都会のキノコ図鑑

『都会のキノコ図鑑』大館一夫・長谷川明 監修

簡易的な図鑑と親身なキノコ講釈という構成でなかなかの出来ばえであった『都会のキノコ』の続編とも言うべき本。本書は純粋な図鑑という形での出版だ。

図鑑としての作りはバリバリの硬派で実用重視。各キノコに対する記述は簡潔で要点を押さえており、キノコ写真も複数枚を載せることでより実用度をたかめている。ときには胞子の検鏡写真もまじえるなど、レベルの高さが随所にうかがわれる。とにかくまじめな作りの本、まさしく「誠心誠意」の言葉がふさわしい図鑑だと言える。

ただ、そのマジメさが災いしたか、せっかくの「都会のキノコ」という好題材を生かしきれていないのが心残り。たとえば都会の公園にキノコがはえている風景写真を合間に織りこんでみるとか、ウッドチップキノコ特集を組んでみるとか、キノコ写真の背景に人や車やガードレールなんかが映りこんでいるっていうそれだけでもいい、『都会の』という部分を感じさせるものが欲しかった。

それともうひとつ、作りがストイック過ぎるんじゃないかと。せっかく自分の手で図鑑を作れるチャンスが巡ってきたんだから、もうちょっと趣味的な作りにしちゃってもバチは当たんないでしょ?少々カタチ崩しちゃってもいいから、もっとキノコ愛を開放して(?)遊べば良かったのに……とも思った。

ま、そんな私個人の注文はさておいても、数あるローカルキノコ図鑑の中でもかなり気合の入った労作であることに違いはない。見事なものだ。

「月刊きのこ人」(こじましんいちろう)2010年05月20日に掲載分を再掲載

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