毒キノコ事件簿 その2
「美味しそう!」
と言う言葉を良く聞く。
これは今まで食べたことある「経験」がそう思わせるわけですな。
学校の帰りに食べたコロッケはめっちゃ美味しかった!
などと言う経験は、過去の経験をベースにして、美味しかった「コロッケ」という映像(画像)を見ただけで、人の感情は「美味しそう」という方向に向かわせるわけなのですね。
キノコでもそれは例外ではなく、過去に食べて美味しいと思ったキノコを目の前にすると「美味しそう」と思うのは自然の流れである。よって食べたことのないキノコ(例えばタマゴタケなど)を目の前にしても「美味しそう」とは誰も思わないであろう。特にキノコは毒を含むものが多く、タマゴタケなどで言うとその傘の赤い色により(人間は赤色を危険なものと認識するようだ)初めての見た人は「食べよう」とは思わないだろうし、ましてや「美味しそう」という感情など湧かない、、、と思う。
・・・と言うことで、この「毒キノコ事件簿 その2」はこの「美味しそう」という「経験」が、いかに危険であるか、ということを教えてくれるものであるということを良く肝に銘じて読んで頂きたい。
毒キノコ事件簿(栃木県日光)
では事件のURLを以下に示します。
「毒キノコ食べ男性4人食中毒 日光、食用種と間違え(産経新聞」
http://www.sankei.com/life/news/160809/lif1608090040-n1.html
記事が無くなったら駄目なので引用もさせていただく
栃木県は9日、東京都や埼玉県から日光へ観光に訪れた46~67歳の男性4人が、山中で採った毒キノコを食べて食中毒になったと発表した。うち2人が入院したがすでに退院し、快方に向かっている。
栃木県によると、4人は7日午後1時ごろ、日光市川俣の山中でイグチ科の毒キノコを採取。自分たちで調理して食べた約2時間後、嘔吐(おうと)や下痢などの症状が出た。「同じイグチ科の食べられるキノコ『ヤマドリタケモドキ』だと思った」と話しているという。
この記事の中で注目すべきことは
「同じイグチ科の食べられるキノコ『ヤマドリタケモドキ』だと思った」
の部分ですよね。
ヤマドリタケモドキとは一番上の写真がそれであります。
最近はヤマドリタケモドキにも細かく種類が分かれているらしいので、ここでは「ヤマドリタケモドキ(広義)」のことを指しておりますので、細かいツッコミは無しでよろしく。
さて少なくともこの4人の中で1人はヤマドリタケモドキを食べたことがあるのでしょう。その人が
「おっ、これはヤマドリタケモドキやな、食べられるキノコやわ、美味いでぇ~」
とかなんとか言いはったのでしょうか?
自分は「知っているよ」というある種の自慢が「美味いでぇ」と言わせたのでしょう。
・・・でも僕もこんな覚えはあります!(きっぱり)
特にキノコのことをやりだした頃は何でもかんでも「食べられるのか?」という視点で見てしまい、どんなものでも「食べてみたい」という衝動に駆られたものです。もちろん危険なものはある程度認識していたつもりだし、無茶な事はするつもりもありませんでしたが、その「衝動」のベクトルは時々暴走するものも確かであり、結果的に危ない橋を渡っていた、なんてことも無きにしもあらず、、、。
容疑者を絞り込む
では彼らは何ていうキノコをヤマドリタケモドキと間違ったのでしょうか?
記事などから容疑者を推測してますね。
まずはヒントになる文章を列挙してみます。
- 栃木県日光市川俣の山中
- 8月7日に採取
- ヤマドリタケモドキと似ている
- イグチ科の毒キノコ
- 調理して食べた約2時間後、嘔吐や下痢などの症状
- うち2人が入院したがすでに退院し、快方に向かっている
まずは栃木県日光市川俣というのは中禅寺湖の上に位置するエリアで山に囲まれているのが良くわかりますね。
「山中」ということは彼らがいた場所というのはかなり標高が高かった、とも考えられる。また「日光」という土地柄を考えると針葉樹の林である可能性が高くなる。
ではではキノコの特徴はというと
- イグチ科
- ヤマドリタケモドキに似ている
- 8月に出る
- 食べたら嘔吐や下痢
- 針葉樹の林に出る
ことから考えると出てくる答えは一つ。
ドクヤマドリ
というキノコが自ずとでてきませんか?
どうだ?他にあるか?(って誰に聞いてんねん w)
ドクヤマドリとは
これが富士山で撮ったというドクヤマドリの写真ですね。
確かにヤマドリタケモドキに少し似ていますね。
やばいです、、、
引っこ抜いて手に持っているところです。
傘の部分はヤマドリタケモドキによく似ていますが、柄の部分には特有のアミアミはありません。
しかし、、、
もしこれを見つけてしまったら、きっと間違えて持ち帰ってしまうかもしれません、、、
だってヤマドリタケモドキにもこんなのがあります、、
一枚目の写真と比べて、傘の色がかなり薄いですね。
柄の部分のアミアミもこれまた薄い。
ほんでからこんなのもあります。
これはむしろドクヤマドリに似ているヤマドリタケモドキと言えますよね。
しかし絶対にこれがドクヤマドリじゃない、と言えるのは出ていた場所が針葉樹林の樹下ではないことがその最大要因といえるでしょうね。まぁそもそも関西にはドクヤマドリは出ないらしいので、端からドクヤマドリを疑う人はおりません。
ではではドクヤマドリとは一体どんな特徴を持っているのでしょう?
説明はWikipediaにしてもらいますね。
「ドクヤマドリ」
しっかりした肉質を持つ非常に重いきのこで、自重で倒れているものも散見される。典型的なイグチ型のきのこで食用菌のように思えるが、強力な消化器系の毒を持ち、下痢、腹痛などの激しい中毒症状に見舞われる。過去、日本においてはイグチ型のきのこに毒きのこは存在しないとも言われていたが、このきのこの報告によって覆された。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%82%AF%E3%83%A4%E3%83%9E%E3%83%89%E3%83%AA
ふむふむ、イグチの中では数少ない毒キノコらしい。
ほんでから
夏から秋にかけて主に亜高山帯及び北方の針葉樹林に発生する。特に富士山のシラビソ林に多く発生する。地上生で単生または少数が群生。毒はタンパク質系で胃腸毒、腎毒性を持つとされる。少量食べただけでも5時間ほどで下痢、腹痛、嘔吐、発熱などをおこし、腎臓に障害を起こすこともあると言われる。毒成分には、タンパク質のボレベニン類、イソレクチン類が含まれ、マウスに対する致死性が確認されている。
煮こぼせば食べられるとも言われるが、毒性が強いので危険である。しかし実際に食べた人の感想によると、味は美味であり、食後僅かに不快感を感じただけとのことだが、毒キノコであることには変わりないので安易に手を出してはいけない。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%82%AF%E3%83%A4%E3%83%9E%E3%83%89%E3%83%AA
とありますな。
この新聞記事には書いてありませんが、中毒した4人は「炒めて食べた」らしい。
煮こぼしていたらもしかして中毒していなかった(もしくはもっと軽い症状だった)かもしれませんが、それは後の祭り。
栃木県日光でドクヤマドリがあるのか?
最後に・・・
「ドクヤマドリはかなり分布が限られている」というご意見を頂きました。
ネットなどで調べてみると、そのほとんどが富士山周辺が圧倒的です。
wikipediaでも「特に富士山のシラビソ林に多く発生する」と書いてあるのはそのためですね。
しかし「ドクヤマドリ 日光」で検索してみるとわずかではあるがヒットする。
「鹿沼の自然・栃木の旅」
http://www.abe-clean.jp/_p/3344/documents/B7EECAF3A3B7.pdf
この中で「見つけたキノコ」の種類の中に「ドクヤマドリ」というのが含まれている。
「登山の日の鞍掛山 【栃木百名山】」
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-230142.html
ここでは「ドクヤマドリ」と称している写真が2枚ある
「今よりは風にまかせむ。-夏休み第二弾!満腹♪那須高原(栃木)2016.08.」
http://ameblo.jp/chama-nyan7/entry-12198162839.html
ここでは写真の同定は行ってないが、コメント欄で「ドクヤマドリではないか?」というコメントが入っている。
さて、ここで見つけた3つの記事の信用性はどれも怪しい(作者の方ごめんなさい w)
しかし、「可能性として」ドクヤマドリの線はありえる。
なので今のところは
「ドクヤマドリを重要参考人としてタイホする」
って感じかな?(笑)
“毒キノコ事件簿 その2” に対して2件のコメントがあります。
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素人の範疇で採取は自然を壊すし、自身や同行者の命に関わる〜山に入ったり採取は楽しいが、キノコに関しては自信なければ諦める!諸先輩の貴重な教えのデータは物語っていました、
有り難い
コメント有難うございます。
お役に立てて何よりです (#^.^#)