ヒョウモンウラベニガサの豹紋は何で出来ているのか?

2025.7.19 大阪 ヒョウモンウラベニガサ

関西菌類談話会の観察会が終わったあと、一人山の中を彷徨っていた。
というより完全に道に迷っていたのだ。
おかしいなぁ、、地図を見るとこの道に出るはずなのになぁ、、と思いつつ、やっと明るい道路に出たと思ったら通ったことある道に出てきたり、、、(苦笑)

そんなこんなしていて、50mぐらい先に見える倒木に何かキノコが出ているを発見した。

まぁ、あの出方はウラベニガサやろな。

そう思った。
50m先から見えるシルエットだが発生条件や大きさなどから考えるとまぁその仲間には違い無いと思っていたのですが、近づいてその姿を見た時に驚喜乱舞しました。

ヒョウモンウラベニガサ

ウラベニガサの仲間ではかなりレアなキノコです。
僕は初めてこの時見ることが出来ました(道に迷って良かった! w)。
それを記念してもう1年近く経ちますが記事を書いてみたいと思います。

豹紋をじっくり観察してみる

2025.7.19 大阪 ヒョウモンウラベニガサ

ヒョウモンウラベニガサの最大の特徴はその名前が冠する通り、傘の表面に「豹紋」がある、ということだ。ウラベニガサの仲間でこの様なヒョウモンがあるものはありません(僕が知る限り)。
しかしウラベニガサ(Pluteus)の仲間の傘表面の模様はとってもユニークなものが多いので復習を兼ねて、「ドキッときのこ」のウラベニガサ科のページをクリックしてみて下さい。

ページからいくつか紹介させてもらいます。

カサヒダタケ
傘の表面に皺が寄った感じになっていてそれを「ヒダ」と表現しています。
キヌオオフクロタケ
傘の表面に細かい毛が存在していて、それが「絹」感を醸し出しておりますね。
クロスジウラベニガサ(青木仮称)
傘表面に放射状に広がる黒い筋がありとても美しいです。
スジガサベニヒダタケ(池田仮称)
傘全体に溝線が放射状にくっきり並んでおります。
ヒメベニヒダタケ
傘全体が濃褐色の鱗片で覆われていてそれが小さくひび割れている様に見えます。
フサスジウラベニガサ
細かい褐色の鱗片に覆われていて、かつ、条線が放射状に並んでおります。
フチドリベニヒダタケ
「フチドリ」とありますが、このキノコの特徴は傘の黒褐色の交差模様ですね。
ところどころ白いのはヒョウモンウラベニガサを髣髴とさせます。

https://yuyukinoko.sakura.ne.jp/dokito/D-top2.htm

同定につきましての細かい話は省くとして、ウラベニガサの仲間の傘表面のバリエーションがどれだけ沢山あるかがわかってもらえたかと思います。

詳しい人と話をすると、ウラベニガサの仲間を同定するにあたっては一番肝心なのは傘表面の組織がどうなっているのか?であり、この組織の特徴によって大くくりで見分ける手掛かりになるのだそうな。

ということを前提にして、もう少し詳しく見てみましょう。

2025.7.19 大阪 ヒョウモンウラベニガサ

かなり迫ってみました。
ドキッときのこのサイトで掲載されているヒョウモンウラベニガサと比べてかなり白い部分が多い様に感じる。がしかし、それはあくまでも個体差の範囲でこれぐらい大胆な豹紋だったとしても十分ヒョウモンウラベニガサであることは間違いないですね。

さて、これを観察してみて思ったのが褐色部分のひび割れである。

ひび割れる前の状態はこの褐色部は地続きだった、ということが言えるだろう。
すなわち傘が大きくなるたびに褐色部がその拡大していくスピードに耐え切れずにひび割れたのだ、と。

また、ざっと見ると褐色のエリアが白いエリアと比べて浮き上がっている様に見える。
まるでゴルフ場の芝とバンカーの関係の様に見えるのですが、例えば虫とかナメクジに表面を食われた時のものの様にも見える。

それではもう少し拡大してみましょう。

2025.7.19 大阪 ヒョウモンウラベニガサ

拡大して色の彩度を上げてみました。
すると先ほどのひび割れの先端がトゲ状になっているのに気づきました。
広い部分はやはり褐色のところに比べて虫に食われた様に沈んでいる感じにみえますね。

しかしやはり肉眼では限界ですな(笑)

それではそれでは、顕微鏡で視てみましょう。

豹紋を検鏡してみる

2025.7.19 大阪 ヒョウモンウラベニガサ(褐色部)

これがヒョウモンウラベニガサの傘の表面の組織です。

カサシスチジアと呼ばれる組織が縦にそそり立っております。
通常の傘の組織と言えば菌糸が横に並んで傘の組織を形成していたりします(平行菌糸)が、しかしこのヒョウモンウラベニガサは縦に並んだシスチジアで構成されております。

また、このシスチジア1つ1つは褐色の色素を持っており、明らかに傘表皮の褐色部分を構成している組織だと思われます。このそそり立っているカサシスチジアの塊が肉眼で視てみると尖っている様に見あるのでしょう。

それでは白い部分はどうなっているでしょうか?

2025.7.19 大阪 ヒョウモンウラベニガサ(白い部)

さて、これを見られて「え?」と思った方、あなたの驚きは正しいです(笑)

先ほどの褐色の色素をもったカサシスチジアから色素を抜いたもの、、の様に見えます。
僕も目を疑いましたが、事実は事実。KOHなどの薬剤を落とすと色が抜けてしまう場合もありますが、これは単に水を1滴落として検鏡しているだけです。

すなわち

ヒョウモンウラベニガサの白い部分は褐色の部分の色を抜いただけの組織なのですね。

それでは最後に褐色と白い部分の境目写真を見てもらいましょう。

2025.7.19 大阪 ヒョウモンウラベニガサ

写真の左側が褐色のシスチジア、右側が白っぽいカサシスチジア。
これを見る限り白い方が凹んでいるということはありませんし、何か境目に線が入っているわけではありません。
もちろん虫食いもね(笑)

白い方が凹んでいる様に見えたのは目の錯覚なのでしょう。

さて、これはどう考えればいいでしょうか?
色素のあるシスチジアと色素のないシスチジアが同じ傘の上で並んで立っている。
顕微鏡で視ても細胞やその組織に違いがあるようには見えません。

例えば傘の中心は色が濃く、周辺になると色が薄くなるきのこがあったりします。

それと同じようにヒョウモンウラベニガサの豹紋は傘を大きくしていく際に最初にあった細胞が褐色の細胞であり、それ自体が大きくなれずひび割れて穴が開き、それを穴埋めしていくかのように後から作り出されたのが白い細胞なのではないでしょうか?

白い細胞を作る際はもう使える色が無かった・・・なんてね。

どうだ?(笑)

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