図解きのこ「ツバキキンカクチャワンタケの生活サイクル」
キノコ観察会に参加し始めた頃のこと。
公園から少し外れたハイキング道へと向かう道の途中にある木の下へとそそくさと集まってから、リーダーがこういう風に言うのであった。
「さて、今から小さいキノコを探してくださいね~」
へ?この木の下で?これって椿だよなぁ、、、
そう思いながら、ゴソゴソと葉っぱを除けてキノコらしきものを探すのだが見つからない。
そらそうだ、まだキノコ目が養われていない僕に「そいつ」が見つかるワケなどなかった。
まぁしかしなんだな、、いい大人がツバキの木の下に集まってゴソゴソと何かを探している姿はやはり「異様」としか言いようがないのだが、言わばこれが「きのこびとのあるべき姿」と気づくのにそんなに時間はかからなかったのだ(笑)
前年落ちた(ここ重要)ツバキの花から出てくるキノコにツバキキンカクチャワンタケというのがあります。
「椿菌核茶碗茸」
漢字で書けばこうなるのですが、「椿」の花に、「菌核」をつくって、そこからキノコ(子実体)を作り出す「茶碗」の様な形をした「キノコ」
ということになります。
それが上のイラストのキノコ。
菌核(黒い物体)から柄が延びてきて、茶碗型のキノコになっているのがわかりますよね?
ツバキキンカクチャワンタケは前年に落ちたツバキの花の跡から出てきます。
ツバキの花から?
なんだか不思議な気がしますが、仕組みはこんな感じです。
まずはチャワンの表面から胞子を飛ばします。
その胞子は何かの刺激(例えば風であったり、雨であったり)がツバキキンカクチャワンタケの傘の表面に与えられた時に、ふわっと胞子を飛ばします。
もちろん人間が葉っぱを除ける時に傘に触れて胞子を拡散する、なんてことも当然ありますよん♪
飛んでいった胞子のあるものは、そのまま地上に落ちたり、どこか遠くへ飛ばされたりするのですが、そのうちのいくつかは今咲いている花の上に到達するのです。
到達した胞子はツバキの花に感染します。
感染した花は「菌核病」という病気にかかります。
ツバキの花をよく見て下さい。所々で茶色く(褐色化)なっている部分を見つけることができませんか?
これは花が老化しているのではなく、ツバキキンカクチャワンタケの胞子によって茶色くなっているのですね。
ツバキキンカクチャワンタケの胞子に感染した花がやがてポトリと花ごと落ちます。
これは病気によって落ちる(または早まる)のではないようです。
ちなみに同じ様な花の形で、同じ様な時期に咲くサザンカは花がバラバラに散るようにして落ちていきます。またサザンカからもツバキキンカクチャワンタケが出た、という話はありますが、果たしてどうなのでしょう?
地面に落ちた花の色はしばらくすると枯れていき、茶色くなっていきます。
この時のツバキキンカクチャワンタケの菌糸はずっと生き続けて感染した花をベースにして「菌核」を作ります。
これは言わば子実体を発生させるための栄養源とか食料の貯蔵庫みたいなものでありまして、その中には花の骨格だけを残して作り上げられた菌糸の肉体、という表現はどうでしょうか?(笑)
そして冬の寒さで、我々が打ち震えている2月。
ツバキの花はそんな寒さの真っ最中に花を咲かせます。
そしてツバキの開花と時を同じくして菌核からニョキニョキと延びてくるものがあります。
それが、ツバキキンカクチャワンタケそのものです。
地中に埋まるように形成された菌核から柄がでて、茶碗型の傘を開いていきます。
そしてじっと待っているのです、風が吹くのと、人が揺らすのを(笑)