イボテングタケを食べてみると、、

先日Twitterで「 乾燥イボテングタケ中毒レポート 」から始まる一連の中毒の症状と体の状態の変化をNさんという方が投稿していたのでとっても興味深く読ませていただいた。

実は去年のこと、とある地方の、とある人物(仙人と呼ばれているよ w)が、この地方ではイボテングタケを食べるよ、、と教えてくれたのだ。
その食べ方もイボテングタケ(またはテングタケ)を4分の1ぐらいに切ってホイル焼きにするとか何とか、、、

もちろん僕は食べたことがないのであるが、イボテングタケは少なくともベニテングタケよりも毒性が強く、絶対に食べるべきではないキノコである。

しかし、、だ、仙人はそんなキノコを食べるのだ、という。
もしかして仙人はある特別な酵素を持っており、イボテングタケの持つ毒成分を分解できるような「術」でも身につけているのだろうか、、なんて考えてはいたものの、ちょっと食べてみたい、というマゾヒスティックな感情も少しあったことをここに告白しておく(笑)。

では、Nさんの投稿を見てみましょう

ちなみに、NさんにはTwitterの投稿を記事に使わせてもらうことの了解は得ております。
ではでは最初の投稿から、、、

乾燥イボテングタケ中毒レポート。午前9時半家に誰もいないことを確認。小指の指先程しかない幼菌のカサを口に含む。乾燥シイタケのような匂いと謎の甘さが口いっぱいに広がり気持ちが悪い。イボテン酸はおいしいとあるが乾燥状態では特にうまみは感じられなかった。

イボテン酸はいわゆる旨味成分のかたまりみたいなもの、というのを聞いたことがあります。ただし、イボテン酸自身が毒成分でもありますので、旨味を取りますか?それとも毒にあたりますか?という究極の選択となりますな(笑)

食後15分後 酷い腹痛と嘔吐感を感じてトイレにこもり、あらかじめ用意しておいた砕いた木炭を水で流し込む。便座に座って1分もしないうちに頭をゆすられるような感覚を覚え、視界のゆがみを感じる。

「食後15分」というのは毒の回り方としてはかなり早い方だと思います。しかしNさんはあらかじめどのように中毒するか?ということを予想していたのでしょう、変な言い方であるが、中毒するための用意は万全にされていたということですね。

食後17分後、メモを取り出して書いておいた行動を試してみる。縮瞳…視界のゆがみでよくわからない。手を握る…握ると指が震えてうまく力が入らなくなる。立ち上がる…無理。この時点で異常な発汗に気が付き、脱水が怖いので吐きながらでも水を飲む。

ここで「日本のきのこ」(ヤマケイ版)に載っているベニテングタケの中毒症状を改めて見てみることにしましょう。
※イボテングタケもベニテングタケと毒成分は同じなので
例のごとく箇条書きで書いてみます

  • 食後15~30分して、 短い時間うとうととしたあと
  • 酒に酔ったようになる
  • 筋肉のいちじるしいけいれん
  • 精神錯乱
  • 幻覚
  • 視聴覚障害など
  • 4時間以上興奮状態が続いたあと
  • 深い眠りにおちる
  • 嘔吐する程度で死ぬことはめったにない
  • 24時間以内に回復する

Nさんはもちろん食べるとこの様な症状になることはあらかじめ理解して食べた、というのが上の投稿で読み取れる。

メモを見て口内の石鹸による洗浄と乾燥を思い出し、石鹸が無かったのでとりあえずティッシュを口に突っ込む。気持ち悪いのでティッシュはすぐに出してしまった。食後22分後、激しい自己嫌悪に襲われる。視界がやけにピンク色になっていることに気づき、それが不快で嘔吐する吐瀉物が黒い、炭か、、、

かなり壮絶な体験である。
視界がピンク色ということは視神経が麻痺しているのだろうか?
また、「自己嫌悪に襲われる」というのは、精神が錯乱しているから、なのか。

食後恐らく25分程度、時計が読めず時間の確認ができない。オレンジ色に見えているトイレットペーパーの芯からタコの足が出ているのを見る。恐らく幻覚を見始めていた。何故かタコの吸盤に吸い込まれる。自宅の庭が見えて混乱するが、舌を噛むとトイレに戻ってくることができた。

25分後ぐらいから幻覚が見えてくるというのは 視聴覚障害の影響なのか、それとも精神が錯乱しているせいなのか、、、しかし幻覚性のキノコを食べた人の話を聞いたことがあるが、イボテングタケもかなりやばいキノコであることは確かである。

腹痛が腹を締め付けるような感覚に変わる。幻覚はまずいと思い目を閉じて水を飲み、とにかく吐いていたと思う

食後50分後、背中の痛みで目が覚めて自分が気絶していたことに気づく。 脱水のせいか酷くだるさを感じていて立ち上がれない。とりあえず水を飲む。視界はまだ薄黄色いが、だんだん意識にかかったモヤが晴れてきたように感じる。体が冷えるだろうなと思いながらこのままタンクに背中を預けて目を閉じてみる

目を閉じたあと、気絶状態になっていたようです。確かに「深い眠りに落ちる」というのが症状の一つとしてあります。
ただ、50分後ですのでもしかして、一種の自己防衛反応で気絶してしまったのかもしれません。

幼稚園で冬眠中のカエルを掘り出したことや、中学時代の先生のことを思い出す。 吐き気でまた吐く。全身に疲れを感じて意識がほとんどなかったように思う

気づくと飲み込んでから2時間経過していた。だるさはあるが吐き気は落ち着いたのでトイレから出る。嘔吐用の桶を用意して部屋に戻り、とりあえず座布団に座る。部屋のものすべてが緑に見えてくる。水槽は真っ黒でカーテンはピンク。茶色いはずの机も黄緑色に見え、意味が分からない

幻覚を強く感じたので少しでも落ち着こうと目を閉じて瞑想してみる。吐き気はすでになく、閉じたはずの視界もやけに明るかった。自分全体が光のような不思議な感覚を覚え、急に暖かさを感じる

午後4時、寒さで目が覚めた。ファンヒーターの運転延長のランプが点滅して消えている。脱水のことが頭から離れず、水を飲む。視界に異常もなく吐き気もない。布団に入って寝る。

午後6時、夕飯で起こされるが体調がすぐれないので食べなかった。下剤を飲んでみる。午後6時半頃、下剤が効いてきたのか便意を感じる。トイレで水を出し続ける。ひとしきり出し終わったので水を飲んで寝る。翌日、特に吐き気や腹痛はない、朝食に粥を食べて寝る。

投稿ではどれぐらいで回復したのかは分かりませんが、少なくとも24時間以内には回復しているのがわかりますね。
この辺り、図鑑の「24時間以内に回復する」というのは間違いないみたいだし、「嘔吐する程度で死ぬことはめったにない」というのも正しいようですね。
ただ、あまり量を取りすぎるとこの症状はさらに悪化するのは間違いないでしょう。

イボテングタケ、それでも食べますか?

撮影:39さんに提供してもらいました

では毒成分を改めて見てみましょう

毒成分はイボテン酸、ムッシモール、ムスカリン。イボテン酸及びその分解産物ムッシモールは、中毒をひき起こす主要物質で、殺ハ工作用もある。ムスカリンは1869年、ベニテングタケから初めてきのこ毒成分として抽出さ れたが、含量も非常に低く(生きのこ当り0.00025%程度)、このきのこにおいては主要な毒成分ではない。

「日本のきのこ」(ヤマケイ版)

これを見る限り主な毒成分はイボテン酸である。それがムッシモールに変化することによって中枢系神経に作用する、とされている。
またこのイボテン酸はテングタケ科のキノコに多く含まれるのだが、テングタケ(イボテングタケ)に含まれるイボテン酸の量はベニテングタケの10倍と言われている(Wikipedia:イボテン酸)。
なので、イボテングタケを食べる、というのはかなりリスキーなものだと言える。

もちろん、イボテングタケを食べる、という人は仙人以外では聞いたことがない(笑)。
そしてこの投稿を読んで「やっぱりダメなんだ」と思った人は沢山いると思う。
単に図鑑の方に症状だけ載っているよりも、この様に実体験を時間をおって生々しく書いてあるものを読むとその恐ろしさは身に迫る臨場感がある。

それともう一つ言っておきたいのはNさんはこの症状の事をある程度見越して行っているということ。
そして少なくとも誰にも迷惑をかけていない、というのがポイントである。
死んでしまったり、救急車で運ばれたり、家人に心配をかけてしまってはチャレンジの意味がまったく変わってしまう。

なので、武勇伝的なチャレンジはやめたほうが良いし、キノコの知識がない人が「食べられそう」と言って無鉄砲なチャレンジするのは最も危険な行為だと言っていいだろう。

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