アミタケ?チチアワタケ?それとも・・・

9月6日 撮影:T橋さん

Facebookの某グループでこの写真が投稿された。
この写真だけで「ふむふむ● ● ● ● タケだな」とあらかた検討をつけられるかた、、、沢山おりましたね。
そして2枚めはこの写真。

9月6日 撮影:T橋さん

この写真を見て

「想像していたのが確信に変わった!!」

という人も多いはず。
でも逆に

「余計にわからなくなってきた・・・」

という人もいるのでは??

実は僕自身「余計にわからなくなってきた」派でした(笑)

そして案の定、このスレッドはいろいろな名前が飛び交うことになったのです。
出てきた順に書いてみると

  • ハナイグチ
  • チチアワタケ
  • ヌメリイグチ
  • アワタケ
  • アミタケ

こんな感じでしょうか?
いろいろ出てきましたねぇ、、写真だけで見ると色んなキノコに見えてしまうのは、それぞれの方がそれぞれの思いと経験をもってこの写真を見ているからなのでしょう。

でも、その中で真実は1つ。
ただし、写真だけではその真実を答えることが出来ない、ということを前提にして、でもできるだけ真実に迫ってみようと思います。

1.このキノコはハナイグチなのか?

Google検索で「ハナイグチ」

結論から先にいいますとハナイグチではありません。

ハナイグチでない理由をいくつか列挙してみますね。

  • カラマツが近くに無い(見えない)
  • ツバが確認できない

この2つの理由があれば十分かと。
こういった周りの環境が写っていると判別はとてもしやすい。
逆にまな板の上に置かれて、食べる気満々の写真をアップして「これは何でしょう?」という人がいるが、この様な投稿にはまず「答えない」というのが一番かもしれない。

「これは● ● ● タケかもしれないです」

という曖昧なコメントをしても投稿者は食べる気満々なので、、そのコメントを即座に鵜呑みにし、調理法をネットで調べ、料理に取り掛かるに違いないのだ(笑)。

話を元に戻すと、この様に苔の上から出ていて、周りに松の葉っぱが落ちている。という状況から見ると、カラ松としか共生しないハナイグチはその候補から除くべきだろうと思う。

2.このキノコはヌメリイグチなのか?

Google検索で「ヌメリイグチ」

たぶん、最初の写真を見せられると、ぱっと頭に浮かぶキノコとして「ヌメリイグチ」というのは当然のことです。
むしろヌメリイグチという選択肢は絶対にあるべきです。
何故なら

  • 松の木の下に出ている
  • 傘にぬめり(乾燥時はテカリ)が見える
  • 傘の色が黄褐色である

これらのポイントはヌメリイグチの特徴と完全に合致するからです。

ただし、、2枚めの写真でその選択肢は無くなるのです。
その大きな理由は

ツバが確認できない

という点に尽きます。
もしかしてツバが落ちてしまう場合もありますが(ヌメリイグチのツバは落ちにくいが)、柄の上部にツバの痕跡は残っています。
しかし、2枚めの裏向き写真を見る限りツバの痕跡は残っていません。

なので、このキノコはヌメリイグチではありません。

3.このキノコはアミタケなのか?

Google検索で「アミタケ」

さて、1枚め2枚めの写真を見て、かなり意見が多く、チチアワタケと勝負を分け合った「アミタケ」。果たして1枚めの写真はアミタケなのでしょうか?

実物を見たらチチアワタケかアミタケかはたぶん分かります。
キノコの初心者の頃はもしかして判別できないかもしれませんが、この2つの種を多く見てきた人にとって、判別するのは難しいことではありません。

ただし、写真というのは罪なもので、光の加減、色の出方、質感などが実物と違って見えることがあります。
なので、チチアワタケとアミタケで意見が2分されたのだと思われます。

ではここでアミタケの特徴が良く分かる写真を貼ってみます。

この写真を見てアミタケの典型的ないくつかの特徴を上げることができます。

  • 管孔がやや垂生している
  • 色はオリーブ黄色
  • 孔口は多角形で大小不同
  • やや放射状に配列する
  • 柄にツバはなく
  • 傘よりも淡色

それより何より、この管孔の雰囲気だけ見ても「アミタケだよね?」という写真であります。

では、T橋さんが傘の裏の写真を拡大してアップしたものを貼り付けます。

9月6日 撮影:T橋さん

アミタケの様な感じではありますが、特徴を照合してみますと・・・・

  • 管孔がやや垂生している
  • 色はオリーブ黄色
  • 孔口は多角形で大小不同
  • やや放射状に配列する
  • 柄にツバはなく
  • 傘よりも淡色

赤の下線が特徴と不一致なのですね。
もちろん、「コレぐらいは個体差のレベル」ということもあるでしょう。
一つの子実体だけで判断するのはどうか?という意見もありましょう。

ただ僕が見るに特に気になる点が2点ほどあるのです。

1つは「柄が白っぽい」ということです。「傘よりも淡色」という特徴から言えば確かに淡色なのですが、この様に明らかに白っぽい、というのは僕的には考えられません。

2つめは柄が垂生ぎみでないこと。
これも「ぎみ」とついているのですべての子実体がそうではないと思うのだが、この写真を見る限り垂生ではなく「離生」しているように見えるんですね。これはちょっとアミタケでは考えにくなぁ、、と。

4.このキノコはチチアワタケなのか?

さて、そして最後に残るのチチアワタケ。

チチアワタケの名前の由来は若いうちに管孔の部分に傷をつけると乳が出る、ということから。上記の写真の中にはそれを伺える写真はありませんが、Y成さんがそれらしい写真を持っていたのでちょいと拝借。

写真提供:Y成さん

典型的なチチアワタケの管孔です。
で、確認するのはちと難しいですが、傘の上の方に白い乳液らしきものが出ているのが確認できます。
若いときのチチアワタケの管孔はこの様にレモン色の様に明るく、柄は白っぽい。
孔口はアミタケの様に大きくないのがこの写真からも確認できます。

もう少し老成したものを見てみましょう。

2019.09.09 神戸

ここで注目しなければならない特徴は

  • 抗口は多角形に見える
  • 管孔は柄と離生している
  • 柄の本体は白く、 黄色の細粒点がある

ここでもう一度、T橋さんがアップした画像を見てみましょう。

9月6日 撮影:T橋さん

確かに抗口は多角形の様に見えますが、孔口の大きさが神戸の写真とほぼ同じ様に思えますし、管孔が離生しているのも良く似ています。

そこで、アミタケとチチアワタケの孔口の大きさを比較してみましょう。

写真提供:Y成さん

チチアワタケ(左)とアミタケ(右)です。

※2019.09.13追記 左の写真はヌメリイグチということが判明しました

アミタケの孔口がいかに大きいかと言うことがこの写真を見ればわかります。
ただし、投稿者の写真の孔口はこの中間ぐらいに見えるのが、なんともですな(笑)


さて、ずっと検証してきましたが、僕の感覚でいうと最初の写真はチチアワタケに見えます。再度書きますが、写真だけでは判断するのは難しいし、個体差もありますので絶対にチチアワタケだ、という判断を下すことは不可能です。
ただ、検証してきた結論としてはチチアワタケが一番疑わしい、というのはさほど間違ってはいないかと思われます。

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アミタケ?チチアワタケ?それとも・・・” に対して4件のコメントがあります。

  1. Inocybe より:

    自分にはチチアワタケにしか見えません…

    1. いりさじょうじ より:

      あ、もしかしてInocybeって・・・(笑)
      そう、達人が見たらそう見えるのですが、ビギナー向けに書いてみました!!

  2. Eisei・Ichioka より:

    ヌメリイグチとチチアワタケを完全に混同していた。色の違いは生える場所によって違いがあるのだと考えていた。両者とも平気で食べていたが、下痢を起こすことがよくあった。これは薬効(下剤効果)があるとして、問題にしていなくその他の障害は何もない。20年前のキノコの本にはイグチ科のキノコに毒はないと書かれていたので、いろいろ試食した。結果、ハナイグチとアミタケが最もおいしいと思われる。

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