きのこが消滅する日

木曜日、金曜日とたっぷり雨が降ったので「今しかない!」と思ってキノコを探しに行った。
また明日から雨の予報だったし、月曜からしばらく雨が続く予報になっていたので、行ける日に行っとかないと雨の中での散策はカメラが濡れちゃうし、落ち着いて撮影も出来ないですからね。
そしていそいそとホームグラウンドである某公園に足を運んだ。
雨上がりのキノコはしっとりしていて美しい。
少し雨粒を傘に載せたものとか、濡れた芝生上中からキリリと佇むヤツがいたりと撮り菌にとっては雨の後のキノコはまさに「撮り頃」と言えるのですね。
なので、今回はしばらくしまっていたTTArtisanの40mmマクロレンズなども用意してリュックサックが超絶重くなるのも我慢して美しいキノコ達の撮影に臨んだ。
しかしだ、、、
キノコの姿が無い。まったくない。マジでゼロ。
無いと言ってもこんなに無いのは初めてである。
だって雨の後でしょ?時期は9月でしょ?
オチバタケの類やモリノカレバタケの仲間とか分からんヤツらが雨の後には沢山でるやん?
それらがまったくのゼロなのだ。
どうしたことだ?
とは聞かない。
原因はほぼ分かっている。
地球温暖化。
こいつのせいだ。
現在は産業革命以前と比べて世界全体の気温が約1.1~1.5℃程度上昇しているそうな。
1.1~1.5℃と言うと「大したことないやん」と思っていた。
つい3~4年前は。
しかしそれは大きな誤りであった。
約1.1~1.5℃上昇することにより、偏西風は大きく蛇行し、海水温に大きな影響を与え、日本ではかつて体験したことが無いぐらいの猛暑(または酷暑)が続き、雨が降らない日が何日も続き、また雨が降ったとしたら軽く1日で1年分ぐらいの雨量をもたらす。
一年のうちに何度も気候変動の影響を受け、そしてようやく「地球温暖化とは何か?」「地球温暖化で何が起こるのか?」を知ることになった人類。
その影響はアル・ゴア元米副大統領が出演した映画『不都合な真実』などで想定された予想を遥かに超え、あざ笑うかの様に我々の日常生活に大きな混乱を巻き起こしているのだ。
—
ではなぜ地球温暖化がキノコの発生に影響するのでしょうか?
ここではいくつかのデータを元にして2つの仮説を立ててみます
気温上昇による菌糸の死
| 8月 | 1930 | 1940 | 1950 | 1960 | 1970 | 1980 | 1990 | 2000 | 2010 | 2020 | 2026 |
| 1 | 27.4 | 34.6 | 34.1 | 35.3 | 31.8 | 28.7 | 34.4 | 33.5 | 34.8 | 33.8 | 37.1 |
| 2 | 30.5 | 34.2 | 34.6 | 36.6 | 32.3 | 31.7 | 34.9 | 33.4 | 36.4 | 33.9 | 37.9 |
| 3 | 33.3 | 31.6 | 34.2 | 35.6 | 33.1 | 27.2 | 37.1 | 33.8 | 35.6 | 33.5 | 38.6 |
| 4 | 33.6 | 32.4 | 32.3 | 33.7 | 33.7 | 28.5 | 35.6 | 37.7 | 36.5 | 34.7 | 35.2 |
| 5 | 33.2 | 32.8 | 33 | 34.8 | 35.9 | 32.2 | 35.8 | 37.2 | 35.8 | 33.9 | 36.1 |
| 6 | 33.1 | 32.8 | 28.7 | 35.9 | 35.5 | 32.6 | 37.7 | 36.4 | 35.9 | 34.1 | 35.2 |
| 7 | 33.9 | 32.1 | 33.1 | 35.7 | 30.2 | 32.5 | 37.1 | 35.2 | 32.9 | 33.6 | 37 |
| 8 | 34.2 | 28.4 | 33.3 | 34.9 | 31 | 32.4 | 38.3 | 34.7 | 34.9 | 33.6 | 35.9 |
| 9 | 34.4 | 22.2 | 32.9 | 34.9 | 33.6 | 29.3 | 34 | 34.6 | 33.5 | 34.8 | 34.5 |
| 10 | 33.2 | 27.9 | 32.5 | 30.6 | 34.2 | 31 | 34.8 | 35.6 | 33.4 | 37.1 | 35.6 |
| 11 | 34.3 | 28.3 | 33.8 | 32.4 | 33.2 | 30.5 | 35.6 | 35.6 | 34.6 | 35.4 | 32.1 |
| 12 | 33.8 | 30.7 | 33.1 | 34 | 33.3 | 33.6 | 35.3 | 35.7 | 30.7 | 35.3 | 26.7 |
| 13 | 30.4 | 31 | 32.5 | 29.5 | 32 | 34.2 | 32.1 | 35 | 34.3 | 34.5 | 31.9 |
| 14 | 33 | 30.5 | 33.8 | 28 | 27.1 | 34.2 | 34 | 33.3 | 32.9 | 35.9 | 34 |
| 15 | 34 | 31.6 | 32.9 | 29.9 | 30.3 | 33.7 | 34 | 35.1 | 34.5 | 36.6 | 32.4 |
| 16 | 33.8 | 33.8 | 32.8 | 31.4 | 33.1 | 33 | 35.5 | 36.2 | 35 | 37.7 | 32.5 |
| 17 | 34.1 | 32.2 | 33.1 | 32.3 | 33.1 | 28.7 | 33.1 | 34.6 | 36.4 | 37.1 | 31.8 |
| 18 | 32.8 | 33.3 | 34.5 | 32.6 | 27.2 | 28.8 | 32.8 | 33.6 | 37.3 | 37.1 | 33.7 |
| 19 | 33.4 | 32.5 | 32.8 | 34.1 | 32.5 | 29.1 | 34.3 | 35 | 36.6 | 37.4 | 35.1 |
| 20 | 33.2 | 33.8 | 29.7 | 33.5 | 33.2 | 26.1 | 36.2 | 32.8 | 35.8 | 37.4 | 35.4 |
| 21 | 34.3 | 35 | 31.5 | 35 | 30.2 | 31.1 | 35 | 35.1 | 36.2 | 38.6 | 35.9 |
| 22 | 33.6 | 32.7 | 32.5 | 33.7 | 32.4 | 31.1 | 35.8 | 35 | 35.6 | 37.4 | 36 |
| 23 | 34.8 | 32.2 | 33.2 | 33.4 | 32 | 30.4 | 34.5 | 35.5 | 36.8 | 35.8 | 36.7 |
| 24 | 34 | 33.2 | 31.6 | 30.9 | 33.6 | 31.6 | 33.8 | 36 | 35.7 | 35.7 | 36.5 |
| 25 | 34.9 | 28 | 32.5 | 33.3 | 33.6 | 32.2 | 34.1 | 37.5 | 35 | 36 | 34.9 |
| 26 | 35 | 25.8 | 32 | 31.6 | 33.2 | 33.3 | 34.4 | 35.5 | 35 | 37 | 35.4 |
| 27 | 34.2 | 29.2 | 29.5 | 35 | 34.9 | 31 | 31.3 | 35.8 | 36.2 | 35.4 | 34.2 |
| 28 | 33.7 | 29.3 | 23.9 | 32.8 | 35.7 | 30.7 | 31.9 | 36.3 | 36.9 | 33.4 | 32.4 |
| 29 | 33.4 | 29 | 29.6 | 31.1 | 35.5 | 24.9 | 33.7 | 36.6 | 37.4 | 36.7 | 33 |
| 30 | 33.2 | 30.5 | 32.2 | 31.6 | 32.9 | 27.7 | 33.8 | 32.8 | 34.4 | 37 | 35.2 |
| 31 | 34.2 | 29.3 | 32.3 | 31.8 | 31.5 | 25.8 | 35 | 32.7 | 35.5 | 37.6 | 36.1 |
| 平均 | 33.4 | 31.0 | 32.2 | 33.1 | 32.6 | 30.6 | 34.7 | 35.1 | 35.2 | 35.7 | 34.7 |
| 最高 | 35 | 35 | 34.6 | 36.6 | 35.9 | 34.2 | 38.3 | 37.7 | 37.4 | 38.6 | 38.6 |
| 35度以上 | 1 | 1 | 0 | 7 | 4 | 0 | 13 | 20 | 20 | 20 | 18 |
この表は1930年から10年毎の8月の1日の最高気温を表にしたものである。
平均の最高気温は徐々にであるが上がっている様に見える。
ただしこれは年によってかなり上下動があるので1980年などの冷夏では前後の年よりもかなり気温が下がっているがわかります。
問題は表の下から2番目の行の「最高」という値に注目してください。
これらの値はどういう値かと言うと、各年の8月の最高気温を表しています。
僕たちが「暑くなったなぁ、、」と感じるのはこの最高気温が高くなったことに起因するのでは、と考えました。
これを見ると1930年に比べ2.5~3.6度近く暑くなっているのが分かります。
また、もう一つのポイント35度以上の日がどれぐらいあるか?
ですが、これは一目瞭然で1990年代以降ぐんと増えているのがわかります。
10年毎のもので、しかも8月のみの統計ですが、恐らく他の年も同じように上昇しているのでしょうし、他の月も同じくだと考えて良いと思います。
そしてこれらの気温の上昇は今後も続いていくと言われています。
この気温の上昇はキノコ(菌糸)にどの様な影響があるのでしょうか?
シイタケに対する実験ですが、以下のような論文があります。
シイタケ菌は,ホダ木内の菌糸の場合,40℃で約20時間は生存可能であるが,45℃ から50℃になると死滅する。35F3は培地内温度が35℃を越える期間が3 日間続いたため,菌糸が衰弱したと思われる.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/apmsb/10/3/10_KJ00007318150/_pdf/-char/ja
~中略~
発生操作直前に培養温度が30℃に上昇すると子実体の発生量が減少傾向となり,35℃を越えると不発生となることが分かった.また,菌糸が培地全体に蔓延した培養の前期と培地の褐変が終了した培養中期では,培養温度が30℃に上昇すると子実体の発生量は増加傾向となるが,35℃を越えると発生量は減少傾向となった.
※35F3は実験した際のセクション名
ここからわかることは
気温(または地温)の上昇が菌糸にとってはかなりのダメージになること。
それぞれの菌糸が生存できる温度というものあり、ある一定の温度を超えてしまうと菌糸は死滅してしまうし、また超えないまでもある温度の状態が長い間続くとこれまた死滅してしまったり、衰弱してしまったりする。
これでは当然キノコ(子実体)を発生させることすら危うくなってしまうだろう。
つまり気温の上昇、そして高い気温が継続するということはすなわちキノコが発生しないということになるのです。
何年か後には最高気温が40℃を超す日が何日も続く、、という未来があるかもしれません。
キノコ達はそんな日本から離れ、北へ北へとその勢力を北上させていくことになるのが想像できますね。
乾燥による菌糸の死

8月の大阪の天気。
ところどころ雨マークはありますが、12日を除いてその殆どが一時的(一瞬と言ってもいい)な雨。
つまりそんな雨じゃあカラカラの大地を潤すことなど出来ぬ、、、的な雨だったのです。
8月は8、9日と長野県の麦草にキノコ合宿。15日~17日は札幌のキノコ合宿と大阪を離れることが多く、その「暑さ」から解放される日々を過ごしていたのであるが、大阪に戻ってくると無性に暑く、そして雨はほとんど降っていない。なのでキノコを探しに行く気力もわかなかったのであるが、9月に入り雨がやっと続いたので、そろそろキノコも出ているのでは、、、と思って見に行った結果が「キノコほぼゼロ」。
そこでキノコと乾燥について思いを馳せたのであった・・・。
—
菌糸にとってもっとも怖いのは「乾燥」ではないだろうか?
つまり水分がない、ということ。
菌糸はあらゆる手段を使って水分を確保しようと苦心惨憺している。
例えば
- 菌核を作って乾燥から身を守る
- 根状菌糸束を作って乾燥から身を守る
- 土壌の深部に潜っていき乾燥から身を守る
- 地下に子実体を形成して乾燥から身を守る(地下生菌)
- 材の内部に侵入し乾燥から身を守る
などなど。
材腐朽菌の場合、菌糸の先端から酵素を分泌して材を分解していきます。
その際の分泌液の生成や分解した物質の運搬などに必要不可欠なのが水分です。
また菌糸自体の水分含水率はおよそ 85%〜90%ですので、そもそも水分が不足すると菌糸が成長することもおろか自身の水分量を保つことが出来ず、干上がってしまってやがて死滅するということに繋がりかねません。
ということで、断言は避けますが
乾燥が続いたことによりキノコが消滅することがあるのではないだろうか?
「キノコ」という主語は流石に大きすぎる、と批判を受けるだろうと思っている。
ですのであえてここでは「何種類かのキノコ」を意味するのですよ、、と言い訳がましく付け加えておく。
キノコによっては暑さ耐性を持っているものもあるし(根性菌糸束など作るやつね)、南方系のキノコだったものもありキノコ自体が出なくなることはないと思われるが、その絶対量と種類の減少はあるかもしれない。
例えば今回目的にしていたテングタケの仲間。
テングタケと言えば夏に発生するキノコとして有名です。
またテングタケは樹木と共生して樹木から光合成の生産物である糖を受取り、その代わりに水分やミネラルを樹木に提供しているのですね。
しかし、雨が降らなくて土中が乾燥し樹木に渡すべく水分が得られなければどうなるのだろうか?
そもそも自分自身の細胞すら水分不足で保つことが出来なくなるのに、貴重な水分を樹木に渡すのだろうか?
もしかしてテングタケと樹木との共生関係は崩れてしまうかもしれません。
共生関係が崩れる、ということは樹木はテングタケとの関係を打ち切り別の菌との共生を始め、関係を切られたテングタケは生活していけないということいなりますね(苦笑)。
こんな人間的なことは無いと思うのですが、共生している以上何らかの影響はあると思っています。
まとめ

余りにも昨日キノコが少なかったために、勢いでこんな記事を書いてしまいました (#^.^#)
だってね、これだけ雨が降ったのに、こんなに何にも出てないなんてあり得ないですからね~!
端境期、ということも考えられますが、流石にほぼゼロはないです。
ただこれらの事はもっとエビデンスを積み重ねていかねば本当の事はわからないし、もっと別の事実が出てくることもある(例えば南方系のキノコが日本列島に大挙発生するので消滅しない、、とか)。
しかし、この暑さと乾燥が人間だけに影響を与えるのではなく、多くの生き物に多大な影響を与えている、という事だけは覚えておいて欲しい。
なので、我々一人一人が行う事は暑さ対策もさることながら、地球温暖化にどう立ち向かうのか?何か出来ることはないのか?を常に考える事だと思っています。
今からでは既に遅いのですが、かと言って対策を打たないと生物が生きていけない世界がやってくるではないでしょうか?こんな小さな変化を見過ごしていると、この先に大きな変化が必ずやって来ます。
その時に「あぁあの時の見過ごしが、、」と後悔しても既に遅し、、なのです。
—
さて、そんな中、昨日唯一見ることが出来たキノコ。
クヌギの木の根元から発生しているマンネンタケの仲間です。
こいつらはきっと乾燥や高気温に強く、少々大きな環境の変化があってもこうして発生してくるようです。
このキノコを研究しているようじ君に聞くとマンネンタケの仲間は木の心材(木の中心部)を分解して栄養に変えているので木そのものに影響は与えていないと考えられているそうです。
何故ならこの様な木は辺材の部分だけ生きていて、それ以外の部分は細胞としては死んでいる部分なので、いくら死んでいる部分(ここでは心材)を分解されたとて樹木からすれば生きていくのになんら支障はないわけです。
そして心材を含む木の内部は案外乾燥の影響を受けにくく、また同時に気温の影響も受けにくいと考えられます。なので他のキノコが全く出ていなくてもこんなに元気に発生しているのだろうと思われます。
ちなみに去年もこいつらだけ元気な日がありました (#^.^#)
柔らかいキノコ達が続々消滅していっても硬いキノコ達はこんな感じで逞しく残っていくかもしれませんね!


