コケの上のエメラルド、ミドリコケビョウタケを探せ

ついに見つけることが出来たミドリコケビョウタケ。
osoさんの記事「Mniaecia jungermanniae (ミドリコケビョウタケ) 」(2022年)や杏美ちゃんの記事「ミドリコケビョウタケ(緑苔鋲茸)Mniaecia jungermanniae」(2024年)を読んで
「あぁ、こんなのがあるんだね、、いつか見つけてやるぞ!」
と思ってから苦節4年、やっと見つけることが出来ました \(^o^)/
苦節4年。
いやぁ、、長い道のりでした。
ミドリコケビョウタケは子嚢菌という分類群に属しております。
子嚢菌、特にチャワンタケの仲間などは冬の終わりから春にかけて発生するものが多い。
例えば通称ツバキンことツバキキンカクチャワンタケなどは春を告げるきのことして、3月ぐらいのきのこの観察会では主役級の扱いを受けたりするんですよね。
何故春に発生するのか?
それはツバキの花を咲かせる時期に合わせて子実体を発生させ、花が咲いているタイミングで胞子を感染させるため、と言われています。
他にはモクレンやハンノキ、もっと小さいところではヒサカキの花などに感染するために発生するチャワンタケの仲間などもいて、キノコ型の菌類があまり発生していない早春でもこれらのチャワンタケの仲間はあちらこちらでその姿を現し、活発に活動しているのです。
これを
「春のチャワンタケ祭」
と我々マニアの間で呼んでおるのですな(笑)。
そんなチャワンタケの仲間の中で最も早い時期に出ているのがこのミドリコケビョウタケのようです。
関西や福岡では1月末~3月末ぐらいまでかな?
コケの上に発生するという生態だからかもしれませんがかなり長い期間出続けます。
なのではっきり言うと見つけるチャンスは幾らでもあったはずが「苦節4年」もかかってしまいました。
その主な理由は
大きさが1mmもない
ということです。
大事なのでもう一度言います。
ミドリコケビョウタケの大きさは1mmもありません!
のである。
これは舐めてはいけない大きさです。
キノコを散策していて ”たまたま” 見つけた、というサイズではありません。
また、だいたいこういうところにあるんだよね、ほら見つかった、というサイズでもないのです。
言いますよ、、
「ここに絶対あるはずだ、さぁ地べたに這いつくばれ皆の衆!」
ぐらいの気合が必要な小ささなんです。
ミドリコケビョウタケはどんなところに発生するのか?

コケの上に発生する、というのは間違いなさそうですが、どのコケから発生するのか?というのは言えないようです。
つまり宿主特異性はない、という事ですね。
だとしたら、コケがあるところをしらみつぶしに探す、という必要が出てきます。
例えばこんなところです。

少し湿っていていかにもチャワンタケが居そうな感じです。
しかし、この様な場所から「1㎜もない緑の茶碗」を探すのは不可能です。
もしここに発生していたとしても無理なので、敢えて言います。
こんなところはスルーしなさい
実は僕自身、今まではこんなところばかり探していました。
しかしミドリコケビョウタケ探しの天才であるすがさんのツイートで「はっ!」としました。
そのツイートがこれです。
このイラストにエッセンスが凝縮しています。
少し説明を加えつつ内容を列挙しますと
- 道の崖にあるむき出しの土の上に発生したコケ
- コケの緑、というよりやや黄緑っぽい感じのところ
- 赤茶っぽいコケがあればなお良し
- あの緑色(エメラルド色)で探すのではなく、黒っぽい点で探せ
- スマホの「・・・」ぐらいの大きさをイメージ
- 無いところには無いので深追いをするな(心が折れる)
いかがでしょう?
僕はこのツイートを手掛かりにして4年越しの願いを叶えることが出来ました。
しかし、すがさんの散策場所と僕の散策場所は一部重なるところもあるので、同じ様な環境があるとはいえ、それでも見つけることは容易ではなかった、ということだけは付け加えておきます。
ちなみに僕が見つけたところはこんな感じのところです。

ちょっとイメージが変わりましたか?
もっと緑が青々としているコケ、そして葉が大きなコケを想像していたのですが、少し呆気に取られたものです。
しかしカメラを近づけ、ミドリコケビョウタケにピントを合わせ、写真を撮ってみるとコケの葉一枚一枚が大きく見えています。
まぁ当たり前と言えば当たり前なのですが、ミドリコケビョウタケのサイズが1mm以下で、それをアップで撮ろうとするとコケも大きく写り、写真を見た人からするとコケが大きなものに見えてしますのですね。
それがミドリコケビョウタケが見つけられないという「罠」なのです。
写真を見ていて、発生するような場所も分かっているのに見つけられないのは多くがこのサイズ感の錯覚に慣れていないから、なんですね。
なので、まずは1mm以下のサイズ感を目に叩き込むというシミュレーションが必要になると思います。
ミドリコケビョウタケを検鏡する

ミドリコケビョウタケを検鏡するために少しコケ毎摘まんで持って帰らせてもらった。
何故ならコケ毎でないと茶碗が乾燥してしまうからである。
乾燥してしまうと胞子紋も取れなくなるし、その上縮んでしまって小さくなりすぎてしまうからなんですね。
ただコケ毎持って帰ってもなかなかやっかいで、コケの中に埋もれてしまって、その色故にどこにいるのか分からなくなるのですな(笑)。これには参った。
なので、トレース台(白バックで使用する)の上に持っていき、ライトで照らし、TG-6で拡大しながら撮影し、それをPCで確認してやっと「ここにいる!」というのが分かるという感じなのです。
そしてこのエメラルド色の部分をピンセットで剥ぎ取り、それでもコケが付いてくるので水を一滴垂らした後にピンセットでコケを取り除く事15分、やっとエメラルド部分のみを隔離することが出来た。

綺麗に切片を作れなかったのはあまりにも小さすぎるためピンセットで剝ぎ取ることが精いっぱいだったからだ。
まぁこれでも子嚢、側糸、そして托髄層の各組織がわかりますね。
それではまず胞子を見てみましょう。

胞子の形は楕円形、胞子内部に多量の内容物(油球でいいのか?)を含む
サイズは 21.7-25.0μm x 11.1-13.4μm
次は子嚢です。

サイズは 155.3-190.4μm x 20.0-20.9μm 胞子は8個で斜めに一列に並んでいます。
印象では結構ずんぐりむっくりした子嚢だなぁ、、と思います。
最初100倍で検鏡した際に子嚢が視野に現れてきたときは「わっ、短かっ!」と思いましたもんね(笑)
ではでは最も美しい側糸を見てみましょう。

側糸の先端は楕円形に膨らんでいます。この膨らみは他のチャワンタケの側糸よりも顕著で特筆すべき特徴だと思わますが、実は oso さんのミドリコケビョウタケの側糸はここまで極端な楕円形には見えません。
ただ種としては同じだと考えられますので、成長途中で球形の形に変化があるのかもしれません。
また、この側糸は先端部分が緑色でこれがミドリコケビョウタケの「緑」を形成しているのだと思われます。
あと、この写真では分かりづらいですが、側糸にはいくつかの隔壁が存在することがわかります。
まとめ
ミドリコケビョウタケについての記事いかがでしたでしょうか?
この記事を読んで「是非探してみたい!」と思われた方がいたら本望です。
ミドリコケビョウタケ探しはまさにその「エメラルド色」をして宝探し的な要素があるんですよね。
そして見つけた際には発狂してしまうぐらい嬉しいんです(笑)
今年はもうミドリコケビョウタケ探しの終盤になってきましたが、是非是非皆さんトライしてみて下さい。

