ブラック&イエローのアミガサタケ分布はどうなっているのか?

2022.05.04 大阪

春のとある日曜日、大阪の公園を散策していて、ふと道のすぐ脇の草むらに目をやるとこいつが飛び込んできた。

アミガサタケだ。

ここでいうアミガサタケは広い意味ではアミガサタケではなく、狭い意味でのアミガサタケ、学名はMorchella esculentaが充てられているものだ。

このアミガサタケ、黒いタイプのアミガサタケ(Morchella conicaが充てられている)と比べてかなり神出鬼没なのです。

黒いタイプのアミガサタケは、関西で言うとサクラの樹下やイチョウの樹下に発生することが多い。
つまり黒いアミガサタケを見つけたければ、3月から4月にかけてサクラ、イチョウなどの木を目指してその下を徘徊すると見つけることが出来る、ということになる。
がしかし、黄色いタイプのアミガサタケにはその様な「法則」はなく、こうやってたまたま見つけることが出来たところに次の年に行ったらやはり同じエリアに出ていた、という感じになる。
そこに法則性を見つけることが出来ない、、つまり神出鬼没なのですな。

それゆえ黒いタイプは樹木と共生していて、黄色いタイプは腐生性が強い、と考えてしまうのだが、そうとは言えないのです。
何故なら今のところ中国で栽培しているアミガサタケはいずれも黒いタイプのもので、「栽培されている」という事はすなわち腐生菌であること(だいたいね)を意味している。
ちなみに栽培しているのは
Morchella importuna(和名無し)
Morchella sextelata
(和名無し)
Morchella eximia
(和名無し)
の3種類が主に栽培に使われている種である。
また、岩手で栽培されている種もこの3種類ではないのであるが黒いタイプのものである。

というところから、黒いタイプは腐生菌である、とも言えない。
腐生菌だとしたら、何故特定の樹下で発生するのか?
落ちている葉っぱになにか成分が含まれているのか、やはり何かそれら樹木の根と関係性があるのか無いのか、、、うーむ。

ただアミガサタケとはそんな摩訶不思議でまだ解明されていない要素を沢山含んでいるキノコ、であることは間違いありません。
アミガサタケを研究したいと思っている若人よ、是非是非やってみて下され!!

横浜でのキノコ散策

去年の春、関東に遊びに行った際に横浜で菌友達とキノコ散策を行った。
横浜というと港町を想像してしまうのだが、もう少し内陸部に入ると起伏に富んだ地形が沢山あり、あちらこちらにその地形をそのまま残した自然公園があります。

そのいくつかの公園を巡りキノコ散策をした時の事。
乾燥はしていたし、時期はまだキノコのピークではなかったのでキノコ自体は少なかったのだが、それでも目的の一つだった黄色い方のアミガサタケを見ることが出来た。

案内してもらった公園ではこの様に毎年発生している場所に「決まって」発生してくれるとのこと。
なので、いくつかのポイントを巡ると必ず何本かは確認することができるそうで、この日も10本弱は観察することが出来た。

ところがだ。

黒いタイプのアミガサタケはほとんど見ることが出来ない。

とのこと。
もちろん横浜であっても黒いアミガサタケが無いわけではない。
その証拠に横浜に住んでいる別の菌友は黒いタイプのアミガサタケを良く採取しているのだそうな。

それとは反対に関西に住んでいる我々の肌感覚では黒いタイプのアミガサタケの方が圧倒的に多く、黄色い方が少ない印象だ。もちろん神出鬼没なイエロー君なので的が絞りにくいというのはあるだろう。
えぇ、こんなところにいたのかっ!!というよりもいつもいてくれてありがとう、と言う方が「多い」と感じるかもしれない。

また、最初の写真の通り1本だけポツンと出ている黄色タイプに比べ、黒い方は1つ見つければその周りで何本も見つけたりするので「多い」と感じるのかもしれない。

その真相はどうなのだろう?

ということでFacebookとTwitterでアンケートを取ってみました。

地域別黄色・黒色アミガサタケ発生率

アンケートは北海道から九州までを8つのブロックに分け、それぞれの地域で黄色いアミガサタケの方が多いか、黒いアミガサタケの方が多いのかを聞いてみました。
感覚レベルのものになりますが、全部で85票、ちょっと少ないですが、まぁこれぐらい集まればある程度の傾向は出てくるだろうと思っていました。
その集計結果が以下の票です。

Twitter方がアンケートに答えてくれた人数が少ないですが、傾向としてはFacebookとはあまり変わらない印象です。
※東北はもう少し答えが欲しかったですが・・・
この結果を棒グラフにしてみましたのが以下のグラフです。

県レベルで回答してもらうともう少し傾向が顕になると思いますが、やはり思っていた通り関東は黄色いタイプが優勢で、西日本になれば黒いタイプが優勢だということ。
しかし面白いことに北海道は黄色が少なく、黒いタイプの方が優勢の様です。

さて、ここで注意しなければならないのは、黒いタイプと黄色いタイプの2つに分けて、、というかなり大雑把な分け方をしているところです。
黒いタイプには何種類か分かれることが分かっていますし、黄色いタイプも恐らく今後細かく分かれていくことでしょう。

だとしたら

種が分かれるのに黄色、黒色と二つに大別して傾向を見るのに意味があるのか?

という意見はあるでしょう。
僕だってそう思います(苦笑)。
とは言え、黒いアミガサタケが進化の途中でいくつかの種に分かれたのでしょうし、黄色いアミガサタケもしかり。
そして黒いアミガサタケと黄色いアミガサタケはそれ以前に分かれたとすると、黄色と黒色のアミガサタケの傾向を見るというのは大きな意味があるのです!(言っちゃった!)。

iNaturalist+GBIFの日本産記録からの解析

僕のFacebookへの投稿を受けて、中島淳志さんがiNaturalistとGBIFにアップされている節レベル同定済のデータを使って集計してくれました。
以下中島さんの投稿をそのまま貼り付けます。

■ 地域別イエローモレル比率(Beta-Binomial階層モデル)
北海道 0.28 [0.15–0.42] 🔵ブラック優勢
東北  0.24 [0.02–0.48] 🔵ブラック優勢(n=8、不確実性大)
関東  0.79 [0.74–0.84] 🟡イエロー強く優勢
中部  0.74 [0.63–0.86] 🟡イエロー優勢
近畿  0.48 [0.35–0.60] ⚖️五分五分〜ブラックやや多
中国  0.46 [0.21–0.73] ⚖️五分五分(n=9)
※四国、九州・沖縄はサンプルが少なすぎるので参考程度
アンケートと同様に、関東・中部で突出してイエローが多いという傾向が裏付けられました。北海道は確実にブラックが多いですが、近畿はアンケートと違ってそれほどブラックが突出して多いわけではなさそうです。

近畿地方に於いては5分5分という結果が出ておりますし、中国、四国でもちょっとアンケートとは異なる結果がでておりまね。ただ「四国(n=2)」というのはちょっと数字としては参考に出来ないかもしれません。

ただし、中島さんが書かれている様に関東、中部ではかなり黄色タイプが突出しているのと北海道では黒色タイプがかなり優勢となり、こちらのアンケートや肌感覚とは一致してきますし、恐らくその傾向は強いのでしょう。

あと面白いのが、以下のグラフ。
これも中島さんの文章をそのまま貼りましょう。

■ 発生タイミングの差(フェノロジー解析)
ブラックが平均9.8日早く発生(95%信用区間:5.5〜14.2日)。
関東では黒が4/7頃・黄が4/17頃、北海道では黒が5/4頃・黄が5/27頃がピークで、緯度が高いほど差が広がる傾向も見えました。
データがもっと集まって、環境変数や植生(公園か山林か)なども考慮した解析ができるとさらに面白いかもしれません。

まずは僕たちが思っている黒いタイプのものは早く発生し、遅れて黄色いタイプが発生する、というのは実感として正しいと思います。またその遅れは平均9.8日であることがこのグラフからわかります。
またここから分かることは、その日数が緯度が高いほど(つまり北へ行くほど)差が広がる傾向がある、ということだそうです。

これらの統計から分かることは?

2010.04.25 大阪

さて、この統計から確実に分かっている事だけをピックアップしてみよう。
まずは事の発端である

1.関東は黄色いアミガサタケの方が多い

ということ。
そして、黒いアミガサタケが異常に少なく(無いわけではない)、逆に黄色い方がやたらと多い。
黒いアミガサタケが少なく、黄色いアミガサタケが多いとなるともしかして黄色の勢力が強いために黒い方の勢力が負けてしまっている、、などと考えてしまうが、発生場所などもあまり重なっているように思えないので、それは考えにくい。

しかし例えばタマゴタケを例にとってみると、タマゴタケの一大産地は多摩丘陵である、とタマゴタケ発生を何年か追っていたべにてんぐの会さんから聞いたことがある。
多摩丘陵と言うのは、八王子市付近を起点として、多摩市、町田市、稲城市、そして神奈川県川崎市、横浜市を通り、三浦半島の付け根付近まで約38kmにわたって続いている非常に凸凹した地形を持った地域である。

横浜に行った際に散策した地域もこの多摩丘陵の中にある公園だ。
多摩丘陵の様な起伏に富んだ地形で、しかも比較的コナラやクヌギが沢山残されていて人が住むエリアの近くに森が残っているような地域では黄色いアミガサタケの方が多い、、、なんていう発想は飛躍しすぎだろうか?

2.北海道には黒いアミガサタケの方が多い

これは今回初めて判明したことです。
もちろん黒い方のアミガサタケが発生する、というのは岩手チームの調査で知っていたのですが、黄色い方が発生しない(少ない)というのはかなり興味深い結果だと思います。

ちなみに岩手や青森産の黒いアミガサタケは関西に発生するものとは異なります。
参考: https://kinokobito.com/archives/8781
という事はいわずもがな北海道の黒いアミガサタケは関西のものとも異なると考えていいでしょう。

宮城、福島などの東北では黄色いアミガサタケの発生がありますし、比率としても双方差があるわけではなさそうです。
しかし岩手や青森はどうでしょう?
黒いアミガサタケがそうだから、というワケではないと思いますが、同じように黄色いアミガサタケも種類が違ったり、もし同じ種であったなら寒さに弱かったりするかもしれません。
それにより、関東などと比較して黄色いアミガサタケの発生量が少ないのではないか?と考えられます。

3.黒いアミガサタケと黄色いアミガサタケの発生時期がずれている

中島さんの統計では黒いアミガサタケが発生してから平均9.8日後に黄色いアミガサタケが発生する、というデータがありました。
実感としても黒いアミガサタケが発生して一段落してから黄色いアミガサタケが発生するという感じですかね。

ただし、この「平均9.8日後」というのは違和感がありました。
僕の感覚では1カ月ぐらい後から発生するのでは?という感じで思っていました。

ということで、何年か分の3,4,5月の写真を探し回りアミガサタケが写っている時期を黒いアミガサタケと黄色いアミガサタケに分けて集計してみました。
ですのでこの表は本数ではなく、アミガサタケを見た回数となっています。

この表で見ると黒いアミガサタケと黄色いアミガサタケが完全にスイッチしている時期があります。

4月の中旬と4月の下旬です。

黒いアミガサタケは4月の中旬ではほぼ老菌状態のものばかり見つかるのですが、下旬になると黄色いアミガサタケが発生しだす、、という具合ですかね。
これを折れ線グラフにしてみましょう。

関西では(少なくとも僕自身は)黄色いアミガサタケに出会う確率が少ないので、もう少しサンプルを増やしたいことろなのですが、ただ発生時期、終息時機に関してはおおよそこれぐらいの差はあると思います。
ピークで見ると1カ月の差、発生時期から見ると1カ月半の差があります。

平均9.8日後と45日後ではかなりの開きがありますね。

じゃあ皆さんの所ではどうでしょう??

ご意見お待ちしております。

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