あなたは何菌2020?

最新のDNAでの分類の進歩、というものは目覚ましいものがある。
その最先端を突っ走っているのが「きのこびと分類学」の第一人者イトウタカコ教授(茨城珍菌大学)であろう。
イトウ教授によると従来「撮り菌」「食べ菌」「知り菌」「キャラ菌」という4つにしか分かれてなかったものが、DNAの塩基配列を詳細に調べ上げた結果、驚くべきことに今まで誰にも知られていなかった「きのこびと」が発見され、そして細分化され、下記表のような非常に細かくそして精密な分類体系ができあがったのであった。

まずは「きのこびと体系図」を御覧ください。

では、今までの大雑把な4分類と比較対象することによってイトウ教授の分類の特徴を見ていきましょう。

撮り菌

今までは独立していた「撮り菌」なのですが、実は「観察菌」のサブ菌だということが判明したそうです。それだけでも驚きなのですが「観察菌」には「フェチ菌」と「読み菌」という2つのサブ菌も存在しているそうです。そう言われると、改めて思い返せば僕自身は「ヒダフェチ」であったなぁ、、とこの図を見てハッと気がついた次第であります。
「あの美しいヒダの上で寝てみたい」
とか
「あのヒダで頬をヒラヒラして欲しい~!」
というのはフェチ菌の要素を含んでいたから、という事なのでしょうね(笑)

また注目すべきはフェチ菌のサブ菌として「物理フェチ菌」という新たな分類を作って「嗅ぎ菌」と「齧り菌」に分類したことである。 「物理フェチ菌」 というとちょっと小難しく感じますが「嗅ぎ菌」「齧り菌」と聞くと「あぁ、あの方たちね」と思い浮かぶ人がいるかもしれません。

まず嗅ぎ菌という分類で言えば、サンコタケの匂いを嗅いで「うわっ、くっさー!」と分かっているのについつい嗅いでしまう自分自身の自虐的な姿や、スッポンタケの甘い香りに酔いしれ、うっとりする表情を浮かべるメルヘンヤスコの姿などを思い出してしまうのは僕だけではないでしょう。

そして齧り菌と言えばニガイグチ系を齧る人たちの変態どもでしょうか。
管孔がピンクから紫のものを見るとどうしても齧りたくなる、、、というフェチの人がほんの少しですがいるんですよね。なんていうんですかねぇ、、齧って「ぎゃあ!」と叫んでまさに苦虫を噛み潰したような顔になる自分が好き❤という変態ですね。常人からは計り知れないようなM気質を持ったフェチ、というのが正しい表現かもしれません。

知り菌

「知り菌」はシノニムとなってしまい、新たな学名が「研究菌」となっていますね。
恐らく「知る」という語意よりももっと深く強い意味を持たせないと、その重さが伝わらないから、というイトウ教授の判断からであろう。
このあたり、イトウ教授の抜き差しならぬこだわりが垣間見えてきますね。

こうやって「研究菌」全体を眺めてみると、従来の「知り菌」はこの「研究菌」の中のサブ菌である「調べ菌」とほぼイコールだったのか、と、この図を観てやっと理解できた。また「標本菌」というのは例えば御影高校の標本を見た時にちらっと思った「標本フェチ」という言葉。その言葉を具現化し、分類したのがこの「研究菌」なのでしょう、素晴らしいと思います。
ただちょっとユニークなのがこの「調べ菌」の中に「胞子紋菌」というのを分化させたところだろう。
「図鑑菌」と「顕微鏡菌」という2大分類からあえて分けた、というのはこの地味な「胞子紋菌」の中にアナログチックだが、伝統的な同定手法を伝承したい、という思いが込められているのではないでしょうか。

いくらDNAでの同定手法が発達したとしても、初心忘るべからず、ということでしょうか?

Never forget the beginner’s humility!」

イトウ教授が講義の最中に良く使う言葉です(笑)。

そして新設された「標本菌」というサブ菌にもイトウ教授の意気込みを見ることが出来ます。
この中で僕は知らなかったのですが「押し菌」というきのこびとがいる、というのを発見したのは恐らくイトウ教授だということ。大阪自然史博物館で行われた特別展「きのこ!キノコ!木の子!」で冬虫夏草で「おしばきのこ」というのを奈良県在住の荒井滋さん、悦子さんご夫婦が作っておられたのですが、もしかしてその「おしばきのこ」を観られてインスピレーションを受けられたのでしょうか?一般的には忘れられがちな「押し菌」を「標本菌」というカテゴリーに入れたのはイトウ教授の功績だと思いますね。

キャラ菌

さてさて、従来「キノコのグッズ好き、キャラクター好き」というのをひとまとめにして「キャラ菌」という風にかなり大雑把に呼んでいたのだが、アカデミックなレベルで考えると

「どうもそれだけでは説明出来ないものが出てくる」

ということが分かってきた、というのがこの図を見てわかるはず。

つまり「キャラ菌」を「コレクター菌」のサブ菌に移動させ、それと横並びで「切手菌」「ブック菌」そしてキャラ菌から分離された「グッズ菌」の4つを並べることによって、コレクター菌が完成した、と言っても過言ではないでしょう。ここでもイトウ教授の切れ味の良い刃物のような割り切りを見ることが出来ますね。従来の「キャラ菌」という曖昧な表現から、「グッズ菌」を切り離すことによって「キャラ菌」の持つイメージも変わったし、何より元々「似て非なるもの」を十把一絡げにしたのが間違いだった、ということなのでしょう。

ただ、個人的に言わせていただければ「切手菌」というのは実にあやふやな存在で、DNAの塩基配列でも98%の確率でキャラ菌と等しく、ある研究者によれば「それ、キャラ菌でいいんでね?」という考え方もあるそうなんです。

「98%と言う数字は『同種』なのか、それとも別種なのか?」
「じゃあ99.8%同じならば『同種』なのか、いやそれでも別種なのか?」

DNAでの分類、と一口で言っても簡単なものではなく、こういった曖昧な部分が未だ沢山存在している、というのが分類の世界なんでしょうね。
僕的にも単独で「切手菌」を分類してしまうのには少し無理があるのでは?とは思うのであるが、ここのとことイトウ教授の真意なるものをお聞きしなければならないと思っている。

食べ菌

「撮り菌」「知り菌」「キャラ菌」という旧分類の3つに関しては、新分類になってからはサブ菌に移動したり、シノニムになったりしながらも「研究・観察菌」という大分類に属することになりました。それらはいずれもアプローチが多少違えどもキノコに対する「気持ち」といいますか、「親愛感」といいますか、そんなものはかなり似たものがあるのかと思われるのです。
キノコの形に惹かれることがあるのか、キノコの生態に惹かれてしまうのか、、、などの違いだけで、みんな「キノコが好き」という情愛と「キノコを粗雑に扱わないで」という愛おしさ、なるもは深層心理としてみんな持っているんだと思うのです。
そういう深層心理を汲んで「研究・観察菌」としてカテゴライズした、ところはイトウ教授の見識の高さが伺えるのですね。

さて、そして残るは「食べ菌」です。

「食べ菌」に関してはかなり苦労の跡が見え隠れしておりますな。
確かに「食べ菌」として存在はしているものの、その上位分類として「採り菌(とりきん)」という敢えて「撮り菌」と同じ読み方のものを持ってきた、というところは苦渋の選択、といったところでしょうか。
そしてその「採り菌」のもう一つのサブ菌には「小遣い稼ぎ菌」というなんともベタな名前を付けざるを得なかったところも、教授の苦悶している様子が目に浮かぶところです。

そしてそして、今回の新分類図で注目すべきはこの採り菌たちのもう一つのサブ分類として「料理菌」「貯菌」「調味料菌」などの分類群を「創設」したこと、なのですね。「食べ菌」と一言で言ってしまっては他の観察菌たちからは「がめつい奴らやなぁ、、」「食べてばかりで愛情を感じない」「あいつらが通るとキノコ砂漠になる」などと批判の目にさらされてるのも「食べ菌」さんたちの姿であろう。そこをちゃんと整理し、分類し直すことで「食べ菌さんたちもキノコに愛情を持って料理しているんだよ」という一種の「見える化」に成功したように思うのです。
これで従来の食べ菌さんたちの顔が見えてきた、とでも申しましょうか、喜々としてキノコ料理している姿が垣間見える気がするのです。

ただ僕個人としては「小遣い稼ぎ菌」の創設はちと問題視したいとことではあるのです。

「道の駅菌」というのは、道の駅で朝採って来たキノコを販売する、という人たちのことであります。最近でも採取してきたカキシメジを販売し、それを食べた家族が食中毒した、という事件簿がありましたね。採取してきた人にとっては軽い小遣い稼ぎのつもりだったかもしれませんが、そういう食中毒を起こす元凶だというのを自覚しなくてはいけません。
また「メルカリ菌」というのは、メルカリを通じで自分が採取してきたキノコを販売するという人たちのこと。対面販売でもないのに通販でキノコを販売する、という行為が果たして許されるものか?というのが恐らく将来問われてくるかと思われます。もし送られてきたキノコの中に1個でも毒キノコが混ざっていたら、というのは考えられなくもありません。ですので、この「メルカリ菌」は将来絶滅している可能性があります。

アーティスト菌

いよいよ最後のカテゴリーになりましたが、この「アーティスト菌」というのは初期の4分類の中にはまったく含まれず、イトウ教授の発見と新たな分類で出来ております。
というのもこの「アーティスト菌」はイトウ教授の専門分野でありまして、
「ワイの専門分野がなんで分類されてないんじゃ~」
と少々怒りを抑えきれずにそう申しておられましたゆえ、今回万感の思いを込めてこのカテゴリーを創設されたのでありましょう。

まず、この中でも一番大きなカテゴリーは「ハンドメイド菌」でしょう。
オオサカきのこ大祭でも多くのハンドメイド菌さんたちが出店しておりましたが、皆さんキノコへの計り知れない愛情と、そしてどこから湧き上がってくるのかもわからない果てしない想像力。それは今までのきのこびと達を遥かに凌ぐものだと思われます。
そしてこの「ハンドメイド菌」たちは「作る」ことも好きなのですが、「キャラ菌」でもある、というのが最も大きな特徴なのだと思われます。

何故ならイベントなどで出店している方たちは、空いてる時間に他の店舗のグッズなどを見たり、買ったりするのが何よりの楽しみらしいのですが、「オオサカきのこ大祭」ではひっきり無しにお客さんが来ていたので自分たちが見て回る時間がなかった、、、という嬉しいやら悲しいやら、、という事態だったと聞いております(なにげにオオサカきのこ大祭をアピールするおいら w)。

そんなハンドメイド菌を含むアーティスト菌達はイトウ教授の専門だけあってとっても高い精度で、そして細かく分類されているのがわかります。そしてその内容をつぶさに見ていくと、作っている人たちの顔が思い浮かんでくる、というのも「アーティスト菌」の特徴でもあります。

例えばこのレッドちゃんの作品

「雪菌ん子」

これはレッドちゃんが入院していた時に「幼女牛乳」からインスピレーションを受けて、退院後作った作品らしいのです。 こっぱ人形とか津軽こけしとかの影響も受けたそうなのだが、この「幼女牛乳からのインスピレーション」というカオスな状態からの創作、というのがなんともレッドちゃん的ではありますな。

そしてこの「インスピレーション」とか「ひらめき」とかいうのがアーティスト菌のアーティストたるべき所以なのでしょう。このオリジナル性の高い作品は、たぶん後世に残っていき、もしかして栃木の有名物産品とか、または日本の文化遺産とかになるのではないか??なんて思ったりしております。

雪菌ん子

レッドちゃん作:雪菌ん子

はたまたアクセサリー菌と言って思い出すのは、同じ栃木のしろたんぽぽさんの作品。
粘土で作られたとっても精巧なキノコで、思わず手に取りたくなったり、リビングに置いてあるボードケースの上に飾っておきたい作品ではありますな。

リアル!タマゴタケの置物

しろたんぽぽさん作:たまごたけ

カメオ風フェイクチョコレート アミガサタケのブローチ

しろたんぽぽさん作: カメオ風フェイクチョコレート アミガサタケのブローチ

いずれもキノコに対する「敬愛の念」「親愛の情」が感じられる作品ですね。
一度しろたんぽぽさんに作品について聞いたことがありますが、こういう細かい作品はほんとに大変らしく、聞いてる間、頭が下がる思いでした。またこのアミガサタケブローチをつけて歩いてる方を見たらかなりの「グッズ菌」と思って間違いないです(笑)


そして、イトウ教授は「アーティスト菌」の専門家であるとともに、教授自身がアーティストでもある、ということを改めて説明せねばなりません。
そのアーティストとしての「代表作品」を紹介しましょう。
まずはこれです。これは筑波実験植物園の「きのこ展」でポスターなどに使われた絵画です。
「きのこ展」に行かれた方は多かれ少なかれこの絵画を目にしているはずです。

国立科学博物館 筑波実験植物園のきのこ展のポスターに選ばれた作品

イトウタカコ教授作:国立科学博物館 筑波実験植物園のきのこ展ポスターに選出

めっちゃかっこいい作品ですよね~
この作品を使ったWEBサイトがまだ残っていますので、こちらも見に行ってみて下さい。
http://www.tbg.kahaku.go.jp/event/2018/9kinoko/index.html

そして次の作品は茨城県土浦市で開催したグループ展「今、個々展」というところで「イロハキノコカルタ」として、手にとって見てもらったもの、だそうです。

イロハキノコカルタ

イトウタカコ教授:イロハキノコカルタ

先程の作品と打って変わってとっても面白い作品となっていますね。
最初の作品も、このカルタもオリジナリティー溢れたとっても素敵な作品だと思います。

そんなイトウ教授が個展を開くそうなのでここで告知させてもらいます。
「@tacacomono的百鬼夜行-彼奴らと私の九十九の物語-」
https://www.facebook.com/events/2655025131280947/
もしよろしければ観に行ってはどうでしょうか?
不思議な不思議な世界へアナタを導いてくれることでしょう。


さて、いかがでしたでしょうか?
いささか僕の解説では「おい、ここ説明不足ちゃうか?」とツッこまれそうですが、前回の「あなたは何菌?」という投稿の著者としてはある程度の責任は果たせたと思っています。

では、ここで改めて聞きます。

あなたはいったい何菌ですか?

僕は
撮り菌:45%
調べ菌:30%
部位フェチ菌:10%
物理フェチ菌:10%
食べ菌:5%

って感じですね (*^^*)

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あなたは何菌2020?” に対して2件のコメントがあります。

  1. JUNKO MIYAUCHI より:

    インスタより、お名前を検索してこちらに参りました。
    きのこや粘菌が大好きで、片岡さんの著書も購入
    いたしましたが、きのこのイラストに感動してこちらまで押しかけてしまいました。
    じっくり読ませていただきたいと思っています。
    今後ともよろしくお願いします。

    1. いりさじょうじ より:

      どうも有難うございます。
      きのこのイラストというとイトウタカコさんですね?
      記事のバリエーションがいろいろありますので、楽しんでお読みください。

JUNKO MIYAUCHI へ返信する コメントをキャンセル