ハルシメジを分解する

梅の木の下に出ているハルシメジ

思いもよらない所から出ていました。

「梅」の樹下だったので「思いもよらない」わけではないのですが、何回かそこに行ったことがあるのですが、今まで一度も出てたためしが無かったところでした。

まず最初に目に飛び込んできたのがこの個体、、美しく、スタイルも抜群!!

すかさずカメラを取り出し、その場に寝転ばんばかりのスタイルになり、一生懸命シャッターを切っておりました。
液晶の中に写るこの個体の姿を確認し、少し悦に入っておったのですが、ふと少し離れたベンチを見ると、怪訝な面持ちでこちらを凝視するオジサンの顔が、、、

すかさず「タンポポの花を撮っている」体を取る僕でしたが、「何で花を撮るポーズを取らにゃいかんのだ、、」と思い直してはみたものの、一般の人から見れば「キノコを撮る」と「花を撮る」じゃあ、ちょっと「怪しさのレベル」が違うのですよね~これが(笑)

まぁそんな視線を見て見ぬふりして、他にないものかと探してみる(もちろんタンポポ探しの体で w)。
しかしこの一本と、その近くに老菌が2本、そして幼菌が3本ぐらいしか確認はできませんでした。そいつらは菌輪を描く、というほどでもありませんが、一本見つければその周りに何本か見つけることができる、これハルシメジの鉄則ですな。

あとハルシメジに関してはチエちゃんがこんな記事を一ヶ月前ぐらいに書いておりましたな。

「ハルシメジの知られざる謎」

ハルシメジの知られざる謎

この中でハルシメジの宿主との共生の特徴が列挙されています。

  • 植物根の皮層細胞間にハルティヒネットを形成しない
  • 宿主である植物の根の根冠細胞を破壊し
  • そこを菌糸で覆うことで(寄生的に)栄養を受け取っている可能性がある
  • 子実体を発生させる前後に植物の根に菌鞘を形成
  • 12月~2月末くらいは菌鞘を形成しない

またハルシメジの共生型は一般的には「片利共生」であると言われています。
これについてWikipediaで調べてみると、、、

片利共生(へんりきょうせい、Commensalism)は、共生の一形態で、一方が共生によって利益を得るが、もう一方にとっては共生によって利害が発生しない関係である。

Wikipediaより
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%87%E5%88%A9%E5%85%B1%E7%94%9F

つまり人間で言うと、、、

薄幸の女、ウメ子はヒモであるハル男に自分が住んでいる4畳半のアパートに住み着かれ、食事の世話、掃除洗濯などの家事も甲斐甲斐しく行い、彼のために一生懸命スーパーで働いて貢ぐのであるが、ハル男からなんの見返りもなく、ただただ自分自身の身を削られて身も心もボロボロになっていくのであった、、、(涙)

そんな関係ってことでいいかな?(笑)

ハルシメジを分解する

その前にハルシメジの特徴を列挙しておきましょう。

北陸のキノコ図鑑(新版)ではハルシメジを「ウメハルシメジ」と「ハルシメジ(シメジモドキ)」に分けております。
ウメハルシメジの学名は「Entoloma sepium(Noulet & Dass.) Richon & Roze」でハルシメジの学名が「Entoloma sp.」となっており括弧書きで「E. clypeatum(L.)P.Kumm.」となっております。
ただし、ここでは梅の木の下に出ていたので、ウメハルシメジの特徴を列挙します。

『環境』
発生5月上~中旬、梅林下に群生

『傘』
経3~7cm
円錐形=>低円錐形=>中高扁平
幼時から縁部凹凸あり成熟して波打つ
表面粘性なく、暗帯黄褐色繊維状で周辺淡い

『柄』
4~7x0.7~1.5cm
円柱形~下方やや太く中実~中空
表面汚白色で汚黄土色
条線が下方ほど明瞭で密に覆い、時にねじれあり

『肉』
白色で薄く
柄部の表皮近くに淡汚黄土色条線あり
変色性なく、無味でほとんど無臭
グァヤクチンキ反応は青緑色変

ハルシメジ(梅の下)

傘の径は7cmほどでした。
発生は4月の中旬ではありますが、今年は暖かかったせいもありますし、結構あちらこちらで「ハルシメジ見つけたど~」という声は聞こえてきておりますので、これぐらいの時期に出るのは問題ないでしょう。

こやつは既に成菌と呼んでいい状態ですので、「中高扁平」という状態になっているのが確認できるでしょうか?また、傘の表面は暗帯黄褐色&繊維状ですね。

また縁部の波打ち方はハルシメジの大きな特徴です。

この「縁部の波打ち」というのはウラベニホテイシメジなどもそうなのですが、出る時期、場所などを考えると、ハルシメジに絞られて来ることになります。

ハルシメジのヒダ

ヒダは典型的なイッポンシメジ科の特徴でもある薄~い紅色をしております。

こうやって裏返したら、イッポンシメジか、ウラベニホテイシメジが、クサウラベニタケかわかりませんなぁ~(笑)
採取した時はもっと綺麗な薄紅でしたが、これは採取してから4時間ほど経過したもの。

ハルシメジの切断写真

切断してみた。
肉が中実なのはよく分かりますね。
それと柄の下方やや太くなっておりますね~えぇ感じです。

これらの特徴からこの個体はほぼウメハルシメジだと思われます。
 

他のハルシメジって??

キノコを始めた頃、「ハルシメジはバラ科の植物の下に出ます」と言われたのを覚えている。

「バラ科???」

頭にはてな「?」が最低3つは浮かんだが、バラ科には一般的なバラ、だけでなく梅や桜などもバラ科なのだそうな、、、なんか納得、いかないよね?(笑)

でもいいのです。

バラ科だと、偉い先生が言うておるのだからバラ科なのです。

そんなバラ科の樹下にでるハルシメジ。
僕はまだ梅の樹下でしか見たことがありません。
実は先週の土曜、日曜と駆けずり回りましたが、いくら桜の木の下を探しても出会うことが叶いませんでした。

そこで、、、

菌友さんたちから画像をお借りしてきました。
この場を借りてお礼を言わせてもらいます、有難うございました。

ではでは、まずはノイバラの下に出ていたハルシメジの仲間

ノイバラハルシメジ(写真提供:黒田さん)

え?ハルシメジ??
という感じではありますが、恐らくハルシメジの仲間だと思われます。

ただ、見た目、3つの点でウメハルシメジとの違和感があります。

  1. 傘の径が小さい
  2. 傘の色が褐色に近い
  3. 柄が長い

もちろん個体差もありますので、もう一枚の提供写真を見てみましょう。

ノイバラハルシメジ(写真提供:黒田さん)

こちらの方がビックリしますなぁ(笑)
この傘の径に比べて柄が思いっきり長いのがわかります。
梅の下のハルシメジに比べて柄は長い(4~8cm)のですが、ここまで長いのはなかなか見られないでしょう。

これは「日本のきのこ」(ヤマケイ)図鑑に出ているノイバラハルシメジなのだと思われます。

図鑑ではこんな感じで書かれています。

ノイバラの下に発生し、傘が小型暗色で吸湿性が強いものは 「E. clypeatum f. hybrijum」(ノイバラハルシメジ:新称)である。なおこのきのこについては旧版では、シメジモドキという名称で掲載されていた。

となっております。

 

次に桜の下に出るハルシメジを見てみましょう。

桜の樹下のハルシメジ(写真提供:小林さん)

これはウメの下のものよりノイバラハルシメジの方に似てますね。

柄はそれほど長くなさそうですが、傘の径が小さいこと、そして傘の色が褐色に近い、という点に置いては梅の下に出るハルシメジとは形態が異なります。

梅の下に出るものは「ウメハルシメジ」で野茨の下に出るものは「ノイバラハルシメジ」。

じゃあ桜の下のんは?

となりますが、果たして桜の下にでるやつはどうなのでしょうか????

 

そして耳寄りな情報をくさびらじかる先生から、、、それは

「ニレの下にもハルシメジでるでぇ~!」

とのこと。
ネットで調べるとハルシメジは「バラ科またはニレ科の樹下に出る」と書いてあるページが何個かあります。

図鑑の方には書いてるのがあるのかな?

で、実際にその画像を貸してもらえましたので、ここに貼っておきますね。

ニレの下のハルシメジ(写真提供:くさびらじかるさん)

これ、まだ幼菌なのですが、少しノイバラハルシメジとは雰囲気が違うようです。

では傘の裏を見てみましょう。

ニレの樹下のハルシメジ(写真提供:くさびらじかるさん)

ウメハルシメジの傘の裏のような「薄紅色」ではない様子、むむむ。

そして成菌の写真も貼っておく

ニレの樹下のハルシメジ(写真提供:くさびらじさるさん)

しかしこの傘の中高扁平な雰囲気はまさしく「ハルシメジ」の雰囲気を漂わせていますね。しかしウメ型でもなく、ノイバラ型でもありません。まったく別の種類の様な感じです。

さて、アナタはいったい何ハルシメジなんでしょう?それともハルシメジ似の単なるイッポンシメジ属?

まだまだ解明はこれからなのでしょう。
 

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