乙女の玉手箱シリーズ きのこ

『乙女の玉手箱シリーズ きのこ』 とよ田キノ子 監修

おっ、乙女の玉手箱シリーズ!宝箱じゃない、玉手箱!この微妙に古風で魅惑的な響き!

かつては生き物の本と言うと犬猫といったペット、さもなくば教育モノか図鑑くらい、といった窮屈さを感じさせるもんだったけど、近頃は、なんだかよくわかんないマイナーな生き物の本も出るようになった。しかも多様な視点で取り上げられるようになって。たとえばそんな生き物たちのフォルムだとか配色だとか、デザインという観点から……そんな流れで、キノコにもこんな本が出版される日が来たのだなぁ、などとちょっと感慨深く。

知る人ぞ知るキノコ女子にして重度のキノコ病患者・とよ田キノ子さんの手による、ビジュアルに特化した「きのこカタログ」。編集がすこし変わってて、五つの動詞をテーマにして章が立てられている。

雑貨や服飾、切手など、きのこアイテムが一堂に会する『愛でる』
日本全国のきのこスポットを巡る『旅する』
意匠やシンボルとしてのキノコ、生き物としてのキノコ、本・写真・映画……『調べる』
ホクトぉぉぉぉ!エリンギぃぃぃぃ!『食べる』
キラ星のごとく活躍するきのこアーティストたち『発信する』

おお、この五つの「Do」に込められたアクティブなパワー!俺が追い求めてきたのはこれだ!キノコ雑貨を集める、キノコ写真を撮る、キノコオブジェのある公園を探索するなど、どう考えても無駄なことにだって、実はメチャメチャ意義があるような気が俺もしてきた!
現代というカチコチと凝り固まった世界に、自分なんかは窮屈さを感じるわけだけど、こーいう感性に触れるとノーミソに風穴を空けられるというか、ブチ抜かれるというか、はっはー、なんだか元気が出てくるねー(なに言ってんだか)。

さてさて、この本でもうひとつ注目すべきはデザインかな。五つの章はそれぞれ橙、緑、青、ピンク、紫を基調に構成されていて、そのカラフルさがキノコをかわいくポップに演出している。気分がウキウキするね。それでいてシュールで妖しい空気もふわっと。レイアウトもよく練られているみたいだし、印刷もバッチリ。

個人的にスゴイ良い出来だと思うんだけど。これを機にもっときのこコレクターやきのこクリエイターが増えるといいな。

ただ、この『乙女の玉手箱シリーズ』というのが、まだ『きのこ』の他に『マトリョーシカ』しか出てないのが気になる。きのことマトリョーシカ……いくら玉手箱に入れるったってマイナーにもほどがある。きのこの名誉のためにも早く仲間を増やしてくれい。

それにしてもグッチのきのこスカーフが素敵すぎる。

「月刊きのこ人」(こじましんいちろう)2012年02月2日に掲載分を再掲載

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