「きのこ!キノコ!木の子! ~きのこから眺める自然と暮らし~」(その4)
今まで何回か書いてきたが、今回の特別展の「ウリ」は本郷次雄氏のスケッチである。
で、このスケッチ下に和名、学名とちょっとした説明が書いてあり、最後に「所蔵」の文字が見えてくる。
その所蔵先というのはここ「大阪市立自然史博物館」となっている。
そう、これらの本郷氏のスケッチは現在大阪市立自然史博物館で所蔵され、大切に保管されているのであります。
その大量のスケッチから今回展示するものを選び出して、解説を一つ一つ付けていく作業はとても難渋し、大変だっただろう、、ということが想像できる。
・・・と言うのが佐久間さんのこのツイートで読み取れます(笑)
プレスプレビュー5分前の写真。やれやれ。 pic.twitter.com/NWWHfS2fVC
— sakumad (@sakumad2003) 2018年7月20日
プレスプレビューの5分前までバタバタしていた様子がこの「やれやれ」に出ておりますね (^_^;)
さてそんな本郷次雄氏のスケッチでもう少し、、
「図鑑に載っていない種」のブースがありまして、これはスケッチの原画としてはあるのだけど、図鑑には「文字だけの記載」となっているものたちだけを集めたものなのです。
いわば原画でしか見れない、キノコたちなのですね。
ちょっとメジャー路線のキノコたちではありませんが、しっかりとスケッチされているのが分かりますね。
あと、このスケッチで目が釘付けになりました。
「オニフウセンタケ」という種らしいのですが、いままで実物はもとより、図鑑でも見たことが無い種でした。
解説には
「オニイグチなどと同様、傘や柄が黒っぽい鱗片に覆われ、野外で見かけても一見してフウセンタケ属とは気づかない。」
とあります。
確かにこの絵を見てもフウセンタケ属には見えませんね。
こんな「発見」が実はあちこちでありますので、ほんと楽しいんですよね。
で、話はちょっと変わりますが、本郷氏がいつもキノコを探しに行くフィールドはどのあたりなのでしょうか?
その答えがこの写真です。
その多くが大津市瀬田地域周辺だったことがわかりますね。
このあまり広くないエリアで、あれだけのキノコを観察し、調べ上げて、論文に記載し、そして図鑑も作っちゃうんですからまさに偉業としか言いようがありません。
そんな本郷氏の「記録」を集計して統計を取るとこんな面白いことが見えてきた、、というグラフです。
左側にテングタケ属、右側にイグチ属のがそれぞれ年代ごとに棒グラフのようになっています。
その棒グラフはそれぞれ「どういった環境でキノコを採取したのか?」という割合が示されていますね。
これを年代ごとに見ていくと、例えばテングタケ属を見ると落葉樹の割合がどんどん減っていき、代わりに混交林が増えていったり、少なかった常緑樹の割合が、年を経る毎に増えていってる、というのが分かります。
これをイグチで見るとちょっと変わってくるのですが、混交林を見るとやはりだんだん増えてきて、逆に松林がかなり減ってきたりしているのが分かりますね。
このグラフはあくまでも割合なので、「量」という数値はこのどこにもありませんが、少なくとも何らかの植生の変化はこのグラフから読み取れたりしますね。
この2つの属ではありませんが、松茸が採れなくなった、というのは、松林が減ってきた、という推察はこのグラフから出来るのだろうと思っています。
キノコから見た、植生の変化、これは特に大津周辺だけで起こっているのではなく、全国でこの様なことが起こっているのでしょう。良く「最近は菌根菌が減った」という話が聞こえてきたりしますが、それは菌根菌が減ったのではなく、植生が変わった、と見るべきなのだろうと、このグラフを見て証明出来るのではないでしょうか?
つづく、、、、