森に住む、小人たちの灯火
今日の天気予報は、晴れのち雨。
朝から水分を含んだ空気が肌にあたる。
「今日はきのこがありそうだな~」
私の勘がつぶやいた。しかし、これといった根拠はない。
今日は私と父の二人できのこを探しに出かけた。父はもともと魚が好きだったのだが娘の影響できのこ好きに…
ちなみに分類は「食べ菌」かな(笑)
目的地に到着。この場所は一度しか訪れたことはない。
道のない森の中を進んでいくと突然シイの森にたどり着く。大きく太ったシイの木は両手をいっぱいに開いても届きそうになかった。この木からすると私はちっぽけで小さな生き物なのかもしれない。
シイの森の中には赤色や黄色、大きいものや小さいもの…様々なきのこを目にすることができた。
シイの他には、タブノキやヤブツバキなどの一年中葉を落とさない(新芽が生える頃、一斉に葉を落とす)常緑広葉樹と呼ばれる植物達を見ることができた。この環境から森の歴史を感じることができる。ここは生き物達にとって安定した森なのだろう。
さて、話は戻すが、このシイの森にはいくつか倒木が見られた。今にもきのこが生えてきそうな倒木ばかりだ。
あたりを細かく見てみる。すると、釣り鐘型のきのこを発見した。周りにも何本か生えている。
「なんだろう…このきのこ。見たことないな…」
もう少し特徴を観察してみる。
・全体的にオリーブ色のような、渋い色をしている。
・全体の大きさは3センチほどで小型のきのこである。
・ヒダの部分に黒っぽい縁取りがある。
・シイの倒木に生えていた。
今まできのこ図鑑を見てきたが、私の記憶の中で一致するきのこはなかった。
「あの「黒っぽい縁取り」は特徴があるな…あんま縁取りを持っとるきのこはおらんから見つかるとおもうんやけどなぁ…」
日ごろ持ち歩いている図鑑を最初から見直す。
ページを一枚。また一枚とめくっていく。すると、あるページが目に入った。
「これ、もしかしたら光るかもしれない…」
家の中にある布団にくるまり光が差さないようにまっ暗闇にした。何も見えない。自分の手がどこにあるのかも分からなかった。しかし、目が慣れてくるとやわらかい光が私の手の場所を教えてくれた。その光はきのこを中心に光っていた。シイノトモシビタケだと確信した瞬間だった。
「ぱぱ‼やっぱりシイノトモシビタケやった‼夜見に行こうよ‼」
「うそ!光ったと!?」
このとき、とても夜が待ち遠しかった。
きのこを見ながら、外の景色を見ていた。時間はゆっくりと、だんだん日が沈んできたように思えた。だが、天気予報は当たっていた。大雨が降ってきたのだ。
「今日はやめといたほうがいいんやないと?」
母は心配そうに話す。
「まぁとりあえずいってみて、厳しそうだったら引き返そう。」
私と父は、再びあの場所へと訪れた。しかし、雨がだんだん強くなっているように感じられた。
現地に到着し、実際に見に行くことにした。今日の昼間にシイノトモシビタケを見たあの場所へ…
すると、あちらこちらに光るものが見られた。ひとつはシイノトモシビタケ。もう一つは?落ち葉??
そう、シイノトモシビタケ以外にも光るきのこが見つかったのだ。落ち葉を拾うと、かすかに光っている。後々調べてみると「カレハヤコウタケの一種」であることが分かった。
シイノトモシビタケはそのなかでも一番の明るさ。普通のコンパクトデジカメで光が確認できるくらい…
まだまだ謎多きシイノトモシビタケ。
今夜もやわらかい光を出しながら森の中を照らしているのかな。