おおきなクワの木の下で(キツネノワン、キツネノヤリタケ)

キツネノワン

ずっと見たかったキツネノワン、キツネノヤリタケ。
三十九さんに場所を教えてもらって、「ここだよ」と地図で場所まで教えてもらい、行ったらわんさか、わんさかありましたとさ、、、

この2つは双方とも食べることが出来ないので採られる心配なし(笑)

ええなぁ、、採られたり、蹴られたり、駆除されたりしないキノコって、、、、
まぁその代わりと言ってはなんだけど、採られないのですごい勢いで増えていくんだろうなぁ、と思うのだがどうなんだろうか?

桑の木を探して

「桑」と聞いて思い出すのは我が故郷の大阪府枚方市。
子供の頃に中学校の裏山で桑の実がなってるのを発見し、すかさず採って食べ、甘酸っぱい味が口の中に広がった、、、という思い出が蘇るのだが、中学校の同級生の誰に聞いても

「そんなん知らん!」

と言われる始末。
するとだんだん自信が無くなってきて、

「かあさん、僕が食べたあの桑の実、どこにあったものでせうね、、、」

などと西条八十的な表現で考えてみてもまったく思い浮かぶ兆しはなかった、、、

ところがである。

Facebookというのは便利なもので、そんな「淡い思い出」を投稿したところ、中学校の裏山ではないものの、小学校の同級生の家(香里団地)の前に大きな桑の木があって、実がなったらみんなで採って食べていたよ、、というコメントがついた。
う~む、中学校の裏山ではなかったのだが、当たらずとも遠からじ、、と言ったとこか(距離は遠いけどね w)。

でもね、、、「その桑の木は今は無い」らしい (落涙)。

悔しいのでネットでいろいろ検索してみたら、「そこ」の桑の木は伐採されたらしいが、別のところにあるという情報を得た。
すかさず近所に住む同級生に見てきてもらって、葉っぱや、実の確認をしてもらったら確かに桑の実のようだ、、やったっ!!

こうなったら思いは一つ

「あの甘酸っぱい桑の実をもう一度食べてみたい!」

もうキツネノワン、キツネノヤリタケどころではない(こらーっ 笑)

で、見つけました。
香里団地のけやき通りの沿いにある郵便局のちょうど真裏。
子供の頃の印象よりも数倍大きくなっている桑の木を。

香里団地内の桑の木

懐かしさにふけっている場合ではありません、桑の実を早く探さないと誰かに採られちゃうかもしれません(笑)

時は5月29日。
桑の実がなっているどんぴしゃりの時期です。
こうやって見ると葉っぱの緑が青々としていて、もしここに桑の実がなっていれば大量の実が収穫できるに違いありません。

あの、甘酸っぱい味よもう一度、、、

そんな淡い期待を抱きながら桑の木に近づくと、、、

こんな実が沢山なっているのを目にしたのです。

白化している桑の実

え?白いがな、、、(@_@;)

♪あれも白い、これも白い、こちらも白い、全部白い~♪(はい、イミテーションゴールド風で w)

一体どうしたことなんだろう、、

桑の実の甘酸っぱいヤツ、、、食べられへんがな、、、(激涙)

白化の正体

実はまだこの時、桑の実の白化=キツネノワン、キツネノヤリタケが原因、というのを知りませんでした。

では桑の実が白化するメカニズムを流れを追って見てみましょう。

  1. 桑の花が咲く頃、、、それは4月頭から下旬ぐらいに
  2. 菌核からキツネノワン、キツネノヤリタケの子実体が発生し
  3. 胞子が風に乗って桑の花に感染
  4. 感染した花から作られる実は病気(菌核病)になり白化します
  5. そしてその実が落下し菌核化するのです
  6. 菌核の中の菌は夏、秋、冬を越え、翌年の春までじっと待つのでした。

なんとしたたかな戦略なのでしょう、、、

でも「キノコ好き」としては複雑な心境なのです。
あの甘酸っぱい桑の実が食べられなくなるのと、キツネノワン・キツネノヤリタケが見れるのとはまるで交換条件のようで、、、

「キツネノワンが見たいのかい?じゃあ桑の実はあきらめるんだな、、、ふふふ」

って誰やねん(笑)

まぁでも仕方がない、桑の実をあきらめて、キツネノワン・キツネノヤリタケを選択する事にしたのであった。

キツネノワン・キツネノヤリタケ発見!

初めて見たキツネノワン

今回見つけたのは大阪にある某公園のヤマグワの木の下。
香里団地内の桑の木と違い、かなり背が高かったので「これが桑の木?」と思ったのですが、綿密に地面を調べていくとこのキツネノワンが最初に目に飛び込んできました。

「うぉ~っ!!」

思わず一人、唸り声をあげる。
この様な小さきものを発見して興奮している自分に今更ながらに「アホやなぁ、、」と思うのだが、もうここまで来て引き下がることはできないのだ。そりゃもう念願のキツネノワンですからねぇ、、三十九さんに感謝感謝です。

そして、ここでもちょっと写っておりますが、キツネノヤリタケも集団で直ぐ近くに出ておりました。

それがこれ、、、

キツネノヤリタケ

いやぁ、こうやって見ると壮観ですなぁ、、、

どうですかこのヤリの姿、、、

こんなヤリに刺されたらひとたまりも無いでしょうなぁ~(笑)

菌核を見てみてる

菌核から出てるキツネノワン

キツネノワンは以前ツバキキンカクチャワンタケと同じ様に「菌核」というものを作り出し、その菌核から根を地下に伸ばすととももに、地上へは子実体を作り出して、この写真のようなお椀型のキノコが現れるのです。

ツバキの下にヒソむもの

ツバキキンカクチャワンタケの菌核は案外わかりにくいのですが、このキツネノワンの菌核は肉眼でもしっかりと確認できます。
この写真ではその菌核から3つの子実体が発生しているのですが、菌核も桑の実の原型をそのまま残した様な形であり、これを見ただけで「桑の実」から発生しているとわかりますよね。

そう言えば三十九さんが、

「冬でも桑の木の下に行けば、菌核を見つけることができますよ」

と言っていたのはこの事だと納得。
菌核か土の塊かどちらかわからないツバキキンカクチャワンタケの菌核とは全く異なります。
桑の木は結構レアになってきてますが、キツネノワンの菌核はとっても見つけやすいんですね。
 
それではキツネノヤリタケはどうでしょう?

キツネのヤリタケの菌核

キツネノヤリタケも同じく桑の実から菌核を作るみたいです。

なんという桑の実の懐の深さ、、、(笑)

これらの菌核はつまり

「白化した桑の実が落ちて菌核化した」

ということなのですが、2枚めの写真を見て下さい。
あれだけ沢山のキツネノヤリタケが出てるってことは、あの下には恐ろしい数の白化桑の実がある、ということですよね~

キツネノヤリタケの槍

キツネノヤリタケの頭部

はっきり言って刺さりませんけどね、、(笑)

キツネノヤリタケの槍の部分を拡大して撮ってみました。
こうやって見ると、アミガサタケのシンプルバージョンに見えなくもないです。
チャワンタケの仲間と同じ子嚢菌類ですし、同じ様に風で胞子を飛ばすのでありますが、こんなにも形が違う、というのは何か意味深いものを感じます。
こういったフォルムというのは、風を受け止め、その風の勢いで柄の部分が揺れて、より高く、より遠くへ胞子を飛ばす形になっているのだと思われます。

さてさて、試しにこの槍の部分を指で弾いてみて下さい、沢山の胞子が飛んでいくことがわかります。

その胞子とね、甘酸っぱい桑の実の思い出は一緒に飛んで行くのよね、、、(激涙)
 

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