)とYさん一家(女の子2人に男の子1人)の5人の子供。その子供たちの中の1人(女の子)は幼稚園とかでも「キノコ好き」で通っているらしく、友達からは
「キノコちゃん」
と呼ばれているそうな。
(これはキノコ好きあるあるで、30歳未満のキノコ好き女子はもれなく「キノコちゃん」と呼ばれているのだ。ただし、30歳以上は、、、はて?)

そんなキノコちゃんの嬉しくなる名言がある

「キノコはな、食べたらあかんねんで!」

これは、キノコを食べる親と兄弟達に向かって言っていたのだが、僕たちの様な撮り菌達が聞いたら涙を流すほどのお言葉である(笑)。

さて、観察会も3分の2ほどの行程が済んだ頃、とっても綺麗なキノコが見つかった。
これである。

これを

一見ノーマルテングタケにも見えるそのキノコは、テングタケとするにはいくつかの違和感がありました。

一つには傘のイボの色。

このイボの色がやや茶色みが強いのです。
テングタケも真っ白とはいい難いですが、どちらかと言うと白が強いのに比べてこいつは茶色みが強いのが分かります。

また傘に赤みがさしている部分が見て取れます。
これは分かりにくいですが、種を見分けるのに見逃してはならない特長なのです。

傘に赤みがさしているのが分かるだろうか?

そして柄の部分を見てみましょう

柄の下地の部分はやや赤みをさしている

ここもに分かりにくいのですが赤みがさしているのが確認できますね?
これは単に老化して茶色くなっているわけではなく、柄の地色が赤いのです。

この二つの特長
・傘のイボが茶色
・傘や柄に赤みがさしている
というところからテングタケではなくガンタケだと思われる。

ここで先程のキノコちゃん、これを見て

「あ、ガンタケだ!」

と大人顔負けの識別能力を発揮し、周りにいたものが「おぉー」という驚きの言葉を発したときにはすっかりと鼻を膨らませていた(笑)

最後の僕が写真を撮り終わり「抜いていいよ」というのを待って愛おしげにそのキノコを抜き、キノコが潰れない様にペットボトルの上半分を切り抜いた入れ物に大切にそのガンタケを刺したのであった。

「なにそれ、、流石やなぁ、、」

と僕がまた褒めるとまた自慢気に鼻が大きく膨らむ(笑)。
余程キノコが好きなんだなぁ、、と感心するおじさん。


そして同定会のテーブルにもそのガンタケは並べられた。付箋で「ガンタケ」と付けられたその姿はキノコちゃんが大切に持っていただけあって綺麗な姿のままである。

一通り同定を済ませ、リーダーからのキノコの説明が始まる。
僕はキノコ達の黒バック写真を撮るために、特に綺麗なものを選んで別の机に運ぶ。

キノコの全体を撮り、傘のアップ、ヒダのアップ、柄のアップ、そして半分にカットして撮ることも忘れない。撮り終えたら説明しているテーブルまでそいつらを戻して、ものに寄っては切った断面を見せながらリーダーは説明を加えられたりするのであった。

切断されたガンタケ

そのガンタケも切られた後の断面を見せて、その特長である赤みがさした柄の部分を説明に加えたりしていた。

すると、それを見たキノコちゃんの顔がサッと変わった。

「あれ、ガンタケが切れられてる〜」

隣に居たお母さんにそう訴える。
お母さんは切ったのが誰か知っていたので苦笑いしたままでいる。

「なぁなぁ誰が切ったん?」

キノコちゃんが誰にともなく聞く
周りの大人達はみんな苦笑いしながら、素知らぬ顔でリーダーの説明を聞き続ける

「なぁなぁ誰が切ったん〜?」

説明が一段落するたびにキノコちゃんの声が響く。
さすが関西人、こういう「間」見事に捉えてみんなの視線を集める(笑)

「なぁなぁ誰が切ったん〜」

タイミングを見計らってまた聞く。
周りの大人達もだんだん楽しくなってきているようだ。

「ねぇ〜ねぇ~誰が切ったん〜」

結局最後まで誰からも教えられず、説明会も終わり、キノコバスケット作りとなる。

キノコバスケット

綺麗に盛り受けられるキノコ達。
写真を撮る面々。

僕もアングルを変えて何枚か撮影したのちに撮影道具を片付けているとキノコちゃんがテクテクテクと寄ってきて、こう聞いたのだ。

「なぁなぁどうやって切ったん?」

「うん、カッターで、すーーーーーっ、とね!」

(誰がチクったな 笑)

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